障害児福祉の個別支援計画と記録管理の実務|作成から交付・モニタリング・保存期間まで
目次
はじめに
「個別支援計画は毎回作っています」──そう答える事業所でも、確認すると「保護者への交付が遅れていた」「モニタリング記録が支援記録と兼用になっていた」「5年前の計画書が見つからない」というケースが少なくありません。
個別支援計画は「作ること」がゴールではありません。交付・同意取得・モニタリング・記録の保存まで一連の工程として完結して初めて、制度上の義務を果たしたことになります。この記事では全工程を実務目線で整理します。
個別支援計画の全工程─「作成」は7工程の1つにすぎない
個別支援計画にまつわる業務を「作成」一言でまとめてしまうと、交付・同意取得・モニタリングという重要な工程が抜け落ちます。7つの工程を正確に把握することが、記録整備の出発点です。

🔴 特に差し戻し・指摘が多い3工程
③ 保護者への説明:口頭説明だけでは不十分。説明した内容・日時の記録と保護者署名が必要
④ 計画書の交付:署名後に保護者に渡した事実の記録が必要。「渡したはず」は証拠にならない
⑥ モニタリング記録:日々の「支援記録」とは別に独立した書類として作成することが必要
モニタリング記録は「支援記録」とは別に作成する
最もよく見られる誤りのひとつが、日々の「支援記録(サービス提供記録)」をモニタリング記録として兼用してしまうことです。
📋 支援記録とモニタリング記録の違い
【日々の支援記録(サービス提供記録)】
- 毎回のサービス提供の内容・子どもの様子・実施した支援を記録
- 算定根拠として必要(これがないと報酬返還リスクあり)
【モニタリング記録】
- 6か月に1回以上、計画の実施状況・目標達成度・子どもの変化を総合的に評価・記録
- 保護者への説明・意見聴取の内容も含む(保護者の反応・希望を記録)
- 計画の見直しが必要かどうかの判断根拠となる独立した書類
モニタリング記録がなければ、運営指導で「6か月に1回のモニタリングを実施していない」と判断されます。「支援記録にモニタリングの内容も書いてあります」では、省令の要件を満たしているとは言えません。独立したモニタリング記録の書式を整備することが必要です。
個別支援計画と障害児支援利用計画の関係
個別支援計画(事業所が作成)と障害児支援利用計画(相談支援専門員が作成)の違いと関係性を理解していない事業所が少なくありません。
📋 2つの計画の関係整理
【障害児支援利用計画】
- 相談支援専門員が作成する「利用するサービス全体を調整する計画」
- どのサービスをどのように使うかという「全体像」を示す(児発・放デイ・医療等を横断)
- 受給者証の取得・更新時に市区町村に提出される
【個別支援計画(事業所が作成)】
- 児発管が作成する「この事業所での具体的な支援内容を定めた計画」
- 障害児支援利用計画の内容と整合していることが求められる
- 5領域との関連性を明確にした上で作成(令和6年GL改訂以降)
実務上の注意点として、障害児支援利用計画が更新された場合は、個別支援計画の内容が整合しているかを確認し、必要に応じて見直す必要があります。2つの計画が矛盾している状態は、運営指導での指摘対象になりえます。相談支援専門員との定期的な情報共有が重要です。
記録の保存期間・管理方法─電子化は可能か
指定基準省令は「記録の整備・保管」を義務付けており、保存期間は原則5年です。電子化については、一定の要件を満たせば可能とされています。

電子化対応の現状と注意点
📋 記録の電子化に関する主なポイント
- 記録の電子化は「個人情報保護に関する適切な措置」「改ざん防止措置」「必要時に速やかに出力できること」等の要件を満たすことが前提
- 保護者の署名が必要な書類(個別支援計画の同意書等)は、電子署名・電子的な同意取得を活用する場合は都道府県への確認を推奨
- 電子化した記録は、バックアップ体制・アクセス権管理・システム障害時の対応方針を運用規程として整備する
- クラウド型の記録管理ソフトを利用する場合は、個人情報保護法・委託先の安全管理措置の確認が必要
「記録がない=やっていない」という運営指導の現実
運営指導では、担当者が「どのような支援をしているか」を記録で確認します。「やっています」という口頭の説明よりも、記録が優先されます。
⚠️ 記録がないと「やっていない」と判断されうる主な事項
- 個別支援計画の保護者への説明記録・署名・交付の記録
- 6か月に1回以上のモニタリングを実施した記録(支援記録と独立した書類)
- 虐待防止・身体拘束・感染症・BCP・安全計画の委員会開催記録・研修実施記録
- 保護者への相談援助・家族支援の実施記録
- 関係機関(学校・医療機関等)との連携記録
「記録は現場の邪魔ではない。記録が現場を守る。」──この発想の転換が、記録整備への取り組み方を変えます。記録は「義務だから残す」ではなく、「自分たちの支援の質を証明し、事業所を守るために残す」という位置づけで取り組んでください。
📌 行政書士コラム:記録管理は「経営の基盤」─年1回の棚卸しを習慣に
企業の法務部では「文書管理規程」に基づいて、書類の保存年限・廃棄手順・電子化方針が一元管理されています。障害児福祉の事業所でも、同じ発想が必要です。
年1回(報酬改定の時期に合わせて4月等)に「書類棚卸し」を行い、保存期限が切れた書類の整理・新しい書式への更新・電子化の進捗確認を行うことをお勧めします。これは運営規程の棚卸しと同じタイミングで行うと効率的です。 「記録管理が整っている事業所」は、保護者からの信頼・運営指導への安心・スタッフの安心という3つの価値を同時に実現します。記録管理は「事務の話」ではなく「経営の基盤」です。
次回:日本版DBS─障害児福祉事業所と義務対象・制度の基本
次回はSTEP3の後半として、令和8年12月完全施行のこども性暴力防止法(日本版DBS)について、障害児福祉事業所の義務対象範囲・実務対応の基本を解説します。
