【チェックリスト付き】障害福祉事業所のための虐待防止マニュアル作成・運用ガイド
こんにちは、クローバーです。
今回は、障害福祉における「虐待防止マニュアルの運用」に焦点をあててお届けします。
より実践的かつ効果的に活用していただけるよう、チェックリスト付きでご紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただき、ダウンロードしてご活用ください
目次
なぜ今、実効性ある虐待防止マニュアルが重要なのか
虐待防止マニュアルを作成することのメリットは以下の通りです。
- 障害者の人権の尊重や権利の養護の具体化として虐待防止は重要な取り組み。その手順や手段、考え方を表すためのアイテムが必要。
- 人権擁護の具体化を促進するための施策が「虐待防止措置未実施減算」である。減算の適用は、収支に悪影響を及ぼす。
- 障害福祉施設における虐待は、業務の延長上にあり、対応・判断が難しいケースも多い。知識や経験を現場で共有しやすいアイテムとしてマニュアルが有効である
- スタッフが長く従事するためにも、どんな時に何をすべきかが明らかになっていた方が働きやすい
虐待防止マニュアルの必要性を感じない理由
虐待防止マニュアルが不必要だと思ってしまうにも、理由があります。どんな理由でしょうか。
虐待防止措置未実施減算の要件に該当しない
結論から言うと、虐待防止マニュアルの作成は、減算の理由にはならないからです。
虐待防止措置未実施減算を振り返ってみましょう。
虐待防止措置未実施減算は、障害福祉事業所における虐待事案の報告件数が増えていることから、2024年から導入されました。これにより、障害者への虐待防止に関する社会的関心がより高まりました。
虐待防止措置未実施減算の要件は、次の3つです。
<虐待防止措置未実施減算に該当しないための条件>
- 虐待防止委員会を定期開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- 虐待防止の担当者を置くこと
しかし、東京都の運用指導においても、虐待防止の体制整備、運用順守が不十分として指摘を受けている事業所が多く存在しています。そして、減算が適用され、収支に影響が出てしまう事態も発生しています。このことから、法令上の義務に関わらず、実効性あるマニュアルの作成・運用は急務だと考えます。マニュアル作成は法令上の義務ではない
マニュアルの管理の手間
「マニュアルがある=機能している」とは限りません。
膨大な文書を保管しても、現場で活用されず、内容も数年単位で更新されていない――こうした“形だけ”のマニュアルは珍しくありません。原因の多くは、「作ることが目的化」してしまうことや、「更新や共有の手間が大きすぎる」ことにあります。
せっかく整備した虐待防止マニュアルも、実務と乖離し、管理が煩雑なために現場で読まれない・守られないとすれば、それは“形骸化”そのものです。虐待防止措置未実施減算が適用されないためにも、作成したマニュアルを“使い続けられるかたち”にする工夫が不可欠です。
運営規程とマニュアルの関係性
マニュアルの内容を検討する前に、運営規程とマニュアルの関係性について整理しましょう。
運営規程に“制度的な枠組み”。マニュアルは“実行のための道筋”。
運営規程は法定で作成が求められる文書ですが、あくまでも制度としての大枠しか記載がありません。よって、具体的な内容まで理解することはできません。
そのため、「具体的に何をするのか」をすべての関係者が理解するためにはマニュアルが必要です。現場目線で運営規程を補完する文書として、マニュアルを作成する意義がでてきます。
両者が連動することで、虐待防止が体制や実務面でより一貫性を持つものになります。
それでは、虐待防止の施設ごとの実践本としてのマニュアルにはどんな内容が必要なのでしょうか。
マニュアルに盛り込むべき基本項目の解説
厚生労働省の「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」をもとに項目をピックアップしました。次の11項目を盛り込むと、虐待防止の体制・運用・再発防止等を網羅的なマニュアルとなります。
- 目的と基本方針
事業所における虐待防止の理念を明確にする。 - 虐待の定義と類型
身体的・心理的・性的・経済的虐待、および放置など具体例を挙げて定義する。 - 虐待防止体制の整備
虐待防止体制・役割を可視化する。 - 研修の実施
誰に、いつ、どんな研修をするのか概要を明確にする。 - 通報・対応手順
虐待が起きた時に誰が何をすべきかを明らかにする。 - 身体拘束や行動制限の運用
身体拘束をせざるを得ない事態の定義とした時の対応について明確にする。 - 再発防止とマニュアル見直し
発生時の原因を分析し、再発防止、より現場にそったマニュアルに改善するための手順を定める。 - 支援対象者別のリスク評価
障害者の個々の特性によって起こりうるリスクについて、事前に整理する。 - 職場環境における注意点
相談・通報しやすい職場環境づくりに不可欠な要素を明らかにする。 - 地域連携の仕組み
地域の接点や、制度の利用など関係性の状況を整理する。 - 利用者・家族への説明責任
利用者や家族の説明や理解促進に向けて対応すべき事項を明示する。
施設ごとの工夫とアップデートの視点
マニュアルが現場で活用され、生きたものとして存在し続けるには、内容を工夫する必要があります。そのポイントは次のとおりです。
図の活用
体制や通報や対応の手順は、フロー図やチャート図などを活用しましょう。それによって、虐待防止責任者や従業員が行動しやすくなります。
個々の施設の事情を盛り込む
「支援対象者の特性」「職場環境の特性」「地域連携の形態」などの個々の施設の事情はできる限り明らかにしましょう。事前に状況の違いを明白にすることで、柔軟かつ冷静な対応ができるようになります。
マニュアルに見直しや修正をすべきタイミングを盛り込む
マニュアル作成時に定期的な見直しを盛り込むことをお勧めします。マニュアルの更新の業務をイレギュラー対応とみなすと、「業務に余裕があったときにやろう」となります。
そうなると、いつになっても更新がされず、マニュアルが時代遅れの化石となるでしょう。マニュアルの化石化を防ぐためにも、通常の業務として明文化しておきましょう。これで、虐待防止の手法や知識が生きたものとなり続け、マニュアルを“育てる”ことができます。結果、継続して利用可能な文書となります。
チェックリストの紹介
今回、虐待防止チェックリストを弊所にて作成しました。「自己点検ツール」としてのご活用ください。
<使い方>
- 皆様にて変更できるよう、Excel形式としました。適宜、アレンジしてご利用ください。
- チェック欄は、〇△×のいずれかを選択してください。進捗や更新の優先順位づけにご利用ください。
まとめ:マニュアルは“生きた規程”であることの強調
虐待に関しては、運営規程を守るだけでは不十分です。「どんな状況で何をすべきか」「虐待を少しでも防ぐためにどんなことに留意すべきか」を常に想像し、実践できる情報が不可欠です。
また、マニュアルは一度作って終わりになってしまうことがよくあります。実務ではマニュアルと異なる運用をすることが常態化してしまい、結果、大きな事件や事故になっては元も子もありません。そのため、定期的に「見直し・共有・研修」のサイクルに組み込むことが肝心です。
本記事で紹介したチェックリストや視点が、具体的なアクションにつなげていただけたら幸いです。
