事業計画書の書き方|想い・顧客・数字をつなぐ3ステップで描く成功地図
目次
はじめに:事業計画書は誰のため?何のため?
事業計画書は単なる事務的な書類ではありません。
これは、自分の夢やビジョンを具体的な言葉に落とし込み、行動可能な形にした「羅針盤」であり、自分の思考を整理する「鏡」でもあります。
書きながら、自分自身が本当に目指したい未来や、その未来を実現するためのステップが明らかになるのです。
読み手として最初に思い浮かぶのは、補助金の審査者や融資を検討する金融機関でしょう。彼らにとって事業計画書は、支援する価値があるかどうかを判断するための材料です。
しかし、もっとも重要な読み手は自分自身です。計画書を書くことで、曖昧だった想いが明瞭になり、自分が何を目指し、どこまでやる覚悟があるかを見つめ直す機会になります。
事業計画作成の全体像、必須の3ステップとは
本記事では、事業計画書を構築する上で欠かせない3つのステップを紹介します。単なる“作成手順”というよりも、「どんな順番で思考し、どこに視点を置くべきか」という思考の流れの設計図としてお読みください。
以下の3ステップは、順を追って進めることで“独りよがりにならない計画書”を作ることができます。

この流れを軸に、事業計画書が「熱意+論理+戦略」を兼ね備えた生きたツールになるよう、詳しく解説していきます。
STEP①:ビジョンの言語化──「なぜ、これをやるのか?」の核心
👉 まずは、事業の根幹となる“想い”を明確にすることから始めましょう。
誰のために、何のためにこのサービスを立ち上げるのか――その動機がすべての起点になります。この段階を曖昧にすると計画全体が揺らぎますので、時間をかけてゆっくりと検討しましょう。
①-1 目的と課題の明確化
まず最初に必要なのは、「この事業を通じて何を解決したいのか?」という問いへの答えです。ここでは社会的な課題と、それに対する自分の思いを掘り下げて言語化します。
(例)
- 都市部で増加する単身世帯、とくに高齢者や忙しい現役世代において、栄養不良・孤食・生活習慣病予備群が増加中。
- スーパーで惣菜を買うだけでは、食の安心も満足感も得づらい。
このような目的を文章にする際は、問題の存在を定量的に示すことが効果的です。
統計データや自治体の調査結果を添えれば、読む人にも危機感や現実性が伝わります。
①-2 自分の原体験や動機とつなげる
「なぜ自分がこの課題に取り組みたいのか?」を誠実に書くことで、事業の魂が生まれます。
過去の経験、家族との関係、仕事の中での気づき──そうした背景にこそ、事業の原点があります。
(例)
- 離れて暮らす高齢の親の食事が心配になり、冷凍食品や外食ばかりになっている様子を見て宅食ニーズの高まりを実感
- また、自分自身も多忙でコンビニ頼みになり「食べることが義務になってしまった」経験から、もっと“心が満たされる食の提案”を志すようになった。
①-3 目指す未来を描写する
目的が明確になったら、「この事業が実現したら、社会はどう変わるか?」という未来像を描きましょう。これは読者の共感を誘い、支援を得る土壌になります。
(例)
- 「食事が届く」だけでなく、「自分のために用意された、思いやりのある食事」が届くことで、心の満足感が育まれる。
- 「おいしいね」と話しながら食事できるような、地域のつながりも生まれる。
STEP②:顧客設計──「誰に、どんな価値を届けるのか?」
👉 次に、“その想い”を必要としている人は誰なのかを具体化していきます。
ペルソナ設計を通じて、現実に根差した顧客像を描き出すことが、伝わる計画への第一歩です。
②-1 ペルソナの構築
サービスを届けたい具体的な顧客像(ペルソナ)を詳細に描きます。
ペルソナは、年齢や生活環境だけでなく、心理的なニーズにも言及するのがポイントです。
ペルソナ例:
- 氏名:河野貴子さん(仮名)
- 年齢:68歳/東京都練馬区在住/独居・週1で娘が訪問
- 課題:糖尿病持ちで塩分・糖分制限が必要だが、料理が億劫。情報弱者でネット注文が難しい。
- 欲する価値:「安心して食べられる栄養設計+わたしの好みに合う味」
②-2 ニーズと提供価値の照合
このペルソナが「本当に欲しているもの」と、自分が「提供できる価値」が一致するかを検証します。ここでずれていると、せっかくのサービスも届きません。
- ニーズ:栄養バランスが取れた、やさしい味の手作り食/定期的な注文変更サポート
- 提供価値:管理栄養士監修の献立/電話注文OK/「体調別・好みに合わせたパーソナライズプラン」
この照合を文章化すると、価値提案に説得力が生まれます。
②-3 情報発信と行動導線の設計
どのような媒体でペルソナと接点を持つか?SNSか地域広報紙か?加えて「どう行動してもらうか?」(例:電話問い合わせ、LINE登録など)も示すと、実践的な計画になります。
- 自治体と連携した広報紙/薬局や地域包括センター経由の紹介
- 注文方法:電話/紙カタログ/スマホ注文(家族代行OK)
STEP③:収支・資金計画──「計画が絵に描いた餅にならないために」
👉 最後に、“実現可能性”の視点から事業を見つめ直します。
数字という論理を伴うことで、想いが事業として社会に根づく土台となるのです。
③-1 売上予測と原価構成
ここではExcelなどを活用して、各月の売上見込み・経費構成を算出します。初年度は控えめに、2年目以降は成長を加味するのが一般的です。
売上予測
- サービス単価:1食800円/1人あたり週5食/1か月1人あたり20食→ 月額16,000円
- 初年度:契約者数50名 → 月売上800,000円
- 原価:食材費35%/人件費40%/容器・配送費20% → 月間コスト720,000円
③-2 キャッシュフローと資金繰り対策
利益が出るだけではなく、「現金がいつ、どれくらい残るか」が事業継続に直結します。初期費用、遅延入金、突発的支出などもシミュレーションしておくと安心です。
- 初期投資:キッチン設備・配送車・広報費 → 約300万円
- 営業開始後3ヶ月目に収支均衡予測/半年後に黒字化見込み
- 補助金なしでの自走モデル構築(必要時は小規模事業者持続化補助金などを検討)
③-3 補助金の活用戦略
補助金は「プランの支援者」と位置づけ、受給を必須ととらえずに計画に盛り込んでおきましょう。また、受給後の資金用途を具体化すると、補助金の使用用途や必要な金額が明確になり、適切に活用することができます。
- 対象補助金:○○支援事業(○○補助金)
- 使途:設備費、初期人件費、専門家委託費
- 補助金上限額:100万円(■■の導入と運用資金として利用)
まとめ:自分だけの「成功地図」があることの意義
事業計画書とは、成長に伴い進化していく「生き物」です。最初は粗くても構いません。大事なのは、自分の想い、届けたい人、どうやってそれを実現するかを自らの言葉で描き切ること。
この「地図」があることで、迷った時も立ち戻れる「原点」ができます。そして、他者にもその道のりを示し、ともに進んでもらうことが可能になるのです。
さらに、自分の経験や環境の変化に合わせて“更新し続けられる計画”であること自体が、事業の柔軟性と持続力の証になります。計画書は、完成ではなく進化のはじまりなのです。
次回は、この3つのステップの中で、事業計画書づくりにおいて陥りがちな「思考の罠」や「構造の落とし穴」について解説します。熱意だけでは伝わらない壁とは?数字だけでは信頼されない理由とは?そのあたりも徹底的に掘り下げます。次回もお楽しみ!
