【東京都府中市 行政書士】DBS対応マニュアル作成:機微情報と研修の安全基準

はじめに:属人化を防ぐ「対応マニュアル」の必要性

DBS法(子ども性暴力防止法)の認定事業者として、皆様はこれまで、特定性犯罪歴の確認義務の履行、情報管理、懲戒規定の整備など、多岐にわたるコンプライアンス体制を構築されてきました。

しかし、これらの法令遵守の取り組みが、特定の担当者や経営者の「個人の努力」に依存している状態では、事業継続のリスクは解消されません。担当者の異動や退職、あるいは突発的な事態が発生した際に、「誰が、いつ、何をすべきか」が分からなくなり、法令違反や情報漏洩といった重大なリスクを招く可能性があります。

認定事業者のコンプライアンスを「属人化」から解放し、組織全体で標準化された安全基準とするために不可欠なのが、「児童対象性暴力対処規程」の策定と、それに従った実務レベルの「DBS対応マニュアル」の作成と運用です。

このマニュアルは、行政指導や罰則を避けるためのリスク予防策であると同時に、子どもの安全を最優先するという企業の意思を全従業員に共有する社内憲章ともなり得ます。

本記事では、DBS法の実務を円滑に進めるためにマニュアルに盛り込むべき具体的な運用フロー、機微情報の取扱いルール、そして研修への活用法について、行政書士の視点から詳しく解説します。

マニュアルに必須の3つの運用フロー

DBS対応マニュアルは、日常的な業務から緊急時の対応まで、認定事業者の全業務をカバーする実用的な内容でなければなりません。特に以下の3つの運用フローは必須です。

採用時の特定性犯罪歴確認フロー

最も重要で、かつ法令が厳格に定める手続きです。担当者が変わっても正確に実行できるよう、以下の事項を時系列で明確にします。

対象者の特定

DBS確認が必要な「子ども関連業務の従事者」の定義(正社員、パート、派遣、ボランティアなど)を明確にする。

確認手続き

採用内定から業務開始までの間に、いつ、誰が、応募者に対してDBS確認の協力同意を得るか、そして行政庁への確認依頼をいつ行うかをステップ形式で記載する。

確認結果の対応

 確認書が到着した場合(特定性犯罪歴「なし」の場合)、「特定性犯罪歴あり」の事実が判明した場合、そして応募者が協力を拒否した場合の、それぞれの人事上の対応手順を具体的に記載します。特に特定性犯罪歴が判明した際の配置転換や不採用の決定プロセスは、人権に配慮した慎重な手順を明確にすべきです。

児童対象性暴力対処規程に基づく対応フロー

採用後に発生した不適切な指導に対応するための、以下の緊急時の標準手順を定めておく必要があります。

早期把握・通報ルート

子ども、保護者、従業員からの相談・通報窓口(外部専門家を含む)とその連絡先、そして通報を受けた者が即座に報告すべき管理者を明確に記載し、初動対応の体制を確立する。

事実調査の手順

通報があった際、誰が(調査委員会など)、どのような手順で(ヒアリング、記録収集など)、プライバシーに配慮しつつ調査を進めるかを詳細に定める。

被害者への支援

被害を受けた子どもへの心理的ケアや保護者への対応、そして関係機関(警察、児童相談所など)への連絡手順を定めます。

定期的なチェックと記録管理フロー

DBS法の義務違反が多く予想されるのが、確認記録の適切な管理と確認の実施状況に関する台帳の不備です。このリスクを防ぐための継続的な管理手順が必要です。やるべきこととしては大まかに以下の3つがあります。

帳簿・記録の整備

特定性犯罪歴確認に関する帳簿(記録)を誰が、いつ、どのように作成し、保管するのかを明確にする。

台帳の更新

派遣社員やボランティアを含めた全従事者のDBS確認状況を一覧できる台帳を誰が管理・更新するかを定める。また、記録担当者以外の閲覧者を決める場合は、それが誰なのかを明確にする。

定期監査

 年に一度など、定期的にDBS対応マニュアルに基づく運用ができているか、チェックリストを用いて内部監査を行う手順を定めます。

機微情報を取り扱うためのマニュアル

DBS確認によって知った特定性犯罪歴に関する情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたり、目的外利用の禁止が厳格に定められています。マニュアルには、この機微情報の取り扱いを定めた「情報管理規程」にも必ず言及し、規程に即した実務的な対処法を記載しましょう。

情報のアクセス制限と保管方法

  • アクセス権者の限定
    確認情報にアクセスできる担当者を最低限の人数に限定し、その氏名と権限を明記する。
  • 物理的・電磁的対策
    確認書(紙)は鍵のかかる厳重な書庫に保管すること、電子データ(帳簿)はパスワードや暗号化を施し、アクセスログを取得することを義務付ける。
  • 保管期間と破棄
    DBS法に基づき定められた記録(確認記録の実施状況を記した台帳、犯罪事実確認書など)の保管期間と、保管期間の経過後、誰が、どのような手順で(シュレッダー、データ完全消去など)、安全かつ確実に破棄するかを明記する。
  • 情報漏洩の発覚時の報告体制
    万が一情報が漏洩した場合は、こども家庭庁に報告する義務があります。そのため、漏洩の疑いがあったときに誰に、どのような報告をすべきか、個人情報保護法などその他法令に基づき対処すべき事項(本人への説明、再発防止策など)を明確にしましょう。

目的外利用の明確な禁止

DBS法違反のリスクを回避するため、以下の禁止事項をマニュアルに明記し、周知徹底します。また、第三者への情報提供については、人事・経営管理者に限らず、全社的な情報漏洩対策として必要な対応となるかもしれません。入社時に誓約書の提出をお願いしている事業所では、誓約条項に加えるなど工夫も検討しましょう。

  • 採用選考への利用禁止
    特定性犯罪歴の確認情報を、子どもの安全確保の目的以外の採用選考(例:採用選考の優先順位の決定、配置転換の決定)に利用してはならないことを、具体的な事例を挙げて注意喚起する。
  • 第三者への提供禁止
    確認情報を、行政庁への提出や法令に基づく場合を除き、第三者(他の事業者、取引先など)に提供してはならないことを定める。

マニュアルを活用した全従業員研修の実施

DBS対応マニュアルは、作成するだけでは意味がありません。全従業員が内容を理解し、緊急時に即座に実行できるようにするために、マニュアルを教材とした定期的かつ実務的な研修が必要です。

階層別・職種別の研修義務

研修は、全従業員に対して実施することが義務付けられています(児童対象性暴力対処規程)。マニュアルを基に、以下の階層別研修を定期研修として業務に組み込みましょう。

管理者・採用担当者向け

DBS確認フロー、機微情報管理、緊急時の対応、行政庁への報告義務など、法的責任が伴う事項に焦点を当てた研修

一般従事者向け

児童対象性暴力対処規程、不適切な指導の定義、相談・通報窓口の利用方法、そして子どものサインを見逃さないためのチェックポイントに焦点を当てた研修。

ボランティア向け

DBS確認への協力義務、情報管理の重要性、そして子どもの安全確保の倫理規定に焦点を当てた研修。

全社員向け

偏見防止のための啓蒙に焦点を当てた研修(内定辞退や採用取り消しがあったとしても、それが直ちに特定性犯罪歴を有するとは限りません。そのため、憶測であたかも性犯罪者であるとした情報を流すことが偏見につながることを目的とした研修)

 研修の記録と改善

研修の実施は、単なる参加ではなく、内容の理解と定着が目的として制度上の義務として定められていると考えられます。そのため、以下の点にも目を向けて研修の業務構築をしましょう。

記録義務

研修の実施日、参加者、内容を記録し、行政庁への報告に備えましょう。

実践的な訓練

マニュアルの緊急時対応フローに基づき、ロールプレイング形式で通報から調査開始までの初動対応を訓練し、その結果をフィードバックしてマニュアルを継続的に改善します。また、犯罪が起きた際の保護者や子どもへのコミュニケーションにおいて留意すべき点を洗い出しして置き、2次被害を出さない工夫を明確にしておきましょう。

調査に関する訓練

犯罪事実の調査がいざ起こった場合は、ヒアリングはとても慎重かつ丁寧な対応が求められますが、何をどうすべきか内容が不十分だと焦って却って事態を混乱させるかもしれません。
警察への対応を要する場合は連携を優先すべきですが、もし社内にて調査を進める場合は、疑われている従業員への偏見防止と被害にあった子どもの心や体の安全の両方を考えながら進めなければなりません。この対応は難易度が高いため、日ごろから心理士や警察など専門家と連携をとりながら、さらなるトラブルに発展しないようなプロセス構築、事態発生における対応について行動ベースで落とし込める訓練項目を明確にしておきましょう。

まとめ:運用体制の構築は「備え」:マニュアル整備支援

DBS法に基づく認定は、「法令遵守体制を整備している」という行政からの承認です。この体制を持続可能にするのが、DBS対応マニュアルです。

DBS対応マニュアルの整備は、単なる書類作成ではなく、組織全体の安全文化を築くための「備え」です。

マニュアルの作成を怠ると、属人化による法令違反リスク、緊急時の対応遅延、そして情報漏洩という三重のリスクを常に抱えることになります。

行政書士は、DBS法の要件と貴社の実務フローを深く理解した上で、マニュアル全体の構成立案、機微情報の管理規程の策定、そして各フローの法的な整合性のチェックを行うことで、貴社の安全管理体制を構築し、行政庁の審査や監督に対応できる強固な運用基盤の整備をサポートいたします。

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