事業計画でよくある“4つの罠”とその乗り越え方|計画の精度を上げる実践知

はじめに:「いい計画なのに伝わらない」悔しさを避けるには

事業計画を書いていて、「これは自分らしい、いい計画だ」と思っていても、補助金の審査や金融機関の面談で思うような評価が得られなかった経験はありませんか?
その原因の多くは、「わかりづらさ」や「実行可能性への不安」にあります。

審査者は限られた時間の中で数多くの事業計画書を見ています。
その中で評価を得るには、「視点のズレ」をなくし、「伝わる構成」に仕上げることが必須です。
この記事では、宅食サービスを想定しながら、計画づくりでよくある“4つの罠”を紐解き、その乗り越え方を実践的に解説します。

罠①:顧客像がぼやけている

NG例:「幅広いニーズに対応したサービスを提供予定」

「幅広い」と言ってしまうと、誰にサービスを届けるのかがわからなくなります。
よくあるのが「高齢者全般」や「働く人すべて」といった曖昧な表現。
こうした抽象的な顧客定義は、読み手に事業の具体性が伝わらず、「ふわっとしている」と判断されがちです。

改善例:地域・属性を絞ったペルソナ提示

ペルソナのフレームワークをもとに、「現実にいる人」レベルにサービスを求める人を言語化してみましょう。

事業計画の策定における改善ポイント①ペルソナの設定

このように具体化された顧客像は、事業と顧客の接点や次に述べる数字の根拠が想像しやすく、サービスの価値が自然に伝わります。ターゲットは広げず、絞るほど「この人のために」の視点が磨かれていきます。

罠②:数字の根拠が曖昧

NG例:「初年度売上300万円を想定」

売上の数字だけが書かれていても、「どうしてその金額なのか」がわからなければ、信頼されません。特に数字の積算ロジック(顧客数 × 単価 × 頻度)が示されない場合、「希望的観測」と判断されることもあります。
また、売上の話だけで、初期投資額との整合が取れていない場合は、「回収可能なのか」「資金の使い方は妥当か」といった疑問が生まれてしまいます。

改善例:積算根拠+初期投資との整合性

<例>
「チラシ設置を練馬区内の薬局10件・介護施設5件・福祉施設3件、高齢者集合住宅3件と連携予定。これらを通じて月20件の問い合わせを獲得し、成約率40%、月8件の新規顧客獲得を見込む。平均単価1万6000円×12ヶ月×50契約=年間売上960万円。初期投資としては、物件改装費(衛生対応)、調理・保存設備導入、備品購入で約250万円を想定。2年以内に償却可能な収支設計。」

数字は計算式だけでなく、施策との因果関係や業界の類似値を添えることで信頼感が生まれます。
そのために、インターネットを使って、マーケティング分析をし、確かな情報を収集しましょう。
また、次のような表に落とし込むことで、資金調達や補助金申請でも、こうした数値の納得感が増します。数値の納得感や信頼性が評価の分かれ目になりますので、ぜひとも表を作成しながら、積算根拠を作っていきましょう。

事業計画の策定における改善ポイント②数値根拠シート

罠③:未来像が抽象的

NG例:「地域に貢献したい」「社会をよくしたい」

こうした抽象的な表現では、「どう社会が変わるのか」が見えません。
「この事業によって、何が、どのように改善されるのか」という展望を具体的に描くことで、計画書に共感が生まれます。
また、社会的課題との接続や制度への整合は事業の継続の可否を大きく左右します。具体的なシナリオとなるよう言語化しましょう。

改善例:SDGs・地域施策・統計と連動した展開シナリオ

<例>
「本事業はSDGs『3.すべての人に健康と福祉を』『11.住み続けられるまちづくり』に貢献する取り組み。練馬区では75歳以上の一人暮らし高齢者が約2.9万人(2022年時点)に達し、孤食や栄養管理への課題が顕在化している。地域包括支援センターや薬局と連携し、宅食を通じて栄養支援・交流促進・生活の質向上を実現する生活モデルを確立する。」

このようにSDGs・地域課題・行政施策の接続を図ることで、「事業の価値が社会にどう届くか」が明確になります

罠④:必要な制度対応・許認可の見落とし

NG例:「弁当販売だからすぐ始められるはず」

飲食を提供する事業には、保健所の営業許可や設備基準、衛生管理の整備が必要です。制度理解が甘いまま進めると、そもそも事業がスタートできず、金融機関や補助金申請でも「実現性に乏しい」と判断されてしまいます。

とくに創業融資では、「必要な許認可を把握しているか」がチェック項目になっていることもあります。

改善例:制度要件の理解と初期費用への反映

<例>
「宅食サービスの提供にあたり、練馬区保健所の『飲食店営業許可』を取得予定。施設は設備基準(手洗い・衛生区画・調理設備・温度管理機器)を満たす改修工事を予定し、食品衛生責任者を専任で配置。許認可取得に必要な改修・備品費として約80万円を初期費用に計上。創業融資申請時には取得前提で事業開始計画を提示予定。」

数値に関しては、次のような表にまとめることで、抜け漏れの防止や数値の信ぴょう性が増します。

事業計画の策定における改善ポイント③初期費用内訳の事例

制度に対応する準備があるかどうかは、計画の信頼性に直結します。このパートは「必須項目」として、抜けなく記載しましょう。

さいごに:“罠”を“信頼”に変える設計力を磨こう

事業計画書づくりは、想いだけでなく「実現可能性」を伝える構造づくりです。

顧客像の曖昧さ、数字の根拠不足、未来像の抽象性、制度理解の欠如――これらは誰しもが陥る落とし穴。でも、それに気づき、言語化し、改善できるだけで、計画は飛躍的に成長します。

罠は、磨くべきポイントの発見であり、ジャンプ台でもあります。
また、「伝わる計画」とは、制度・数字・顧客・社会の接点を構造的に整理したときに初めて形になるものです。
あなたの事業が地域にとって“必要な存在”として根付いていくために、実態とのズレを見つけては整え、計画を重ねていきましょう。

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