DBS確認拒否者への対応|不利益取り扱い禁止の解説と配置転換の考え方

はじめに

「DBS照会に同意しない」と言うスタッフが出てきたとき、事業所はどう対応すればよいでしょうか。「同意しないなら解雇」という対応は適切なのでしょうか。

本回では、横断的指針が示す「不利益取り扱い禁止」の原則と、事業者として取れる現実的な対応を整理します。

原則としての「確認拒否のみを理由とする不利益な取扱いの禁止」

何が「不利益」に当たるのか?ガイドラインの解釈

横断的指針は、「DBS照会への同意・協力をしないことのみを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない」と定めています。

🔴 「不利益な取り扱い」として禁じられる行為の例

  • DBS確認への同意拒否のみを理由とした解雇・雇い止め
  • 同意拒否を理由とした降格・賃金引き下げ
  • 同意拒否を理由とした採用取り消し(求職者の場合)
  • 同意拒否を理由とした不当な嫌がらせ・孤立させる行為

ただし、この規定は「拒否しても何も変わらない」ということではありません。「確認拒否のみを理由とする不利益」が禁じられているのであり、業務上の必要性から生じる人事上の対応は別の問題です。

ガイドラインが示す「業務遂行上の必要性」と「安全確保措置」のバランス

こどもと接する業務に従事させるかどうかの事業者判断の余地

横断的指針は、「DBS確認を拒否した者をこどもと接する業務に従事させるかどうかは、事業者が業務上の必要性と安全確保の観点から判断できる」としています。

つまり、「解雇はできないが、子どもと接する業務に従事させないことはできる」という整理です。

📋 確認拒否者への対応の考え方(指針に基づく整理)

【禁じられること】
確認拒否のみを理由とした解雇・降格・雇い止め等

【可能な対応】
こどもと接する業務への従事を一時的に停止し、非接触業務に変更する(配置転換) 配置転換先の業務が存在しない場合は、法的な観点から弁護士・社会保険労務士に相談する

スタッフに納得感を与えるための、指針に基づいた説明フロー

制度の目的(こどもの保護とスタッフの権利保護)を並立させる対話

確認拒否が生じる背景には、「なぜ自分が照会されるのか」「どんな情報が確認されるのか」という不安や不信感があることが多いです。制度の趣旨を丁寧に説明することが、拒否を防ぐ最善策です。

💡 スタッフへの説明で伝えるべきポイント

  1. 何が確認されるか(性犯罪等の前科・前歴のみであること)
  2. 確認結果は組織内の限定的な担当者のみが把握し、目的外利用はしないこと
  3. この確認はスタッフ個人を疑うものではなく、組織全体で「こどもを守る姿勢」を示すものであること
  4. 確認に同意することは、「自分は安全な支援者である」という証明でもあること

説明の場には2名以上の管理職が同席し、説明内容と相手の反応を記録しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

同意が得られない場合の、こどもと接しない業務への変更に関する解釈

配置転換が可能である場合の業務命令のあり方

説明を尽くした上でも同意が得られない場合、事業者は就業規則・労働契約の範囲内で配置転換の業務命令を検討することになります。

  • 就業規則への事前明記が重要
    「DBS確認への協力を求めることがある」「確認が取れない場合は業務変更の対象となることがある」という旨を就業規則に明記しておく
  • 業務命令の合理性
    業務変更の命令には合理的な理由(こどもの安全確保)が必要。命令の内容・理由を書面で交付する
  • 配置転換先がない場合
    「配置転換先が存在しない」という事情は、退職勧奨・解雇の判断に影響しうるが、法的リスクを伴うため必ず弁護士に相談する
  • 記録の重要性
    配置転換等の手続きによってその後の労働紛争の可能性も否定できない為、対話・説明・業務命令のすべての経緯を時系列で記録する

重要:DBS確認拒否に関連する人事判断(配置転換・退職勧奨・解雇等)は、労働法・雇用法上の複雑な問題を含みます。個別の判断は必ず弁護士・社会保険労務士に相談した上で行ってください。本記事はガイドラインの解説にとどまります。

まとめ─DBS確認拒否への対応の原則

  1. 「拒否のみを理由とする不利益取り扱い」は禁止:解雇・降格は原則不可
  2. 「子どもと接する業務への非従事」は可能:配置転換という選択肢がある
  3. 事前の就業規則整備と丁寧な説明が最善策:拒否が起きないための準備が重要
  4. 個別の人事判断は専門家へ:弁護士・社会保険労務士への相談が必須

次回は、誓約事項の重要性と、虚偽申告への備えについて解説します。

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