行政書士法改正で補助金申請はどう変わる?2026年施行のポイント解説
こんにちは、クローバーです。補助金って、本当に活用できていますか?
制度があることは知っていても「申請が難しそう」「誰に頼めば安心なの?」と感じる方も多いと思います。今回は、2026年に施行される行政書士法の改正によって、補助金申請の“ルール”が変わります。どう変わるのか、そして正しく活用するために何に気をつけるべきかを解説します。
目次
改正にいたった背景
今回の改正により、補助金については、申請者本人以外が申請する場合、行政書士の資格がなければ申請を代行することができなくなりました。
今回の改正の要因は2つあります。
- 無資格者や「闇コンサル」による補助金申請の悪影響が増えていること
具体的には、補助金の趣旨に合わない申請、不適切な申請、悪質業者によるトラブルの多発していることです。このような事態が増えたことによる悪影響を改善する必要が出てきました。 - 補助金の申請もデジタル化が進んでおり複雑化していること
デジタル化によって申請がより複雑化しています。補助金や行政手続き等の専門的知識と正確な手続きが求められるようになったことも改正が行われた要因としてあげられます。
論点
補助金の申請を外部へ依頼することを検討している経営者様にとって、論点は主に次の2つが考えられます。
行政書士法第19条の改正
「報酬を得て、官公署に提出する書類を作成する行為」は行政書士の独占業務であることが明文化されました。そのため、書面申請、電子申請の方式を問わず、2026年以降は、行政書士以外は申請代行ができなくなりました。
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
他士業・無資格者との線引き
有資格者であっても、中小企業診断士や税理士が関与していた領域が制限される点も注意が必要です。
中小企業診断士、税理士ともに、財務や経営、ITなど専門性高い有資格者です。
2026年以降、これらの専門家から補助金の申請にあたって添削や助言を得ることは引き続き問題ありません。そして、そのアドバイスに従って申請者本人が書類を作成することも問題なく行うことができます。
しかし、行政書士以外の人に申請書の内容を書いてもらうはNGとなるケースが出てくるでしょう。そのため、税理士・中小企業診断士とともに、行政書士とも連携をすることをお勧めします。
また、特に注意が必要なのが無資格者です。税理士や中小企業診断士は法令順守を責務として追っているため、多くの資格者は各種手続きに応じて適切な対応をとるでしょう。しかし、無資格者は責務を負っていない分、注意が必要です。
行政書士の無資格者が報酬の名目(会費・指導料・サポート費など)にかかわらず、実質的に申請書を作成すれば違法とされます。たとえば『補助金申請サポート』と名乗るコンサルタント業者が、申請書を代筆して報酬を得ていた場合、補助金返還を求められる事態となることも想定されます。よって、補助金を専門家やコンサルタント業者に依頼する時には、誰に何を依頼するのか意識しなければならなくなりました。
経営者の皆様が今後やるべきこと・注意すべきこと
経営者の皆様が今後補助金の申請をするにあたって、次の3つを念頭においてください。
依頼先の資格確認
2026年以降は、申請代行は行政書士以外の人・業者に依頼することができません。依頼者が有資格者かどうか確認をしましょう。具体的には、行政書士の登録番号の提示や日本行政書士会連合会にて行政書士の登録を確認するなど、しっかりとした情報をもとに確認をしましょう。
「代行」と「支援」の違い
アドバイスや添削は「支援」とみなされ、適法の範疇となりますが、実質的な書類作成は「代行」となるので行政書士法違反となります。コンサルタント業者等である相手方が何の業務を提案しているのか、理解し、判断する必要があります。
採択後のリスクも考える
無資格者が関与していた場合、採択取り消しの可能性があります。もし、申請書の内容が適切でより良いものだったとしても、無資格者が関与することで補助金がもらえないことは金銭的だけでなく、時間・労力的にも大きな損失です。また、事業者としての法的責任も問われる可能性があります。それらのリスクも考慮して、信頼できる業者に適切な業務を依頼しましょう。
最後に
私たち行政書士は、単なる申請の代行者ではありません。制度の意図を正しく伝え、申請者の想いと行政の目的をつなぐ、架け橋であるべきだと考えています。また、今後のデジタル社会の進展に合わせて進歩することも求められています。
一方、補助金制度は、単なる“お金の支援”ではなく、地域や中小企業の未来を形づくるために有効な大切な仕組みです。だからこそ、その申請は適正かつ誠実である必要があります。
もし、少しでも不安を感じたり、「この場合はどうすれば?」と疑問を感じたら、遠慮なくご相談ください。複雑な制度の中で、皆様の挑戦が前向きに、そして安心して進められるよう、また、一人ひとりの挑戦に、真摯に寄り添える行政書士であるために。
これからも、誠実に、確実に、そして柔軟にサポートいたします。
信頼できる制度の活用は、信頼できる専門家との出会いから。これをきっかけに、より健やかな成長と未来につながる第一歩となれば幸いです。
