犯罪事実確認書は保護者に「絶対開示できない」:第三者提供リスクと現場対応マニュアル

はじめに

こども性暴力防止法(DBS法)に基づく認定を取得した事業者の皆様は、お子様の安全を守る体制が整っているという信頼を得られます。しかし、その信頼を維持するためには、「犯罪事実確認記録等」の厳格な情報管理が必須です。

事業者が直面する情報管理上の最大のリスクの一つが、保護者からの強い要望や不安を背景とした「あの先生は大丈夫なのか?」という情報開示の要求です。

経営層や事務担当者の皆様は、「子どもの安全のため」という正義感のある要求に対し、安易に情報を提供してしまい、個人情報保護法やDBS法に違反し、最悪の場合、DBS認定を取り消されるという重大なリスクを負う可能性があります。

本記事では、保護者からの開示要求の法的本質を解説し、組織を情報漏洩リスクから守るための具体的な対応フローと体制構築のポイントを、行政書士の視点から詳解します。

DBS記録の最大リスク:「保護者への安易な開示(第三者提供)」の法的責任

保護者からの開示要求の法的本質:なぜ「絶対に開示できない」のか

DBS記録(特定性犯罪歴の有無に関する情報)は、従業員本人の個人情報であり、特に「犯罪の経歴」を含むため、個人情報保護法上の最も機密性が高く、厳格な保護が義務付けられた情報です。

DBS法だけに限らず、個人情報保護法という観点からも、情報開示における基本姿勢は「安易に提供しない」ことが必要です。

保護者の方が「自分の子どもの担任の情報を知りたい」と要求した場合でも、その保護者の方は、法律上、当該従業員にとっては「第三者」に当たります。

第三者提供の原則禁止

個人情報保護法は、本人の同意がない限り、保有個人データ(DBS記録)を第三者(保護者)に提供すること(開示すること)を原則として禁止しています。

例外規定の不適用

法令に基づく場合など、一部例外的に第三者提供が認められるケースがありますが、「保護者からの要求」であっても、原則は本人の同意を得ることなく、情報を提供することはできません。

したがって、事業者は、保護者からの強い要望があったとしても、従業員本人の同意なくDBS記録を開示することは、情報漏洩という重大な法令違反となりますので、避けるべき対応となります。

「あの先生は大丈夫か」という保護者の不安への代替的な対応

保護者が情報開示を求める背景には、「自分の子どもを預ける場所は安全なのか」という切実な不安があります。開示請求を拒否する際には、この不安を和らげる代替的な説明を提供することが、まずはトラブル回避の最初の行動であり、鍵となります。

個人情報の開示請求をした保護者への説明例

開示はできなくとも、「認定を受けていること」や「法令を遵守した厳格なチェックと管理体制があること」を丁寧に説明することで、保護者の不安に対応し、信頼関係を維持しましょう。

第三者提供が発覚した場合のペナルティ:信用毀損

もし、DBS記録を保護者などの第三者に開示してしまった場合、事業者は以下の重大なペナルティに直面します。まず考えられるのは次の3つです。

DBS法上の認定取消し・行政処分

DBS法に定める「犯罪事実確認記録等の厳格な情報管理措置」の義務に違反したと判断された場合、認定の取消しや是正措置命令の対象となります。

個人情報保護法上の罰則

法令に違反して個人情報を提供した場合、個人情報保護法上の罰則が適用される可能性があります。さらに、個人情報を不当に開示されたと認識した従業員から損害賠償を請求される可能性もあります。

社会的な信用毀損

DBS記録の漏洩は、コンプライアンス意識の欠如として社会に認識されます。子どもの安全に関わる事業において、この情報の漏洩は企業のブランドイメージを致命的に毀損し、保護者からの契約解除や優秀な人材の離脱を招き、計り知れない逸失利益につながります。

このリスクを回避するためには、記録のアクセス権限を最小限にし、事務担当者や窓口担当者の対応マニュアルを徹底することが不可欠です。

 現場で使える! 保護者からの情報要求時の簡易対応マニュアル

窓口担当者や現場の事務担当者が「開示要求」を受けた際に、その場で法令違反のリスクを負わないための具体的な対応ステップを簡易版として作成しました。実際の対応にもご活用ください。

保護者からの情報要求時の簡易対応マニュアル

トラブル対応時、事実と異なる説明は厳禁ですが、不安を抱く保護者の背景を読み取り、感情的な部分に寄り添う「傾聴の姿勢」が極めて重要です。その場で全てを解決しようと焦らず、冷静に事実と法令遵守の体制を伝え、保護者の気持ちを置き去りにしない丁寧な対応を心がけてください。

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