【東京都府中市 行政書士】外国人講師採用とDBS:海外の犯罪歴確認リスクと対策

はじめに:国籍を問わず適用されるDBS法の原則

英会話教室、インターナショナルスクール、プログラミングスクールなど、グローバルな人材を採用する認定事業者にとって、外国籍の講師やスタッフのDBS確認手続きは避けて通れない課題です。

まず、大原則として理解すべきは、DBS法(子ども性暴力防止法)に基づく特定性犯罪歴の確認義務は、従事者の国籍や在留資格に関係なく、 日本国内で子ども関連業務に従事するすべての人材に適用されるという点です。これは、法律の目的が「子どもの安全確保」であり、そのリスクは国籍に依存しないためです。

しかし、外国籍の方の採用において、事業者が直面するのは、「日本の確認手続きでは、海外での犯罪歴をどこまで把握できるのか」という決定的な課題です。日本の公的機関が行うDBS確認は、原則として日本国内での犯罪記録を対象としており、海外の司法記録との連携には限界があります。

本記事では、この「確認できる範囲の限界」を踏まえ、国際的な人材を雇用する事業者が、法的リスクを最小限に抑えつつ、最大限に子どもの安全を確保するために取るべき自主的なコンプライアンス措置を、行政書士の視点から解説します。

日本のDBS確認で「確認できる範囲」の限界

DBS法に基づく確認手続きは、従事者の特定性犯罪歴を把握するための強力な手段ですが、その情報源には明確な限界があります。

日本のDBS確認は「国内の記録」が基本

DBS確認は、主に日本の刑罰法令に基づき、過去に日本国内で確定した性犯罪の記録を照会するものです。

日本国外での犯罪記録

こども家庭庁を通じて犯罪記録の確認の依頼を受けるのは法務省です。法務省は原則として外国の司法当局が持つ犯罪記録(海外での起訴・有罪判決の記録)を直接照会したり、取得したりする権限や仕組みを持っていません。

したがって、外国籍の応募者が日本への在留期間が短い場合や、母国での生活期間が長い場合、日本のDBS確認だけでは、過去の性犯罪歴の有無を完全にクリアにすることはできません。

採用の判断と「情報の欠落」リスク

事業者は、この「情報の欠落(ギャップ)」というリスクを認識した上で、採用の判断を下す必要があります。日本のDBS確認が「問題なし」と出たとしても、それは「日本国内で問題となる記録がない」ということを意味するだけであり、「海外でも完全にクリーンである」という証明にはならないのです。
このリスクは、事業者が単に法令を遵守しただけでは防げない、国際雇用特有の課題となります。

事業者が取るべき自主的なコンプライアンス措置

日本のDBS確認の限界を補完するため、認定事業者は自主的なリスクヘッジ措置を講じる必要があります。
しかし、その手段の中には、法的リスクやハラスメントリスクが極めて高いものが含まれることを認識しなければなりません。

海外犯罪経歴証明書(PCC)提出要求はNG、その法的リスク

外国籍の応募者に対し、母国の公的な犯罪経歴証明書(PCC)の提出を求めることは、海外歴の情報の欠落を埋める一つの方法ではありますが、行政書士としては極めて慎重な対応を推奨します。

不当な差別とハラスメントリスク

外国籍の応募者のみにPCC提出を要求することは、国籍による差別と見なされる可能性が極めて高く、公正な採用選考の原則に反します。これは、採用ハラスメントとして法的なトラブルに発展するリスクを伴います。

広範なプライバシー侵害

海外犯罪経歴証明書はDBS法が限定する特定性犯罪歴だけでなく、その国の法令に基づく全ての犯罪記録を開示させるものであり、応募者の広範なプライバシー侵害にあたります。

実務上の注意点

提出を検討する場合であっても、その合理的な理由(日本のDBS確認の限界)を応募者に十分に説明し、任意の協力として明確な同意を得るための、厳格な運用体制が必要です。

採用面接での「適性・倫理観」の確認徹底

差別リスクのない自主的な措置として、面接で適性・倫理観の確認を深掘りすることが最も容易で現実的です。海外での職務経験や生活に関する質問を通じて、応募者のリスク認識と文化理解を測ることが重要です。

 <採用面接時の質問例>

  • 「過去に居住した国での指導経験について、文化の違いから生じるリスクをどう認識していますか?」
  • 「母国の倫理観と日本の教育現場の倫理観の違いをどう捉え、対応しますか?」

契約書に盛り込むべき宣誓条項とリスク

自主的な確認措置に加え、法的なリスクをヘッジする最も現実的な方法は、国籍を問わず、子ども関連業務に従事するすべての従業員の雇用契約書または内定通知書に応募者本人による「宣誓」の義務を盛り込むことです。

契約上の「特定性犯罪歴なし」の誓約条項

契約書に以下の内容を盛り込みます。

【誓約条項の例】

  1. 応募者は、本契約締結日現在において、日本国内外を問わず、DBS法に定める「特定性犯罪」の犯罪歴を有していないことを真摯に誓約します。
  2. 本誓約が虚偽であることが判明した場合、事業者は、就業規則の規定に従い、解雇等、懲戒処分を行うことができるものとします。

虚偽誓約が判明した場合の対応

誓約が虚偽であることが判明した場合、事業者は「契約上の誓約義務」の違反を根拠として、就業規則の規定に従い、性犯罪の防止の観点からの配置転換や懲戒処分(解雇等を含む)を行うことができます。特定性犯罪歴という事実ではなく、義務違反に基づく処分とすることで、労働契約における誠実義務(信義則)違反という現在の職務規律上の問題と見なされ、懲戒処分の合理性が高まります。

誓約の限界

誓約は、あくまで応募者本人の自己申告であり、事実の確認を代替するものではありません。しかし、事業者が最大限の努力を尽くした証拠となり、子どもの安全確保に対する経営者の強い意志を示すことになります。

まとめ:DBS制度と国際的な雇用における二重のリスクヘッジ

外国籍講師の採用は、事業に多様性をもたらしますが、性犯罪歴においては「日本国内の犯罪」と「海外の犯罪」という二重のリスクに直面します。 事業者が取るべきリスクヘッジは以下の二段構えです。

  1. 法定の義務の履行:
    • 国籍を問わず、日本国内でのDBS確認手続きを厳格に実施する。
  2. 自主的なコンプライアンスの補完:
    • 雇用契約に「特定性犯罪歴なし」の誓約条項を明確に盛り込む。
    • (性犯罪歴の疑いが非常に高いなど客観的かつ合理的な判断がある時などは必要に応じて)応募者の同意を得た上で、母国の公的証明書の提出を求めるなど、自主的な確認措置を講じる。

当事務所は、人事経験に基づく知見を活かし、雇用契約書における宣誓条項の適法な整備や、国際的な採用における公正な選考手順の文書化を通じて、貴社のDBS法上の法務リスクを軽減し、子どもの安全を守るための体制構築を支援いたします。

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