外国籍スタッフの日本版DBS申請ガイド|申請を迅速化する事務フローの作り方(東京都府中市)
目次
はじめに
2026年度の認定制度の運用開始に向け、子どもに関わる事業所にとって最大の関心事となっている「日本版DBS(こども対象性暴力防止法)」。認定を受けることで「子どもにとって安全な事業所」という強力なブランドを得られる反面、現場の事務負担増を懸念する声も少なくありません。
特に、グローバル化が進む英語教室、インターナショナルスクール、障害福祉サービスなどの現場において、「外国籍スタッフの確認手続きをどう効率化するか」は、採用の成否を分ける重要な課題です。今回は、外国籍従事者特有の本人確認のポイントと、事務負担を劇的に減らすフロー設計について解説します。
グローバル化する現場でのDBS。日本人と何が違うのか?
日本版DBSの基本は、「子どもに接する業務」に従事するスタッフに対し、性犯罪歴がないことを「こども家庭庁」を通じて確認することです。
日本人スタッフの場合、マイナンバーカードをもとに本人確認に関する戸籍情報を取得を依頼し、システムに登録するという明確な方向性を示すことが可能です。しかし、外国籍スタッフの場合、戸籍がない場合が多く、以下の3つの壁が立ちはだかります。
- 表記のゆれ
アルファベット、カタカナ(通称名)、漢字(漢字圏の方)など、名前の書き方が書類によって異なる。 - 身分証の多様性
在留カードに加え、パスポートや本国の公的書類が必要になるケースがある。何を用意すればいいのか担当者が混乱してしまう。 - 審査の長期化リスク
本人確認に疑義が生じると、こども家庭庁からの差し戻しが発生し、採用・配置が遅れてしまう可能性がある。
「法律だから仕方ない」と後手に回るのではなく、事前に「外国籍特有のルール」を把握しておくことが、スムーズな事業運営の鍵となります。
外国籍特有の必要書類:情報の整合性をどう確保するか
外国籍の方の場合、以下の3点セットの整合性を必ず確認してください。DBSの認定申請において最も重要なのは、「システムに入力する氏名」と「公的書類の氏名」が完全に一致しているかを確認するための根拠資料として提示を求めています。
本人を証明する書類(在留カード、旅券、住民票等)
日本に在留する外国籍の方にとって最も信頼性の高い書類です。住民票や、過去に日本国籍を持っていた方の戸籍・除籍簿などは、「発行から3か月以内」の最新のものを取得し、システム上に登録するよう依頼してください。
氏名、国籍、性別、生年月日の「変更」を証明する書類(その外国籍の方の国において発行された「変更がわかる戸籍相当の書類」)
犯罪事実の有無を照合するにあたり、本人特定情報に変更があった場合は、その履歴がたどれる情報が必要です。入国後にこれらの情報が変わった場合は、本国で発行された「変更がわかる戸籍相当の書類」の取得が必要になります。 ※変更がない場合は、その旨を証明または誓約する書面を提出します。
来日履歴の有無、氏名のカナ読み、重国籍の有無等に関する情報
こちらも本人特定のために提出を求められる項目です。来日履歴の追加や変更がなければ誓約書の提出となりますが、カナの氏名については、過去に変更手続きをした場合は、それを証明する書類をすべて提出する必要があります。
- 注意点
原則として「在留カード上の氏名」での確認が求められます。通称名のみで申請してしまうと、犯罪履歴の照合が正しく行われない恐れがあるため、必ず「本名」での管理を徹底してください。

申請時の注意点:氏名表記の「ゆれ」が招く認定遅延のリスク
事務担当者が最も苦労するのが、入力ミスによる「差し戻し」です。特にアルファベットの順序には細心の注意が必要です。
- 姓名の順序
「名・姓」なのか「姓・名」なのか。在留カードの記載順序をそのまま入力する必要があります。これを逆にすると、データベース照合ができず、差し戻しの対象になります。 - カナ読みの登録
本人の実際の発音に基づき、事業者が責任を持って登録します。ここでの「ゆれ」を最小限に抑えることが、迅速な審査につながります。
負担軽減フロー:採用時に「情報パッケージ」を回収する
申請を迅速化し、担当者のストレスを減らすためには、「採用が決まってから書類を集める」のではなく「選考・内定段階でパッケージ化して回収する」フローへの切り替えを提案します。
今後、認定取得を見据える事業者は、早期に雇用契約書や誓約書のアップデートを行うことを強く推奨します。
外国人スタッフ専用フロー
<即時に対処すべきこと>
- 特定性犯罪事実確認への同意書(多言語版): 確認を拒絶する場合、異動や業務制限があることも明示した上で同意を取得。
- 誓約書:面接時の虚偽でないこと。虚偽が発覚した場合の懲戒処分・配置転換に関する承諾。
<認定取得申請をするタイミングで>
- 在留カードの両面コピー: 期限切れでないか、就労制限がないかも同時にチェック。
- パスポートの顔写真ページ: スペル確認用。
- 氏名入力用ヒアリングシート: 「姓」「名」「ミドルネーム」をシステム入力をスムーズにするためのもの。
- 変更履歴に関する書類(または誓約書): 氏名、国籍、性別、生年月日等の変更有無を証明するもの。
- 来日履歴、氏名(かな)の変更、重国籍に関する書類: これまでのすべての変更や実態がたどれるもの。
事務担当者や経営者へのアドバイス
DBSで把握できるのは、下図のとおり、法務省内で確認できる犯罪に限定されるため、あくまで「日本国内で起きた犯罪事実」に絞られます。母国等での犯罪情報は得られないという制度上の限界はあります。 しかし、これを逆手に取り、「当校は外国籍講師を含め、全員が日本政府の厳格な性犯罪歴確認(DBS)をクリアしています」と明言することは可能です。この事実はパンフレットやWebサイトにおいて、競合他社に対する圧倒的な優位性(ブランド)になります。

「申請従事者が、日本国籍を有さず、特定性犯罪歴がない場合のフロー」
結び:多様な人材を抱える事業所が、機会損失をしないために
日本版DBSは子どもの安全を守る素晴らしい制度である一方、事務負担を伴うのも事実です。優秀な外国籍人材の採用プロセスにおいて「事務的な足かせ」になり得る側面は否定できません。
しかし、子どもに対する性暴力が増えている昨今の情勢を考えると、安全対策を最優先する姿勢は負担以上の強みになります。 審査窓口の混雑が予想される運用直前、書類不備による差し戻しをゼロにすることが、最短で「認定事業所」という信頼を勝ち取る近道です。そのために、事前に少しずつ事務フローを整備しておくことが最善策です。
多様な人材の個性を活かしつつ、制度の枠組みを賢く活用する。そのために、まずは「外国籍スタッフ専用の本人確認フロー」を今日から整備していきましょう。
