「不適切な行為」の定義と対策|グレーゾーン行動へのガイドラインの指針

はじめに

DBS法が対象とするのは「性犯罪等の前科・前歴がある者の就労制限」だけではありません。「今後の不適切な行為を未然に防ぐ」ための環境整備・行動規範の整備も、事業者に求められています。

特に悩ましいのが「グレーゾーン」の行動です。本回では、横断的指針が示す「不適切な行為」の具体的な定義と、事業所が取るべき予防的対策を整理します。

DBS法が防止の対象とする「不適切な行為」の具体的な例示

私物スマホ撮影・密室での個別指導・私的なSNS交換等の具体的リスク

横断的指針は、「性犯罪には至らないが、こどもへの性暴力につながりうる不適切な行為(前駆行動)」についても事業者が注意すべき事項として例示しています。

🔴 指針が例示する「不適切な行為」の具体例

【記録・撮影に関する行為】

  • 業務上の必要性がないにもかかわらず、私物の端末でこどもを撮影する行為
  • 撮影した画像・動画を本人・保護者の同意なく保存・共有する行為

【接触・コミュニケーションに関する行為】

  • こどもと業務外でSNS・メッセージアプリ等を通じて私的に連絡を取る行為
  • こどもと閉鎖的な空間(施錠した部屋・人目のない場所等)で二人きりになる行為
  • 業務上の必要性を超えた身体的接触(抱擁・マッサージ等)を行う行為

【関係構築に関する行為】

  • 特定のこどもに対して秘密の約束を求める・秘密を共有しようとする行為
  • 業務上の必要性がないにもかかわらず、特定のこどもへの贈り物・金銭の提供を行う行為

不適切な行為を未然に防ぐための「行動規範」への反映ポイント

現場で迷いやすい「境界線」を可視化するガイドラインの活用

「どこまでが適切な支援で、どこからが不適切か」という境界線は、現場で迷いやすいグレーゾーンです。行動規範(コード・オブ・コンダクト)に指針の例示を反映させることで、この境界線を明確にすることができます。

📋 行動規範に明記すべき主な事項

【禁止事項(明確なNG)】

  • 私物端末によるこどもの撮影・録画
  • こどもとの私的なSNS・メッセージのやりとり
  • こどもとの密室での二者関係(人目につかない場所での単独対応)

【要注意事項(状況確認が必要)】

  • 支援の一環としての身体接触(範囲・頻度・状況を記録する)
  • こどもへの贈り物・お土産(業務上の必要性の有無を確認する)
  • 緊急時の連絡手段としての個人番号の使用(事業所の公式ルールを確認する)

スタッフ研修で共有すべき「こどもとの適切な距離感」とは

指導の一環としての身体接触と「不適切な行為」の切り分け

「支援の質を上げるための身体的なサポート」と「不適切な身体接触」の区別は、意図だけでは判断できません。横断的指針は「行為の客観的な様態と記録によって判断されうる」としており、「善意だったから問題ない」という理由は通用しません。

💡 研修で共有すべき「適切な身体接触」の原則

  1. 目的が明確:「この支援のためにこの接触が必要」という理由が言語化できる
  2. 同意がある:こどもが嫌がっていない・保護者に説明している
  3. 複数の目がある:他のスタッフや保護者が確認できる環境で行われている
  4. 記録がある:支援記録に接触の内容・理由・こどもの反応を記録している
  5. 継続性のチェック:特定の子どもへの接触が繰り返される場合は、第三者(上司・管理職)が確認する機会を設ける

現場の違和感を早期に拾い上げるための、相談体制の構築

不適切な行為の多くは「周囲が違和感を感じていたが言い出せなかった」という状況の中で進行します。指針は「職員が違和感を感じた際に報告・相談できる体制」の整備を求めています。

  • 相談窓口の明確化
    「こどもへの関わりに疑問を感じたとき」に誰に相談するかを明示し、複数の窓口を設ける(直属の上司だけでなく、別の管理職・外部相談員等)
  • 相談者の保護
    相談した職員が不利益を受けないことを明示する(内部通報者保護)
  • 定期的な観察・振り返り
    スタッフミーティングで「気になった行動はなかったか」を定期的に確認する時間を設ける
  • 外部の視点の活用
    年1回以上、外部の専門家(研修講師・コンサルタント等)に現場の状況を確認してもらう機会を持つ

「違和感を共有できる文化」は一朝一夕には育ちません。行動規範の整備・研修の実施・相談体制の構築を継続的に行うことで、少しずつ醸成されます。これは「義務だから行う」ではなく、「子どもたちを守るために組織全体で取り組む」という姿勢の表れです。

まとめ─「不適切な行為」への対策の3本柱

  1. 行動規範の整備:禁止事項・要注意事項を明確にし、グレーゾーンを可視化する
  2. 研修による共有:「適切な距離感」の原則と具体例を全スタッフで共有する
  3. 相談体制の構築:違和感を早期に拾い上げ、組織として対応できる仕組みをつくる

次回は、DBS法が適用される「児童等(18歳未満)」の年齢の線引きと、年齢が混在する現場での実務対応を解説します。

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