【DBS法】パート・アルバイトも対象?非正規雇用者の確認義務と実務フロー

はじめに:「雇用形態」ではなく「業務内容」が判断基準である

学習塾、スポーツ教室、イベント運営など、子ども関連業務を行う多くの事業者において、パートタイムやアルバイトといった非正規雇用者が事業運営の中核を担っています。事業者の皆様から最も多く寄せられる質問の一つが、「短時間勤務のアルバイトも、正社員と同じようにDBS確認の対象になるのか?」という点です。

結論から申し上げます。日本版DBS法(子ども性暴力防止法)の確認対象は、「雇用形態」によって区別されません。

この法律が確認を義務付けているのは、「子ども関連業務に従事する者」であり、正社員であるか、パート・アルバイトであるかに関わらず、業務内容が「子どもへの教育、保育等の役務の提供」に該当する限り、正規雇用者と等しく特定性犯罪歴の確認の対象となります。

雇用形態の違いを理由に確認を怠った場合、それは法定された義務の不履行にあたり、子どもの安全を確保する体制を欠いているとして、認定取消しや行政指導の重大なリスクを招きます。本記事では、非正規雇用者を含むすべての従事者の具体的な確認範囲、短期雇用における手続きの効率化、および外部調達(業務委託・派遣)における実務上の注意点について、行政書士の視点から解説します。

確認対象となる非正規雇用者の具体的な範囲

DBS確認の対象となる範囲は、その「業務内容」と「児童と関わる機会」によってのみ判断されます。そのため、雇用形態や業務委託などの契約種別によって、対象であるか否かといった区別はされません。つまり、業務内容が子どもの教育、保育、指導、世話等に直接関わる場合、契約形態に関わらず確認が必要となります。

短時間勤務、短期間雇用の従業員

  • 短時間のアルバイト
    勤務時間が週に数時間であっても、子どもに直接指導や世話を行う業務であれば、確認の対象です。
  • 季節雇用・夏期講習期間の講師
    雇用期間が数週間や数ヶ月といった短期であっても、業務開始前には確認手続きを完了させる必要があります。
  • 派遣社員
    派遣先事業者がDBS確認を行う義務を負います。最終的な確認の実施と性暴力等の防止措置の責任は、業務を命じる派遣先の事業者にあります。

重要なのは、原則、「採用予定日または従事予定日までに確認を完了すること」です。手続きに時間を要することを考慮し、採用選考の初期段階からDBS確認をフローに組み込む必要があります。

間接的な業務を行う者との区別

非正規雇用者であっても、以下のように業務が子どもと直接関わらない場合は、原則として、確認の義務の対象外となります。

  • 専属の清掃スタッフ
    子どもとの交流や監督の役割を持たず、清掃業務のみを行う者。
  • 経理事務のみを行う者
    事務所内での経理処理を専門とし、指導現場に出ない者。

ただし、これらの非直接従事者であっても、業務中に子どもと二人きりになる可能性がある場合(例:バス運転手など)や、指導現場への立ち入りが常態化している場合には、予見可能性を考慮し、確認対象とすることが望ましいとされています。

雇用期間が短い場合の確認手続きの効率と時期

雇用期間が短いアルバイトに対してDBS確認を行う場合、手続きに時間を要することがネックとなります。特に戸籍情報の取得など、従業員本人に依頼する作業もあるため、効率的な運用が求められます。

確認申請の最適なタイミング

DBS確認の申請は、原則として採用決定後、業務従事開始前に行う必要があります。短期雇用者であっても、この原則は変わりません。
犯罪歴がなく日本国籍の方の場合、犯罪事実確認の標準処理期間は約1か月です。特定性犯罪の犯罪歴があった場合や外国籍の方の場合は、これより確認に時間を要するため、余裕を持った対応が求められます。
また、確認が完了する前に採用開始となった場合は、子ども関連業務以外への一時的な配置など、適切な措置を講じる必要があります。

採用募集段階での対応

  • 応募者への早期周知
    採用選考の初期段階(面接時など)で、DBS確認手続きが必須であること、ならびに手続きへの協力(同意)が得られない場合は採用できないことを明確に伝達します。
  • 手続きの同時進行
    雇用期間が数ヶ月と短い場合であっても、DBS確認手続きを適正に実施するためには、従業員からの協力(同意)を得ることが不可欠です。
    雇用契約の締結と同時に、DBS確認に必要な書類の提出や、戸籍電子証明書提供用識別符号の取得依頼を並行して行うことで、手続き期間の短縮を図ります。

短期契約者の確認記録の整備

後々のトラブルや訴訟リスクを回避し、手続きの透明性を確保するためにも、正規雇用の従業員同様に、記録を作成・保管しておくことが望まれます。
この記録には、短期契約であることを前提とした確認手続きへの同意内容を記載し、従業員本人の署名を求めることで、制度運用の正当性を担保できます。

業務委託(フリーランス)や派遣社員の確認は?

パート・アルバイト(雇用契約)と同様に、業務委託契約を結んでいるフリーランスの講師や指導者も多く存在します。DBS法において、事業者が負う確認義務は、契約形態の違いによって軽減されることはありません。お客様の事業で子ども関連業務に従事するすべての人が確認の対象となります。

パートやアルバイトなどと同様に、確認を行う責任者は、最終的にその従事者に業務を行わせる事業者(認定事業者)です。業務委託や派遣契約であっても、当該従事者が子ども関連業務に従事する際には、必ず確認を完了させる必要があります。

業務委託契約における実務上の注意点

業務委託契約(フリーランスなど)の場合、雇用契約とは異なり、事業者が指揮命令権を持たないという法的性質があります。しかし、DBS確認は義務であるため、以下の実務対応が必須です。

  • 契約書への明記
    業務委託契約書に、DBS確認が業務開始の必須条件であることと、確認手続きへの協力(情報提供)を義務付ける条項を必ず挿入しましょう。
  • 協力が得られない場合
    業務委託者(フリーランス)が手続きへの協力を拒否した場合、その者との契約は締結できず、子ども関連業務に従事させることはできないことを条項として入れるようにしましょう。

DBS法は、「子どもの安全確保」という絶対的な目的のために、事業者に対し、誰が業務を行うかに関わらず、確認や犯罪防止の責任を負わせている点を理解することが重要です。

派遣契約における派遣元との情報連携

派遣契約に基づき従事者が子ども関連業務を行う場合、最終的な特定性犯罪の確認の責任は派遣先の事業者(認定事業者)にありますが、派遣社員の雇用管理は派遣元の事業者が行っています。DBS確認に必要な手続きを行う上で、派遣元との情報連携は極めて重要です。

  • 派遣元との事前確認
    認定を取得する派遣先の事業者は、派遣元に対し、当該派遣社員にDBS確認手続きが必要であること、および、従事者本人から戸籍情報等の提供(取得)に関する協力が得られるかを事前に確認する必要があります。
  • 情報提供の制限チェック
    特に、派遣元が個人情報保護法や労働者派遣法に基づき、DBS確認に必要な情報提供に制限を設けていないかを派遣元と派遣先の契約書でチェックし、情報連携がスムーズに行える協力体制を構築することが重要です。

まとめ:非正規雇用の採用時フローへのDBS確認の組み込み

パート・アルバイトを含む非正規雇用者が多い事業者にとって、DBS確認を「雇用形態が違うから」と特別扱いすることは、法令遵守上、許されません。

重要なのは、非正規雇用者の採用時フローに犯罪事実確認を完全に組み込み、全従業員に対する統一的な「情報管理体制」を構築することです。

  1. 採用募集時の明記
    募集要項や求人広告に、「DBS確認を実施します」といった文言を記載し、制度への理解と協力を促します。
  2. 選考初期の依頼
    面接などで採用が濃厚となった段階で、DBS確認手続きへの協力を依頼し、必要な期間や流れを明確に伝えます。
  3. 就業ルールへの反映
    雇用契約や社内ルールにおいて、DBS確認が雇用継続に関わる重要な手続きであること、ならびに5年ごとの再確認への協力が必要であることを、制度運用上の方針として整理・共有しておくことが望まれます。
  4. 契約関係の確認と調整
    業務委託契約や派遣元との契約において、戸籍情報などの機微な情報の取得に支障がないよう、制度運用に支障をきたす可能性のある文言や手続きについて、必要に応じて関係者と調整を図ることが重要です。

行政書士は、DBS制度の理解と運用に関する文書整理や申請支援を通じて、貴社の採用フローや人事体制に制度を無理なく組み込むための環境整備をサポートします。
特に、確認記録の漏れを防ぐ管理台帳の設計や、非正規雇用者を含む多様な雇用形態に対応した運用ルールの構築支援により、法令遵守を確実に果たす体制づくりを後押しします。

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