誓約事項の重要性|ガイドラインが示す虚偽申告への備えと就業規則整備
目次
はじめに
DBS照会は「現在の照会時点での公的記録」を確認する仕組みです。しかし、照会で把握できない過去の行為や、照会後に生じたリスクは、照会だけでは対応できません。
そこで重要になるのが、本人からの「自己申告」と「誓約」です。本回では、横断的指針が示す誓約書・自己申告の役割と、虚偽申告があった場合の組織的な備えについて整理します。
ガイドラインで言及されている「誓約書の活用」と「自己申告」の役割
採用時の「性暴力行為歴がないことの申告」の意義
横断的指針は、DBS照会に加えて「本人からの自己申告(誓約書の取得)」を組み合わせることで、照会だけでは把握できないリスクを補完することを推奨しています。
📋 誓約書・自己申告書に盛り込むべき主な事項
- 児童対象性暴力等(わいせつ行為・不適切な性的接触等)の行為歴がないことの申告
- 現在・過去において、こどもとの関係で懲戒処分・解雇を受けた事実がないことの申告
- 上記の事実が虚偽であった場合、就業規則に基づく処分の対象となること、および採用・雇用の取り消しがありうることへの同意
- 今後、こどもへの性暴力・不適切行為を行った場合の懲戒処分への同意
誓約書の取得は、「虚偽申告があった場合に事業所が対処するための根拠」を事前に整えることを意味します。「申告していたではないか」という事実が、後の処分・解雇の合理性を支えます。言い換えれば、誓約書は事業所を守る法的根拠の一つでもあります。
申告内容が事実と相違した場合の「信義則」に関する一般的な考え方
信頼関係の破壊が組織運営に与える影響
雇用契約・業務委託契約は、相互の信頼を前提としています。採用時に「虚偽の申告をした」という事実は、この信頼関係を根本から損なうものとして、法的には「信義則違反」として捉えられることがあります。
⚠️ 虚偽申告が発覚した場合の一般的な法的整理(概要)
- 採用時の重要事実についての虚偽申告は、採用の取り消し(錯誤による無効・詐欺による取り消し等)の根拠となりうる
- 就業中に発覚した場合は、就業規則の懲戒規定(懲戒解雇等)の適用対象となりうる
- ただし、解雇・懲戒の適法性は個別の事情・就業規則の内容によって異なるため、必ず弁護士・社会保険労務士に確認する
なお、虚偽申告があった場合でも「即座に解雇できる」とは限りません。処分の内容・手続きの適正さについては、必ず専門家に相談した上で判断してください。本記事はガイドラインの解説にとどまります。
就業規則と連携した「虚偽申告」への対処について、指針が求める姿勢
あらかじめルールを明示し、公平性を担保することの重要性
横断的指針は「虚偽申告への対処方針を、事前に就業規則等に明記しておくこと」を求めています。「虚偽申告があったから解雇する」という事後的な対応ではなく、「虚偽申告があった場合はどう対処するかを事前に周知している」という体制が、処分の公平性・合理性を担保します。
💡 就業規則への記載例(参考)
「採用に際して提出した書類・申告の内容に虚偽があった場合、または重要な事実を秘匿していたことが判明した場合は、採用を取り消し、または懲戒処分の対象とすることがある。特に、こどもへの性暴力等の行為歴に関する虚偽申告については、懲戒解雇を含む最も重い処分の対象とする。」
就業規則への記載に加えて、採用時の書類受け取りの際に「内容を理解した」という確認書をセットで取得することで、「知らなかった」という抗弁を防ぐことができます。
組織の安全を守るための「基準の事前明示」のメリット
虚偽申告への備えとして誓約書・就業規則整備を行うことは、「不正を防ぐための抑止力」にもなります。「この組織は厳格な確認体制を持っている」という事実が、悪意ある者の入職を未然に防ぐ効果があります。
- 採用説明会・求人票に「DBS照会・誓約書の取得あり」と明示することで、制度の存在自体が抑止力になる
- 既存スタッフへの定期的な誓約更新(年次等)を行うことで、継続的な安全文化を醸成できる
- 「誓約書を取得している事業所である」という事実は、保護者・地域への信頼発信にもなる
まとめ─誓約書活用のポイント
- 誓約書は「照会を補完する確認手段」:照会で把握できないリスクをカバーする
- 就業規則との連携が重要:虚偽申告への対処方針を事前に明記し、公平性を担保する
- 抑止効果と信頼発信:「誓約書を取得する事業所」という姿勢が組織の安全文化を示す
- 個別の人事処分は専門家へ:弁護士・社会保険労務士に必ず確認する
次回は、「不適切な行為」の定義とグレーゾーン行動へのガイドラインの指針を解説します。
