【運営指導対策】障害福祉の指定申請時に始めるべき3つの重点領域(常勤換算・記録・請求)
目次
はじめに
障害福祉事業の成功は、質の高いサービス提供が大前提です。しかし、その質を公的に担保し、事業の存続を確実にするのが「法令遵守体制」です。
特に近年、行政による「運営指導(監査)」は、単なる形式的なチェックではなく、報酬の返還を要請されるといった、事業所の存続を左右するほどの事態が起きる可能性があります。
「指定申請」が無事に完了し、事業所が開設できたとしても、それは適正運営のスタートラインにすぎません。
指導対象となる主なリスク
- 報酬の不正請求
実際には行っていないサービスや、要件を満たさない加算を請求すること。 - 人員基準の欠如
常勤職員の離職や、常勤換算の計算ミスによる基準割れ。 - 記録の不備
個別支援計画の未作成や作成遅延、利用者への同意不足。 - 実態と異なる運用
運営規定や虐待防止などの規程に沿った運用がされていない場合
これらの指導で重大な指摘を受けると、報酬の返還(加算の取り消し)だけでなく、「指定取り消し」という事業継続が不可能になる事態に直結します。
事業者は、「行政の目が厳しい」と嘆くのではなく、「指定基準クリア」は「適正運営を証明する最低限の土台」と捉え、設立段階から指導対策を組み込むことが不可欠です。
設立時に組み込むべき指導対策:指摘リスクが高い3つの重点領域
運営指導において行政が最も重点的にチェックし、指摘リスクが高いのは、事業の根幹に関わる「ヒト」「記録」「カネ」の3つの領域です。
人員基準:常勤換算の厳密な管理と欠員時の即時対応策
人員基準は、サービスの質を担保する最重要項目であり、指導で最も厳しく見られます。

記録管理:個別支援計画の適正性と保存ルールの明確化
サービスの個別化を示す「個別支援計画」は、サービスの提供が適切かを判断する核心的な文書です。

報酬請求:加算要件の根拠整備とダブルチェック体制
報酬請求のミスは、行政指導で最も厳しい「不正請求」のリスクにつながります。

運用体制の「見える化」:指導に耐えうる業務フローとマニュアル
運営指導では、書類だけでなく、事業所が「組織として」適切な運営をしているか、業務フローが明確かをチェックされます。業務を「見える化」することが最大の防御になります。
指摘を防ぐための具体的な業務フロー図
特に重要なのが、利用者支援の開始から終了までの一連の流れです。このフロー図を事業所のマニュアルに含めることで、行政担当者に対し、「当事業所は仕組みで適正運営を担保している」ことを示すことができます。
マニュアル作成の重要性
マニュアルは、行政指導時に「法令遵守の意思」と「組織的な教育体制」を示す証拠となります。
単なる法令のコピペではない
法令の条文をそのまま貼り付けるのではなく、**「当事業所では、○○法に基づいて、具体的にAという手順で業務を行う」という実務に即した具体的な手順を記述します。
指導時に即座に提示
運営指導で質問された際、マニュアルの該当箇所をすぐに提示できるように準備しておくことで、「組織としてルールが浸透している」という信頼感を与えられます。
指定権者との信頼関係構築:申請から運営指導までの行政との付き合い方
行政との関係構築は、指定申請の段階から始まっています。
申請段階での対応が与える影響
指定申請時の質疑応答や書類の補正対応を丁寧に行うことは、行政担当者に「この事業所はルールを理解し、真摯に対応する」という最初の印象を与えます。
- 質問は遠慮なく行い、適切な運用を理解する。
基準の解釈で疑問点があれば、指定権者である自治体窓口に遠慮せず質問し、その回答を文書化しておく。基準を理解を深めることが運営を正しく行えることにつながり、かつ、その後の運営指導の連絡があっても慌てずに済む。 - 補正は迅速かつ正確に
提出書類に不備が見つかった場合、期限までに正確に補正し、その後の連絡にも迅速に対応する。
この初期の対応が、将来の運営指導の際、行政側が事業所を見る「前提の目線」に影響を及ぼします。日頃から法令を遵守し、行政との連携を密にすることが、指導を乗り切るための最大の防御策です。
まとめ:「法令遵守体制」を最大のブランド資産に
障害福祉事業において、「法令遵守体制」は、単なる行政への義務ではなく、利用者や地域からの「信頼」というブランド資産そのものです。
設立時の入念な準備と「見える化」された業務フローは、将来的な運営の安定性と、指導を恐れる必要のない事業体質を担保します。
- ヒト(人員):常勤換算は厳密に管理し、欠員リスクに備える。
- 記録(計画):計画作成プロセスをシステムで管理し、期日を守る。
- カネ(請求):加算の根拠を明確にし、請求は必ずダブルチェックする。
これらの取り組みを通じて、貴社の事業が地域社会にとって不可欠な、信頼性の高い存在となることを期待しています。
