計画は“完成形”ではない|修正を前提にした事業構想の言語化

はじめに:構想は“現実と交差”して、初めて磨かれる

事業計画とは、単にアイデアを文章化するだけのものではありません。
“制度設計と実務”、“理想と制約”、“届けたい価値と受け止められる現実”——この間にあるギャップを、粘り強く埋めていく営みです。

今回のブログでは、初期案からの試行錯誤と修正の記録を通じて、「計画を磨くプロセス」そのものを言語化してみました。
ただし、修正という営みにはエネルギーが要ります。
冷静な分析、現場の違和感への感度、そして「思い切って書き換える勇気」。だからこそ記録に残す価値があるのだと思います。
今回はその“思考の推移”まで含めて共有してみたいと思います。

修正①:顧客導線の見直し——“現場と温度を合わせる”発想へ

当初は、ホームページ→問合せフォーム顧問契約へとつながる導線を構想していました。行政書士業務としては定石の流れです。

しかし、実際の顧客対象である福祉事業者は日常業務に追われており情報を見たからといってすぐ行動には移せない現実があると気づきました。定期的にWebを見ている時間もなく、「よい情報であっても届かない」という構造上の不利が存在しています。

そこで導線設計を一新しました:

  • 地元の福祉系イベントやフォーラムへの参加 → “顔と声”が先行する信頼形成
  • チラシや施設経由の紙面提供 → 現場で目に留まる設計
  • メルマガ配信やDM → “温度感の維持”による関係の継続

こうして、“発信”というオンライン営業だけではなく、 “接触頻度と温度管理”を主軸に据えたオフライン営業の融合へと導線を移行しました。

修正②:提案内容の再構成——“顧客にとっての選びやすさ”を軸に

事業内容を一望したとき、「できることは多いが、伝わる構造になっていない」という課題が浮かびました。
申請支援や研修企画、運営ルール設計など、どれも有益ではあるものの、潜在的な顧客にとって何を選び・何を依頼すべきかが分かりづらかったのです。

そこでサービス構成を以下のように再編:

  • 定型支援:指定申請、加算申請、届出などの行政実務系
  • 非定型支援:虐待防止研修、内部ルール策定、採用支援サポートといった顧客の課題に合わせた柔軟な支援
  • 伴走支援モデル(月額型):「第3の社員」として広範囲で継続支援を提供

また、ニーズ層に応じた呼びかけ方も併せて見直しました。
開設初期の事業者には「制度構築に伴走する支援者」として、既存運営者には「加算や人材育成に長期対応できるパートナー」としての訴求メッセージの打ち出し方を調整しました。
サービス分類と合わせてメッセージの再設計は現在も進めています。

この整理により、顧客は「スポット依頼か、伴走型か」「実務か、企画か」という軸で選択できるようになり、提案の温度も高まりました。

修正③:競合との差別化ポイントを言語化——“制度×現場”をつなぐ支援者として

福祉事業に特化した行政書士という立ち位置を持ちながら、「自分らしさ」を明確に表現できていない課題が残っていました。

そこで、以下のような差別化要素を整理・言語化しました:

  • 現場同行を前提とした、“空気を読む支援”ができる
  • 法務・人事・労務の横断経験を活かし、管理部門の負担軽減や連携強化、税理士や社労士といった他の専門職との支援へつなげる経験値も視野に入れる
  • 常勤でも非常勤でもない“第3の社員”として、規格化できない課題への対応力

これらの特色は、Web上の比較で伝えきれない部分もあり、配布資料(チラシ)での表現を強化しました。
“制度の読み方”と“現場の実務”を接続できる支援者としての姿勢を、視覚と言葉で伝える工夫です。

修正④:市場調査によるニーズの裏付け——“施設数と課題件数”を根拠に設計

障害福祉事業者の情報はWAMネットや東京都など自治体や公共性の強い機関で公表されている情報を活用し、事業所数や提供サービス種別といった情報を把握しました。
事務所を置く市とその隣接の市町村をターゲットにデータの収集と整理を行いました。

また、東京都による運営指導監査結果からも有力な示唆が得られました。施設ごとの監査結果を見ると、ほぼすべての類型で“指導あり”の割合が高く、「指定を受けた後の制度運用に課題がある」ことが鮮明に。

これはすなわち、「開設済の事業者の大半が、制度運用支援を必要としている」ことを示しています。

  • 指定申請だけでなく、運営や加算対応も支援対象として十分に成立
  • ニーズの分布が“申請支援型”から“制度伴走型”へ拡張可能

こうした根拠を事業戦略に組み込むことで、事業計画の社会性と市場妥当性が補強されました。

修正⑤:収支予測と事業スケール設計——“実務とリソース”の整合性へ

事業の持続性を考える際、「どれだけ契約が取れそうか」「対応できる工数はどれくらいか」が明確でなければ収支設計は曖昧になります。

そこで以下のような仮説ベースでモデル化しました:

  • 顧問契約件数×月額単価による固定収入試算
  • スポット案件の季節変動と稼働調整の仕組み
  • 平均対応時間と限界契約数の設計(余力との整合)
  • コンサル業界の成約率を参考に、受注件数を落とし込む

これにより、「受けられる限界件数」「売上予測」「繁閑調整の方法」などが数値で言語化され、計画に“現実味”が宿るようになりました。

さいごに:思考の記録としての事業計画——“完成”ではなく“試行の集積”

事業計画とは、構想を閉じ込めるためのものではなく、“構想が世に出る準備”を整えるための思考記録です。改善余地があるからこそ、意味がある。迷ったことも、捨てた選択肢も、それらを記録することで次の選択の質が高まるのです。

そして、制度や実務が複雑な福祉領域では、「完璧なスタート」より「柔軟な伴走戦略」のほうが長期的な価値につながると感じています。

このように、計画づくりの本質は、“磨くことを前提に作る”姿勢にあるのだと思います。

こうして計画は、単なる未来予測ではなく、現実との対話を通じて「社会とつながる仕組み」へと進化していきます。施策ごとの意図や背景を記述することで、外部関係者とも理念や運営方法を共有しやすくなり、対話や連携の起点にもなっていくのです。

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