障害者雇用を経営の武器に!事例に学ぶ共生型設立戦略
目次
はじめに:〜義務を「価値」へ、負担を「武器」へ。先進事例に学ぶ共生経営の極意〜
2024年からの法定雇用率の段階的引き上げに伴い、企業には「ただ雇う」だけでなく「どう活躍してもらうか」という本質的な問いが突きつけられています。
多くの事業所が「就労支援」を掲げる中、選ばれる事業所になるためには、福祉の枠を超えた「雇用制度を使いこなす経営力」を提示しなければなりません。本記事では、キヤノンウィンド、ソフトバンク、LITALICOといった先進事例を紐解き、障害者雇用促進法を追い風にするための戦略を解説します。
障害者雇用促進法と福祉事業の相乗効果
自社雇用が「最強のブランディング」になる理由
「障害者の可能性を信じています」という言葉よりも、「自社でこれだけの戦力として雇用しています」という事実の方が、顧客である企業の経営者には響きます。
LITALICO(リタリコ)の事例
LITALICOは、自社が障害者雇用のフロントランナーであることをブランディングの核に置いています。障害者雇用専用の特別な枠は設けておらず、希望職種に応募できるといった門戸を広く開けていることが大きな特徴です。自社雇用を「実験場(ショーケース)」として機能させ、そこで得られた知見を障害者の雇用サービスに連結させており、サービス全体のブランド価値を底上げしています。
LITALICO社のように、自社で障害者を雇用することを単なる数合わせではなく実践することはかなりの難易度が高い事例ですが、『「多様性」を言葉だけではなく実践している』という強力なメッセージになっていると評価できるでしょう。
企業開拓の武器としての「雇用ノウハウ」
企業が障害者雇用に二の足を踏む最大の理由は「未知への不安」です。ここに、具体的な解決策のヒントとなる事例が大分キヤノン株式会社と福祉事業者の暁雲福祉会による特例子会社設立のモデルです。
特例子会社キヤノンウィンドは、企業側の「生産管理」と福祉側の「特性配慮」を高度に融合させました。この「企業と福祉のハイブリッドな運営ノウハウ」によって、障害者に合理的に配慮しつつ、企業の生産活動における戦力も叶えています。
障害福祉事業所として企業を開拓する際、「人を送り出す」だけでなく、「貴社の業務を障害者が担える形に再設計(タスク・マッピング)するコンサルティング」をセットで提案することが成功のカギとなっています。 単に人を送り出す方が就労支援は楽かもしれませんが、障害者と企業のアンマッチによって長期就業が難しいのも現実問題としてあります。長期目線で、障害者が安心して働き、結果、長い期間に就業できることが社会全体で求められていることです。そして、社会インフラの重要なキーパーソンとしての障害者の立ち位置を確立できるはずです。
戦略的な採用と助成金のパッケージ
経営を圧迫せずに雇用を推進するためには、国の制度を「経営資源」として正しく組み込む必要があります。
助成金を活用した「育成期間」の確保
「特定求職者雇用開発助成金」などを活用することで、人件費のコストの障壁を大幅に軽減できます。
重要なのは、この助成金を「単なる補填」と捉えるのではなく、「戦力化するための投資資金」と位置づけることです。このロジックを企業に提示できる事業所は、単なる福祉施設ではなく「経営パートナー」として認識されます。
助成金の活用提案や実際の申請書類作成や労働局への提出代行は、社会保険労務士が法律に基づき適切に行うことができます。経営に最適な制度設計を享受したい方は、顧問の社会保険労務士に是非ともご相談ください。
高齢者・主婦層を「サポーター」として巻き込む混合チーム
障害者雇用を「障害者だけで完結」させようとすると、マネジメントが行き詰まるケースが多くあります。ここで参考にすべきが、ソフトバンクのモデルです。
ソフトバンクの「ショートタイムワーク」
週20時間未満の超短時間雇用を組み合わせることで、障害者も含め誰もが無理なく働ける環境を作っています。この仕組みの中において、「高齢者」や「主婦層」をも巻き込み、障害者のサポーターやそれぞれの価値を高める同僚として配置することが可能となります。
- 高齢者: 豊富な社会経験で培ったスキルや視野をもとに障害者を支える役割を担う。
- 主婦層: 多忙な生活の中で培われたマルチタスク能力や細やかな目配りを活かし、障害者の心身のバックアップや、実務を支援する。
このように多様な属性を混ぜたチームを作ることで、特定の誰かに負担が偏らない、気持ちや特性を活かす「持続可能な現場」が完成します。
「福祉×雇用」をブランディングに活かす
「障害者が障害者を支える」モデルと広報戦略
これからの福祉・雇用戦略において、新たに加えたほうが良い視点は「ピアサポート(当事者による支援)」の仕組み化です。
「支える側」への転換
熟練した障害者スタッフが、新人の指導や環境調整を担うモデルを構築します。これは当事者のモチベーションを最大化させるだけでなく、「障害=ケアされるもの」という固定観念を覆す強力なブランディングに繋がるでしょう。
広報戦略
「障害があるからこそ気づける、誰もが働きやすい職場作りのヒント」をコンテンツ化し、SNSやブログで発信します。障害特性をわかりやすく説明することで、障害者雇用を難しいと捉えている他社の経営者や人事担当者に向けて、「雇用ができるかもしれない」という可能性を提示でき、障害者雇用の実例増加が実現できるかもしれません。 「私たちの事業所には、障害者が自ら職場を改善していくノウハウがある」と発信することで、障害者の企業の安心や、「共生社会をリードする企業」としてのブランドを確固たるものにするでしょう。
結び:雇用と福祉は、企業の未来を創る両輪
法定雇用率のクリアを「ゴール」と考えるか、新しい組織作りの「スタート」と考えるか。
ソフトバンクやLITALICO、そしてキヤノンウィンドが示したのは、「制約があるからこそ、仕組みが磨かれ、結果として全員が働きやすい最強の組織が作れる」という事実です。
当事業所は、これらの先進事例をモデルに、法律の枠組みを最大限に活用しながら、貴社のブランド価値を共に高めていくパートナーでありたいと考えています。
