「おそれ」の判断プロセス|ガイドラインが例示する判断基準と判断ログの残し方

はじめに

DBS法の大きな特徴は、「犯罪歴の確認」だけでなく、「犯罪歴がない場合でも性暴力等が行われるおそれがあると認められる者」への対応を求めている点にあります。

この「おそれ」という概念は、事業所に難しい判断を迫ります。本回では、横断的指針が示す「おそれ」の判断指標と、判断ログの残し方について整理します。

子ども性暴力防止法における「おそれ」という概念

犯罪歴がない場合でも「リスク」を評価しなければならない背景

性暴力は「初犯」が多く、DBS照会で犯罪歴が確認できないからといってリスクがないとは言えません。法律が「おそれ」という概念を設けたのは、過去の行為歴がない者であっても、客観的な状況からリスクを評価する仕組みが必要だという判断からです。

📋 「おそれ」に関する法律の規定(概要)
子ども性暴力防止法では、DBS照会の結果に加えて、事業者が把握している情報や状況を踏まえ、児童対象性暴力等のおそれがないかを検討し、必要な措置を講ずることが求められています。
なお、DBS照会の結果が出るまでは、犯罪歴の有無が確認できない状態であるため、 事業者は安全確保措置を強化し、子どもと単独で接触させないなどの対応が求められます。

ガイドラインで示されている「具体的な判断指標」の読み解き

不自然な接触・特定の児童等への執着・執拗な連絡等の例示

横断的指針は、「おそれがあると判断するにあたって参考となる事情」として、以下のような具体的な例示を行っています。

📋 「おそれ」の判断に参考となる事情(指針の例示より)

【行動面の例示】

  • 特定の子どもと二人きりになる機会を不自然に作ろうとする行動
  • 子どもへの身体的接触が業務上の必要性を超えていると疑われる行動
  • 特定の子どもへの過度な関心・贈り物・秘密の共有を求める行動
  • 業務外での連絡(SNS・メール等)を子どもと直接行っている事実

【申告・照会に関する例示】

  • 自己申告の内容に虚偽または重要な事実の不告知が疑われる事情
  • 前職においてこどもとの関係において問題のある行動があったとの情報

これらはあくまで「参考となる事情」であり、一つの事情だけで即座に「おそれあり」と断定するものではありません。複数の事情を組み合わせ、客観的・総合的に判断することが求められます。

防止措置(配置転換等)を検討する際の「合理性」に関する解説

教育的配慮と安全確保のバランスをどう保つか

「おそれあり」と判断した場合、事業者はその者を子どもと接する業務に従事させないための措置を取ることが求められます。具体的には配置転換・業務変更・自宅待機等が考えられます。

この判断は、対象者の権利(雇用・名誉)にも関わるため、「合理的な根拠」が不可欠です。指針は「措置の必要性と相当性の両面から検討し、その経緯を文書で記録すること」を求めています。

⚠️ 配置転換等を行う際の確認ポイント

□ 判断の根拠となった具体的な事実・情報を文書化しているか
□ 判断のプロセスに複数の管理職・法的アドバイザーが関与しているか
□ 対象者への説明は書面で行い、内容を記録しているか
□ 措置の内容は「こどもの安全確保のために必要最小限」の範囲にとどまっているか

判断経緯を台帳に残すことの重要性

行政指導時に説明責任を果たすための「判断ログ」の記録方法

「おそれ」の判断は、後から行政や司法の場で問われる可能性があります。「なぜそう判断したか」を説明できるよう、判断ログを残すことが不可欠です。

📋 判断ログに記録すべき事項

  1. 判断の日時・場所・関与した担当者名
  2. 判断の根拠となった具体的な事実・情報の内容(情報源も含めて)
  3. 検討した選択肢と、最終的に取った措置の内容
  4. 対象者への説明の日時・内容・対象者の反応
  5. その後の経過観察の記録(措置が継続中の場合)

判断ログは「事業所を守る証拠」でもあります。適切なプロセスを踏んだ上での判断であれば、仮に後から異議が申し立てられた場合でも、「合理的な根拠に基づく組織的判断」として説明できます。

まとめ─「おそれ」の判断で押さえるべき3点

  1. 「おそれ」は犯罪歴とは独立した概念:照会結果がクリアでも状況判断が必要
  2. 複数の事情を総合的に評価:一つの行動だけで判断せず、パターンと文脈を見る
  3. 判断ログは必須:根拠・プロセス・措置内容をすべて文書化する

次回は、採用面接でどこまで適格性確認ができるか、ガイドラインに基づいて整理します。

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