グループホームの物件要件|建築基準法の壁と資金の考え方|4-LeafClover

はじめに― 住宅地要件と、「寄宿舎」の壁

グループホームを始めようとするとき、「アパートを一棟借りれば、あるいは空き家があれば始められる」と考える方がいるでしょう。
けれど、実際はそう簡単ではありません。グループホームは、建築基準法や消防法という、「障害者の住まい」ならではの壁があります。そしてグループホームは、ほかの通所サービスと違って、物件そのものが事業の土台になります。だからこそ、物件と資金を切り離して考えることができません。このページでは、物件の要件と、その先にある資金の考え方までをお伝えします。

建築基準法の「寄宿舎」という壁

まず知っておいていただきたいのが、建築基準法上の扱いです。障害者グループホームは、原則として「寄宿舎」(または共同住宅)に位置づけられます。そして、寄宿舎の要件は、一般の住宅とは異なり、厳しいです。採光や換気、防火などの基準が、住宅とは別に定められています。

【参考】神戸市:障がい者向けグループホームの主な設置基準

つまり、「今は普通の住宅だけれど、そのままグループホームに使えるだろう」と一般住宅として建てられた建物であっても、寄宿舎の基準に適合させるための改修が必要となる可能性が生じます。

用途変更「200㎡」の、よくある誤解

建築基準法の話でよく出てくるのが、用途変更の200㎡ルールです。既存の建物をグループホームにする場合、用途を変更する部分の床面積が200㎡を超えると、建築確認申請が必要になります。200㎡以下なら、この申請は不要です。

【参考】東京都:用途変更の手続における建築基準法改正について

ここで誤解が生まれやすいのですが、「200㎡以下だから申請不要=何もしなくてよい」ではありません。申請が要らないだけで、建築基準法の各条項(採光・換気・防火など)に適合させる義務は、変わらず残ります。グループホームは戸建てや小規模な物件を活用することもあり、その場合はむしろ200㎡以下に収まるケースもあるでしょう。だからこそ、「申請が不要だから大丈夫」と安直に考えてしまうと、法適合の確認が抜け落ちます。指定をとる為の設備基準を建築士などの専門家に問い合わせ、理解することが第一のステップになります。

数字と扱いは、必ず確認を

用途変更の面積基準、寄宿舎の採光・換気の数値、戸建て扱いの緩和の有無、建物の状況や要件は自治体によって判断が異なるケースもあるようです。ここに書いた内容は一般的な目安です。実際の物件については、指定をとる地域の都道府県の障害福祉の基準と特定の条例がないかについて、専門家に確認してください。

消防の壁 ― スプリンクラーほか

消防法の観点も欠かせません。
障害者グループホームは、消防法施行令上の区分で「6項」に該当する防火対象物とされ、自動火災報知設備、消防機関へ通報する設備、スプリンクラー設備などが求められます。

どのような設備が必要かは、建物の構造・階数・利用者の状態などによって変わります。消防の判断は、所管の消防署に個別に確認するのが確実です。物件を本格的に検討する段階で、早めに問い合わせておくと、後から慌てずに済みます。

受け入れる対象像で、必要な設備は変わる

物件に何が必要かは、どんな方を受け入れるかによっても変わります。重度の障害のある方を想定するのか、比較的自立度の高い方を想定するのかで、求められる設備もケアの体制も違ってきます。

なお、障害福祉サービスは、精神障害のある方のみ受け入れ、身体障害のある方は受け入れないといった受け入れる方を事業者の都合で限定することが基本的にできません。そのため、車いすを使う方や身体に障害のある方の利用も想定した設計が必要になる場面があります。この点は、他の障害福祉サービスでも共通する考え方です。グループホームでは、そこに「住まいとして日々を過ごす」という条件が加わる分、設備を考える視点がより多面的で高度な考察が必要になってくるでしょう。

物件の型は、サービスの骨格から決まる

グループホームの物件には、各室が独立したアパートに近い型もあれば、居間や台所を共有するシェアハウスに近い型もあります。ここで大事なのは、「どんな支援を提供したいのか」、提供するサービスの骨格から、間取りが決まってくる。ということです。住まう人どうしの交流を大切にする支援なら、共有スペースを広くとる。一人暮らしに向けて独立性を育む支援なら、各室の独立性を高める。利用する方の状態や志向・ニーズと、そして事業所として何を提供したいのかによって、選択する間取りの要件が変化することが考えられます。
物件を探すより先に、自分たちが障害者に対してどんな暮らしをおくってほしいのかを描くこと、それが、結果として物件選びの軸になります。

なお、利用者を多くするならば、二階建てなどの多層階の構造が選ぶ可能性も出てきます。そうなると階段や動線をどう設計するかも、受け入れる方の状態とあわせて考えることになります。

グループホームは「不動産ありき」の事業 ― だからこそ資金に強くなる必要性

ここまで見てきたとおり、グループホームは物件が事業の土台です。極論をいうと、他の障害福祉サービスと比較し、不動産ありきで成り立つ障害福祉サービスです。一棟を借りる、あるいは購入するケースも多く、そうなると、通所サービスとは動くお金の桁が変わってきます。いずれにしても、他の障害福祉サービスより不動産という固定費が多い事業のため、借入の額も大きくなることも考えられます。

だからこそ、経営者にまず求められるのは、資金に強くなることです。ここで注意したいのは、住まう方を、事業の資金繰りのために抱え込むような発想です。空室を埋めたいからと、支援の必要性より事業の都合を優先して入居を進ればいいと考える方もいるかもしれません。ただ、それは、障害福祉サービスの根幹である法律が目指すものと相容れません。

では、どうすればいいのか。闇雲に始めず、まずは自分でビジネスが成り立つのか計画をしてみることです。どれだけの資金が要り、どんな計画で回していくのか。どの程度の金額で物件を借り(または購入し)、資金繰りを基準に考え、どこまでの金利であればローンも返せるのかといった、事業計画と市場調査を、始める前に一度立ててみることが必要です。ただ、これらを一人で抱え込む必要はなく、創業支援サービスによる知識の面からもサポートも探してみましょう。
東京都であれば、Startup Hub Tokyoや商工会議所、日本政策金融公庫や、地元自治体など、創業サポートを行っている団体があります。始めてすぐ現金が尽きて立ち行かなくなっては、意味がないので、使えるサービスは積極的に活用し、事業を実施するのかの検討を慎重かつ丁寧に行いましょう。

高齢者グループホームから、学べること・学べないこと

グループホームは、高齢者福祉の分野にもあります。
物件の調達や改修、資金計画といった「箱」と「お金」のつくり方については、高齢者グループホームの蓄積から学べることもあるでしょう。広くメソッドとして情報入手したい場合は、障害福祉だけに限定せず、高齢者福祉における事例も検索してみましょう。

ただし、活用できない情報もあります。根拠となる法律、報酬の仕組み、人員の基準、そして対象となる方のイメージ像など、高齢者での実例をそのまま障害者に転嫁させることはできないケースもあります。
そのため、箱とお金の知恵は借りつつ、支援と制度は障害福祉に限定して、自分たちの計画を組み立てるという線引きを持っておくと、外部の知見を上手に取り入れられるでしょう。

東京都府中市・4-LeafClover行政書士事務所の見解

グループホームは、物件が事業の土台になるぶん、経営者には資金の力が求められます。ただ、それは経営を守るためだけの話ではありません。資金の見通しが甘いまま始めてしまうと、空室を埋めることばかりに気を取られ、いつしか「支援が必要な人を受け入れる」のではなく「事業のために部屋を埋める」ようになりかねません。
住まう障がい者の方を資金繰りのために抱え込む——それは、見方によっては障害者の精神的虐待や身体的拘束と捉えられるかもしれません。
資金に強くあることは、めぐりめぐって、住まう障がい者の方々の暮らしを守ることに繋がります。だからこそ、始める前にしっかり事業の根幹や計画を考えてほしいです。


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