DBS法は「コスト」か「投資」か? 認定取得の費用対効果と長期戦略を行政書士が解説

こども性暴力防止法(DBS法)の成立・施行に伴い、教育・保育等を提供する事業者の皆様は、認定申請や犯罪事実確認の義務的運用という新たな課題に直面しています。

経営者の皆様、事務担当者の皆様にとって、この法律対応は「手間と費用のかかる単なる義務」に見えるかもしれません。しかし、この制度対応を単なる「コスト」として捉えるか、「企業の信頼と持続可能性への戦略的な投資」として捉えるかで、長期的な企業価値は大きく変わります。

本記事では、DBS法対応にかかる費用を具体的に試算し、未対応によるリスクを定量化。コストを抑えつつ遵守を徹底するための具体的な方法と、法令遵守が企業にもたらす長期的なメリットを行政書士の視点から解説します。

DBS対応にかかるコストの定量化:直接費と間接費の試算

DBS法対応にかかる費用は、目に見える「直接費」と、見過ごされがちな「間接費」に分けて考える必要があります。代表的な内容と試算のポイントは次のとおりです。

DBSにかかるコスト(直接費、間接費)

特に間接費は、単価の高い管理部門の時間を費やすため、総額が大きくなりがちです。この人件費をいかに削減し、本来の業務に振り向けるかが、費用対効果の鍵となります。 これらの概算を見積り、長期的なブランディング手法としての費用対効果と比較して認定の取得を検討しましょう。
特に認定取得後、事務手続きや安全配慮の負担が現場に集中しすぎると運用が破綻します。オペレーションの不確実性は認定取消しといった最悪の影響を招くため、経営者のトレンドに乗ろうという気持ちだけで先走らず、現場が無理なく対応できるオペレーションを構築できるか、慎重な態度で検討を進めてください。

未対応リスクの試算:「認定取消し」「公表」による逸失利益と信用毀損額

DBS法に適切に対応しない場合、または法令違反が発覚した場合のペナルティは、支払う金銭的なコストをはるかに超える損害を企業にもたらします。

認定取消し・事業停止リスク

法令違反や不適切な情報管理が判明した場合、行政による認定の取消しや是正措置命令を受ける可能性があります。これは事業の継続自体を脅かす、最も重大なリスクです。

公表による信用毀損額

DBS法では、認定取消しや法違反があった場合、その事実が公表されます。

  • 逸失利益
    公表により、保護者が安心してサービスを利用できなくなり、契約解除が相次ぐ可能性があります。これは数年分の売上(逸失利益)に相当するかもしれません。
  • 信用毀損額
    ブランドイメージの低下、特に子どもの安全に関わる分野での信頼喪失は、企業価値そのものの低下を招きます。採用活動におけるブランディングにも致命的な影響を与えます。

DBS対応を怠った場合のリスクは、支払うべき直接費・間接費の何倍、何十倍もの損失につながる可能性があることを、経営者は認識しなければなりません。

コストを削減しつつ遵守を徹底する方法:効率的な記録管理システムの導入

コストを削減しつつ法令遵守を確実にするには、事務工数を徹底的に削減し、ミスを防ぐ「仕組み化」が不可欠です。

DBS法において義務付けられる「犯罪事実確認記録等」の厳格な管理は、紙や共有フォルダに頼る手作業では、情報漏洩や誤廃棄のリスクが高く、非効率です。

デジタル管理の徹底

  • 犯罪事実確認記録(要配慮個人情報)のアクセス権限設定
  • 確認記録の作成・廃棄・消去の記録(いつ、誰が、何を確認したか)
  • 期限管理(再確認が必要なタイミングの通知)

これらを自動化・一元管理できる効率的な記録管理システム(法関連システムまたは自社でカスタマイズしたシステム)を導入することで、管理コストである人件費を大幅に削減でき、確実な遵守を担保できます。

また、初期の規程作成や認定申請手続きは、行政書士などの専門家に依頼することで、事務担当者がゼロから学ぶ時間と、誤りによる手戻り(再申請)のリスクを回避できます。

また、この解説ではデジタルを推奨しておりますが、紙で保存する場合は、鍵付きキャビネットや大企業では入室記録ができるセキュリティ対策を講じるなど厳重な管理を可能にする設備の導入を検討しましょう。

長期的な視点:法令遵守による企業価値向上と、優秀な人材確保への効果

DBS対応を「投資」として捉える最大のメリットは、「法令遵守」がそのまま企業の「社会的な信頼(ブランド価値)」となる点です。

企業価値の向上と保護者の信頼獲得

DBS法に基づく認定を取得し、透明性の高い情報管理を実践することは、「私たちは子どもの安全を最優先しています」という強力なメッセージになります。これにより、保護者層から「選ばれる事業者」となり、競合他社との差別化につながります。

優秀な人材の確保(採用ブランディング)

特に教育・保育分野の従事者は、働く場所のコンプライアンス意識や安全管理体制を強く意識します。法令を厳格に遵守し、安心・安全な職場環境を整備することは、質の高い人材を惹きつけるための強力な採用ブランディングとなります。

DBS対応は、一過性のコストではなく、企業のコンプライアンス体制とブランドイメージを強化し、結果として長期的な売上と優秀な人材確保に結びつく、費用対効果の高い「必須の戦略的投資」であると結論づけられます。 義務教育課程での制度が定着すればするほど、民間事業所における教育サービスにも教育の質と同等に安全基準というものが認知される可能性を鑑み、DBSの認定取得の必要性については5-10年スパンの事業戦略の市場動向としてとらえるようにしていきましょう。

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