DBS認定ロードマップ:制度施行までにすべき準備チェックリスト(規程・就業規則)
目次
はじめに:なぜ今すぐ準備が必要か?「認定」と「義務履行」の2つのフェーズ
「日本版DBS法」(こども性暴力防止法)の解説シリーズも、いよいよ具体的な実務対応の段階に入ります。DBS認定の取得を目指す事業者様にとって、最も重要なのは「何を」「いつまでに」行うかというロードマップの策定です。
DBSへの対応は、単なる一度きりの「認定申請」手続きでは終わりません。
事業者は、認定取得後に「継続的な義務履行」という、もう一つのフェーズに移行します。この義務履行が適切に行われなければ、せっかく取得した認定も取り消されかねません。
本記事では、この「認定」と「義務履行」の2つのフェーズを円滑に乗り切るための必須タスクを、行政書士の視点から具体的なチェックリスト形式で提示します。猶予期間(経過措置期間)が設けられる現職者対応の準備も含め、法的リスクを最小限に抑えるための行動計画を策定しましょう。
【フェーズ1】認定申請前の準備:3つの必須タスク
DBS認定の申請を行うためには、事業者が既に性暴力の防止に向けた確固たる体制を構築していることが前提となります。このフェーズで最優先すべきは、事業者の内部ルールを法的要件に合致させることです。
各種規程の策定と周知
DBS認定の必須条件であり、事業者が子ども対象性暴力等の防止のために講じる措置を具体的に定める組織の根本規範です。
策定しなければならない規程
- 児童対称性暴力等対処規程
- 情報管理規程
児童対象性暴力等の対処規程の策定内容の核
児童対象性暴力等の対処規程には、以下の事項を明確に盛り込む必要があります。
- 防止措置
- 児童対象性暴力等の調査
- 児童対象性暴力等を受けた児童等の保護・支援
情報管理規程の策定内容の核
情報管理規程には、以下の事項を明確に盛り込む必要があります。
- 犯罪事実確認記録等の取扱い全体に関わる基本方針
- 組織的情報管理措置
- 人的情報管理措置
- 物理的安全管理措置
行政への提出
児童対象性暴力等の対処規程および情報管理規程は、認定申請時に行政機関へ提出する添付書類として必要です。そのため、両規程の策定は必須です。
また、規程どおりの運用がなされず、たとえば性犯罪の防止措置が不十分であったり、犯罪歴情報が漏洩するなどの問題が発覚した場合には、行政による監査や罰則、認定の取り消しといった重大なリスクが生じる可能性があります。
こうした事態を防ぐためにも、規程を日常的な運用に落とし込み、点検や見直しを定期的に行うことが最善の策でしょう。
就業規則の改定と法的整合性の確保
既存従業員(現職者)に対して特定性犯罪の犯罪歴の確認を求める、あるいは不適格者が判明した場合に人事措置を講じる法的根拠を整備します。
- 同意の法的根拠
雇用契約の継続および業務の性質上、DBS確認の同意義務を盛り込みます。 - 不適合時の規定
特定性犯罪歴が確認された場合の配置転換や、犯罪と疑わしき事態が発生した時の業務変更、または懲戒に関する規定を明確に追加し、解雇権の濫用と見なされないよう、法的整合性を確保します。
就業規則に懲戒に関する規程がある場合は、顧問契約を締結している社会保険労務士に一度相談し、適法に規則の変更ができるよう対処することをお勧めします。
厳格な情報管理体制の構築
DBS確認で得られる「犯罪事実確認書」は、極めて機微な個人情報です。情報が一切漏洩しない、目的外利用されないための体制を構築します。
- 物理的・IT的管理
確認記録の閲覧権限を人事責任者など極めて限定された者に絞るためのアクセス制御(パスワード管理、鍵管理)を整備します。 - 記録の廃棄ルール
法定された保管期限後の記録を復元不可能な方法で確実に廃棄するための具体的な手順と記録簿を策定します。
【フェーズ2】制度運用開始後の定期タスク
認定を受けた後、事業者は日々の業務の中で継続的に防止措置を履行する義務を負います。これらは、「定期報告」の対象となる重要な実務です。
新規採用時の確認フローの確立
新規採用者に対しては、採用手続きの一環としてDBS確認フローを組み込む必要があります。
- 同意取得の必須化
採用選考の初期段階で、DBS確認への同意を採用条件とする旨を明示し、同意文書を取得します。 - 申請業務の組み込み
採用内定後、速やかに公的機関への確認申請を行うための人事フローを構築します。確認結果が出るまでの間は、子ども関連業務に就かせない等の暫定措置の検討も必要です。
定期的な再確認(更新)のスケジューリング
DBS確認は一度で終わりではなく、法律で定められた期間ごと(5年に1回)に、全ての従事者に対し再確認(更新)を行う必要があります。
- 台帳の整備
従業員ごとに前回の確認日と次回の期限などを正確に記録し、更新期限が漏れないよう管理する専門の台帳を整備します。 - 再同意の取得
5年ごとに犯罪歴の調査を行う必要があります。その際には、戸籍情報などの個人情報の提供について、従業員に再度依頼することとなります。
反発が予想される従業員に対しては、再確認手続きを円滑に進めるための人事的な対応策を、事前に検討・構築しておくのがよいでしょう。
定期研修の実施と記録
防止措置規程に基づき、従事者全員に対する性暴力防止に関する定期的な研修を実施し、その記録を保持します。
- 研修計画の実行
研修の実施頻度、内容、対象者を定めた計画に基づき、全従業員に研修を受講させます。 - 記録の管理
受講者名、実施日時、研修内容、受講後の理解度(効果測定)などを詳細に記録し、行政監査や定期報告に対応できるようにします。
DBS対応ロードマップ(アクションチェックリスト)
制度施行までの期間を逆算し、現職者対応(猶予期間)を見据えた上で、準備すべきアクションを時系列で整理します。

まとめ:DBS対応を確実にするために(専門家の活用)
DBS対応は、単なる行政手続きではなく、組織のルール(規程・就業規則)と人事オペレーションの全面的な見直しを伴う、複雑なプロジェクトです。特に、規程の法的整合性、現職者への不利益措置に関する労働法上のリスク、そして機微な個人情報管理の義務は、事業者単独では判断が難しい論点ばかりです。
こうした複雑な法的課題を乗り越え、確実な認定と運用を目指す上で、外部専門家の知見は、貴社の人事・経営部門にとって重要なサポートとなり得ます。労働法関係は社会保険労務士や弁護士、認定取得に関しては行政書士に相談することで、貴社の状況に応じた以下のような専門的な支援を受けることが可能です。
- 申請書類・各種規程(防止措置・情報管理)の作成代行
- 就業規則のDBS対応改定に関する法的助言
- 確認記録の管理・廃棄マニュアルの策定
- 従業員説明会での法制度解説
猶予期間は、準備を着実に進めるための貴重な時間です。DBS認定は、子どもの安全確保に向けた社会的責任を果たす、組織の健全性を示す前向きな取り組みの証でもあります。このロードマップを参考に、貴社にとって最適な形で、着実な対応を進めていただければと思います。
