【東京都府中市 行政書士】DBS法義務違反のリスク解説:認定取消しと罰則
目次
はじめに:DBS法違反が事業者に与える深刻な影響
学習塾、スポーツ教室、イベント事業など、子どもの安全に関わる事業を行う認定事業者にとって、DBS法(子ども性暴力防止法)の遵守は単なる義務ではなく、事業継続の前提条件です。
これまでの記事で、採用戦略やハラスメント防止、外国籍雇用における実務的な対応について解説してきましたが、では、認定事業者がDBS法上の義務を怠った場合、どのような重大なリスクに直面するのでしょうか。
DBS法違反が事業者に与える影響は、単なる罰金や行政指導に留まりません。最も恐れるべきは、「認定の取消し」と、それに伴う「社会的な信頼の完全な失墜」です。
行政書士は、企業の法令遵守(コンプライアンス)体制の整備と、行政手続きにおける法的リスクの予防を専門としています。本記事では、認定事業者がDBS法上の義務違反を犯した場合に科される行政処分、罰則、そして事業の存続に関わる信頼の喪失という三重のリスクについて具体的に解説します。
認定取消しと行政指導の要件
DBS法に基づき認定を受けた事業者が義務を怠った場合、こども家庭庁による行政指導や、最悪の場合認定の取消しという、事業の根幹を揺るがす処分が科されます。
認定取消し処分が下される具体的な要件
認定の取消しは、事業者が最も避けるべき処分です。DBS法は、以下の事由に該当する場合、認定を取り消すことができると定めています。
- 特定性犯罪歴確認義務の不履行: 子ども関連業務の従事者に対し、正当な理由なく特定性犯罪歴の確認を行わなかった場合(法第4条、法第26条)
- その他、子どもの安全確保義務の不履行:策定した児童対象性暴力対処規程を遵守せず、子どもへの性暴力の防止や犯罪発生時の対処等の措置(例:早期把握、相談、保護・支援、研修、防止措置など)が行われていた場合(法第5条~法第8条、法第20条第1項第2号~第5号)
- 情報管理義務の不履行: 確認によって知った特定性犯罪歴に関する情報を、子どもの性暴力防止以外の目的に利用した場合(例:採用差別や不当な配置転換など)や確認記録に関する帳簿に不備がある場合(法第11条、法第14条及び第20条第1項第6号)
- 虚偽の申請: 認定申請において、虚偽の記載を行った場合。
- 改善命令違反: 行政庁から改善命令を受けたにもかかわらず、これに違反した場合。
行政指導と是正の機会
認定取消しの前段階として、事業の運営状況について、報告徴収や立入検査が行われ、不備が認められた場合は、行政指導や適合命令や是正命令が出されます。
事業者は、この改善命令を最後のチャンスと捉え、命令内容に迅速かつ誠実に対応し、体制を立て直すことが不可欠です。命令に違反し続けることは、上記の通り、認定取消しの直接的な原因となります。
罰則の適用範囲:帳簿不備、虚偽報告などが招く罰則
行政処分(認定取消し)とは別に、DBS法には、事業者が法令に違反した場合に科される罰則(拘禁刑・罰金刑)も規定しています。
罰則の対象となる行為
DBS法で規定されている罰則の主な対象は以下の通りです。
- 情報の不正目的提供
犯罪事実確認書の情報を不正な利益を得る目的で情報提供した場合 - 不正目的で犯罪事実確認書を取得した時
虚偽や不正な手段によって犯罪事実確認書を入手した場合 - 帳簿・記録の不備または虚偽記載
義務付けられている確認記録に関する帳簿や書類を作成しなかったり、これに虚偽の記載をしたりした場合 - 報告の拒否・虚偽報告
行政庁からの報告徴収に対し、報告を拒否したり、虚偽の報告をしたりした場合 - 検査の拒否・妨害
行政庁による立入検査を拒否したり、妨害したりした場合
これらの違反を犯した場合、最も重い刑で2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金に処される可能性があります。
事業者と個人の責任:両罰規定
罰則が科される際、DBS法には両罰規定が適用されます。これは、法人の代表者や従業員が上記の違反行為を犯した場合、行為者本人が罰せられるだけでなく、その法人(事業者)に対しても罰金刑が科されるという規定です。
この規定により、コンプライアンス体制の不備は、経営者個人の責任だけでなく、会社全体の法的責任として問われることになります。
認定取消し後の事業継続と再生の難しさ
認定の取消しは、単に罰則や行政処分が科される以上の、事業の存続そのものに関わる深刻な影響を及ぼします。
事業活動の停止と再認定の壁
認定を取り消された場合、その事業者は子ども関連業務を継続することができなくなる可能性が出てきます。
調査や違反が公表されたことによる業務停止
認定がない状態でも子ども関連業務を行うことは可能ですが、行政からの調査や是正命令によって事業活動を一時的、あるいは長期間停止する可能性があります。
再認定のハードル
一度認定を取り消された事業者が再認定を受けるためには、取消しの原因となった問題が完全に解消され、厳格な再審査をクリアする必要があります。取消しの事実は重く、再認定のハードルは極めて高くなるでしょう。
社会的な信頼の完全な失墜
認定取消しは行政処分という公的な事実として公表されます。そのため、行政処分以外の社会的影響にも目を向ける必要があります。
風評被害と顧客離れ
子どもの安全を第一とする保護者にとって、認定取消しの事実は事業者の信用失墜を意味します。この情報は瞬時に広がり、顧客離れが加速し、事実上の事業廃止に追い込まれる可能性が高いです。
人材採用への影響
認定を取り消された事業者に、質の高い講師やスタッフが応募することは期待できません。優秀な人材の確保も極めて困難になります。
DBS法違反がもたらす最大のダメージは、罰則ではなく、市場からの信頼という無形資産の回復不能な喪失なのです。
まとめ:義務違反は「予防」がすべて:継続的なコンプライアンス体制を
DBS法に基づく義務違反は、罰金、認定取消し、信頼失墜という、事業の存続を脅かす三重のリスクを招きます。これらのリスクは、一度発生すると回復が極めて困難です。
したがって、事業者が取るべき最善の策は、「予防」に尽きます。
- 記録の厳格な管理: 帳簿や確認記録の記載・保管を厳格に行い、行政庁の検査に対応できる体制を常に維持すること。
- 目的外利用の徹底排除: 確認情報を採用判断などに絶対に利用しないという社内ルールを徹底すること。
- DBSに関する業務運用ルールの認識共有: DBS制度の運用における最低限の注意点は全社員が認識するようにしましょう。認識の欠如が運用ルールの形骸化につながり、最終的な法令違反による認定取り消しなどにつながります。
許認可維持といったコンプライアンス遵守に関する豊富な経験を持つ当事務所は、行政指導や罰則の対象となるリスクを分析し、こども家庭庁や行政庁への提出書類・記録の整備、法的なコンプライアンス体制の構築を通じて、貴社の事業を重大なリスクから守り、持続的な事業運営をサポートいたします。
