兼業・副業講師のDBS確認は自社で必須!他所流用のリスクと契約条項(東京都府中市)
目次
はじめに
現代の教育・保育現場では、複数の教室を掛け持ちするフリーランスの講師や、週末だけ別の現場で副業をするスタッフの存在は珍しくありません。
ここで多くの経営者・事務担当者が抱く疑問があります。「他の教室でも子どもを教えている講師なら、あちらの教室ですでにDBS確認を終えているのではないか?」「それなら、うちは何もしなくていいのでは?」
結論から申し上げます。その「思い込み」が、認定事業所としての最大の存続リスクになり得ます。
今回は、兼業者・副業者を活用する際の「責任の所在」と、トラブルを未然に防ぐための契約実務について解説します。
複数の教室を掛け持ちする講師のDBS、どちらがやるべきか?
スポーツ指導者、音楽講師、学習塾の先生など、スキルの高い人材ほど複数の事業所を渡り歩いています。
「A社さんで確認済みなら、うちは手間も省けるし、結果だけ教えてもらえばいいよね」
「B大学から派遣されている実習生だから、大学が確認しているはず」
このように、他者の確認結果を流用したり、確認を省略したりすることは、日本版DBS法においては認められません。たとえ他所で「潔白」と証明されていても、あなたの事業所で子どもに接する以上、あなたの事業所が確認の責任を負うのがこの法律の鉄則です。
管理責任の所在:原則「自事業所」での確認が義務
日本版DBS法の仕組みは、事業者ごとに国(こども家庭庁)に対して「認定」を申請し、その認定の範囲内でスタッフの犯罪事実を確認するものです。
「他所は他所、うちはうち」の原則
法律(第26条等)では、認定事業者は、自らの業務に従事させようとする者について犯罪事実確認を行わなければならないと定めています。
(犯罪事実確認義務等)
第二十六条 認定事業者等は、認定等に係る教育保育等従事者としてその業務
に従事させようとする者(認定時現職者(認定等の際現に当該業務に従事させている者及び認定等を受けた日(以下この項及び第三項において「認定等の日」という。)の前日までに当該業務に従事させることを決定していた者であって認定等の日の後に当該業務に従事させるものをいう。同項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、当該業務を行わせるまでに、犯罪事実確認を行わなければならない。
もし他所で確認済みであっても、あなたの事業所がその結果を公的に取得するルートは存在しません。また、個人情報の観点からも、A社が取得した情報をB社に横流しすることは「個人情報保護法違反」となります。本人の同意がない情報の提供は「漏洩」とみなされる可能性があり、提供自体が「利用目的外の利用」に該当するためです。
重複確認は「誠実さ」の証
よって、同じ講師に対して複数の事業所がそれぞれ照会をかけることになりますが、これは二度手間に見えて、実は「どの事業所も妥協なく安全を管理している」という証明です。外部人材を活用する際は、「当事業所のルールとして、必ず自社で確認を行います」と毅然と伝えることが、事業所のブランドを守ることにつながります。
確認結果の共有リスク:他事業所の結果を信じることの危険性
「スタッフに他所での確認済証を見せてもらえば十分ではないか」という誘惑には、以下の3つの大きなリスクが潜んでいます。
「情報の鮮度」のリスク
他事業所が確認したのは1年前かもしれません。その後、現在までの間に犯罪事実が発生している可能性はゼロではありません。日本版DBSの犯罪事実確認は、原則、「法人単位」で行うこととなります。 自社で最新の状態を確認することに代わる安全策はありません。
【ケーススタディ:法人単位の考え方】
同じ法人(X社)の複数拠点(M市とN市)で教える場合
1法人(X社本部)として確認すればOKです。

違う法人(A社とB社)で教える場合
A社・B社それぞれで確認が必要です。

同じブランド(A予備校)だが、フランチャイズとして法人が異なる場合
(例:X市のM法人が運営するZ教室と、Y市のN法人が運営するW教室) 看板は同じでも「運営法人」が別であれば、M法人(Z教室)とN法人(W教室)それぞれで確認をする必要があります。

「偽造・誤認」のリスク
確認結果の通知書面が本物であるか、あるいは内容を正しく理解しているかを、外部の人間が100%判断するのは困難です。他所の判断を鵜呑みにして、万が一の事態が起きた際、「他社が大丈夫だと言ったから」という言い訳は、保護者や当局には一切通用しません。手間に感じるかもしれませんが、子どもの安全を第一に、自ら犯罪事実確認を行うことを強く推奨します。
「認定取消し」の直撃
「自ら確認を行う」という義務を怠ったことが発覚すれば、それだけで認定取消しの対象となり得ます。他社の確認結果に依存することは、自社の認定の運命を他社に預けることと同義です。
契約書への記載:法的安定性を高める3つの条項
外部講師(業務委託)や兼業スタッフを受け入れる際、口約束ではなく「契約」でリスクをコントロールすることが不可欠です。業務委託契約書に盛り込むべき具体的なエッセンスを紹介します。
「DBS確認への協力義務」
契約の前提条件として、認定事業者が行う犯罪事実確認に応じることを明記します。また、違反を契約解除事由として定めることも重要です。
「乙(講師)は、甲(事業者)が特定性暴力行為歴確認を行うことに対し、速やかに同意書および必要書類を提出し、これに協力するものとする。」
「事実発生時の即時報告義務」
兼業先や私生活において、万が一対象となる犯罪事実が発生した場合、速やかに届け出ることを義務付けます。
たとえば「乙は、本契約期間中に特定性犯罪事実に関わる事案が発生した、またはその疑いにより捜査を受けた場合は、直ちに甲に報告しなければならない。」
※甲:事業所、乙:外部講師とした場合
「契約解除・配置転換」の条項
万が一の場合の出口戦略として、契約解除やその他事業所の減免事由を契約書として定めておくこともお勧めします。具体的には、「こども性暴力防止法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると業務委託者が認めたこと」を解除事由として含め、該当した場合は契約解除または契約書に沿った対処を行いましょう。
外部人材を活用するからこそ、確認フローの「自前化」が安全
副業や兼業、フリーランスといった柔軟な働き方が広がる中で、日本版DBSへの対応はますます複雑化しています。しかし、その答えはシンプルです。
「外部人材を活用するなら、確認フローだけは自社で完結させる(自前化する)」
法律の建付け上、他事業所との連携や情報の貸し借りに頼ることはできません。自社の基準で、自社の責任において確認を行う。この一見すると泥臭い「自前化」こそが、法的リスクを最小化し、保護者に対して「私たちは誰一人として確認を疎かにしていません」という強力なメッセージになります。
対応すべき実務は多いですが、一つひとつの契約を見直し、仕組みを整えることは、あなたの事業所を「選ばれるブランド」へと押し上げる投資にもなります。
弊所は、こうした複雑な契約条項の整備や、兼業者を含めた運用体制の構築を専門的にサポートしております。
「この講師の場合はどうすればいい?」「委託先との契約を見直したい」といった不安をお持ちの方は、ぜひ理想の伴走者として弊所をご活用ください。共に、隙のない安全な教育環境を築いていきましょう。
