【日本版DBS】犯罪事実確認拒否への対応と誓約書の整備|不利益取り扱い禁止の解釈・配置転換・虚偽申告への備え(行政書士解説)

はじめに:「拒否」と「虚偽申告」は別々に備える

確認拒否と虚偽申告——どちらも確率としては低いですが、ゼロではありません。

拒否については、「疑われることへの嫌悪感」「プライバシーへの不安」から拒否や強い懸念を示すスタッフが出てくることが考えられます。また、経歴詐称をしている人ほど、照会を避けるために拒否するケースもあると考えています。制度開始前から雇用しているスタッフの中に、そういったケースが潜んでいる可能性は否定できません。

虚偽申告のパターンは複数あります。履歴書や職歴の詐称(前職での懲戒・解雇を隠す)、本籍地や氏名などの戸籍関連情報を虚偽申告することで照会システムに正確な情報が登録されず犯罪事実確認自体が機能しない状態を作る、誓約書への虚偽記入——どれも「聞いていた事実と異なっていた」といった従業員への不信感を生み、継続雇用が難しくなることが考えられます。事業者がこれらのリスクに気づくのは、トラブルが起きた後や、同業者・保護者から「他社は誓約書を取っている」と指摘されたときが多いと思っています。

本記事では、拒否への正しい対処法と、照会では補完できない虚偽申告リスクへの備えを、前記事(同意取得・拒否対応)の続きとして解説します。

第1章 確認拒否への対応:「解雇できない、でも接させられない」

「解雇できない」は本当か

結論から言うと、「DBS確認への同意を拒否したこと」のみを理由とした解雇は、法的に極めてハードルが高く、原則として認められません。

こども性暴力防止法では、確認拒否を理由とした不利益な取り扱いを明確に禁止しています。これは事業者にとって理不尽に感じられるかもしれません。「義務なのに拒否を認めるのか」という困惑は当然です。

「解雇もできない、でも子どもと接させてもいけない」という板挟みについて
この判断を一人で抱え込まないでください。私が行政書士としてできることは、この制度に関する運用とサポートまでですが、解雇・退職勧奨・配置転換命令の適法性については、提携弁護士や社労士という適切な専門家にお繋ぎすることが私の役割だと考えており、その体制は整えております。お困りの方は、お気軽にお問い合わせください。

禁止される行為と可能な対応:一覧表

スタッフへの説明で伝えるべき4点

拒否が起きないための最善策は、事前の丁寧な説明です。以下の4点をセットで伝えることで、「なぜこれが必要なのか」の理解を得られます。

  1. 何が確認されるか:特定の性犯罪等の前科・前歴のみ。全犯罪歴が調べられるわけではない
  2. 誰が知るか:確認結果は組織内の限定的な担当者のみ。目的外利用は禁止
  3. なぜ行うか:スタッフ個人を疑うのではなく、組織全体で「こどもを守る姿勢」を示すもの
  4. 同意の意味:確認に同意することは「自分は安全な支援者である」という公的な証明になる

説明の場には管理職2名以上が同席し、説明内容と相手の反応を記録しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

配置転換が難しい場合——専門家への相談が必須

配置転換先が存在しない小規模事業者では、「子どもと接しない業務への変更」自体が困難なケースがあります。この場合、退職勧奨や解雇の検討は弁護士・社労士への相談なしに進めてはいけません。

重要な注意事項
犯罪事実確認拒否に関連する人事判断(配置転換・退職勧奨・解雇等)は、労働法・雇用法上の複雑な問題を含みます。個別の判断は必ず弁護士・社会保険労務士に相談した上で行ってください。

第2章 誓約書の整備:照会が補完できないリスクへの備え

なぜ誓約書が必要か

犯罪事実の照会は「刑事処分(前科)として確定した記録」を確認する仕組みです。つまり以下のリスクには対応できません。

  • 照会後に新たに発生した犯罪行為
  • 前職で性暴力・不適切行為があったが、刑事処分に至らなかった事案(示談・不起訴・組織内で内々に処理された等)
  • 前職での懲戒処分・解雇の事実(刑事事件化していない場合)

これらのリスクを補完するのが、本人からの「自己申告」と「誓約書」です。

誓約書に盛り込むべき4項目

【別紙4】 誓約書・内定通知書参考例(Word/43KB)

誓約書は「事業所を守る法的根拠」
誓約書によって「申告していたではないか」という事実が、後の処分・解雇の合理性を支えます。トラブルが起きてから「誓約書を取っておけばよかった」と後悔する前に、採用時の書類として整備しておくことを強くお勧めします。

誓約書が「不審な人を排除する抑止力」になる

厳格な確認体制——特定性犯罪事実の照会に加えて誓約書を取得する事業所——には、悪意ある者が自ら入職を避ける傾向があります。「ここは厳しく確認される」という情報が広まることで、不審な人を未然に排除する防止役割が生まれます。

求人票・採用説明会に「特定性犯罪事実の照会・誓約書の取得あり」と明示することは、保護者や地域への信頼発信であると同時に、悪意ある応募者への無言のブロックでもあります。

就業規則との連携が必須

誓約書だけ取っても、就業規則に虚偽申告への対処方針が書かれていなければ処分の合理性が揺らぎます。就業規則にはいくつかポイントがあります。こども家庭庁にて提供されている就業規則参考例を確認しながら改訂をしてください。

【別紙5】 就業規則参考例(Word/65KB)

虚偽申告が発覚した場合の整理

虚偽申告が発覚しても、即座に解雇できるとは限りません。以下は一般的な法的整理の概要です。

  • 採用時の重要事実の虚偽申告
    採用取り消し(錯誤による無効・詐欺による取り消し等)の根拠となりうる
  • 就業中に発覚
    就業規則の懲戒規定(懲戒解雇等)の適用対象となりうる
  • ただし
    処分の適法性は個別事情・就業規則の内容によって異なる。必ず弁護士・社労士に確認する

まとめ:手続きの面倒が、自社を守る盾になる

拒否への対応も誓約書の整備も、「また手続きが増えた」と感じる方もいると思います。

でも、その面倒こそが自社を守る行為です。備えあれば憂いなし——この言葉がDBS対応ほど当てはまる場面はないと思っています。

拒否が起きたとき、虚偽申告が発覚したとき、「事前に整備していたから動ける」という状態を作っておくことが、事業者としての最低限の自己防衛です。そして、子どもの安全を守るための組織としての責任でもあります。

行政書士が担えるのは、規程の整備・申請サポートとなりますが、人事・労務の判断は、弁護士・社労士という専門家に繋ぐことが私の仕事だと思っています。その繋ぎ役として、一緒に備えを進めましょう。

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