自立訓練(生活訓練)の物件要件|設備基準と見落とす壁|4-LeafClover

はじめに

自立訓練(生活訓練)の開設で、多くの方が最初にぶつかるのが物件です。
指定基準を満たす物件が見つからなければ、事業は前に進みません。このページでは、生活訓練(通所型)の物件・設備の要件と、表向きの設備基準だけを見ていると見落としてしまう“外側の壁”について、実務の視点でお伝えします。数字は東京都の運用を例にしますが、後で述べるとおり、最終的には開設する地域の指定権者の基準を確認することが欠かせません。

設備基準の“正体” ― 「支障がない広さ」とは何㎡か

生活訓練の事業所には、次の設備が必要です。

  • 訓練・作業室 訓練に支障がない広さ+必要な機械器具等
  • 相談室 室内の談話が漏れないよう、天井までの壁を設ける
  • 洗面所・便所 利用者の特性に応じたもの
  • 多目的室その他運営に必要な設備 サービス提供・食事・談話の場等

ここで多くの方が悩むのが、訓練・作業室は結局“何㎡”必要なのかという点です。実は、国の法令(省令)には、「訓練又は作業に支障がない広さ」とだけ書かれていて、具体的な数値は明文化されていません。では何を基準に判断されるのか——それは、指定を行う各自治体(指定権者)の運用によります。

たとえば東京都では、有効面積で「定員数×3㎡」以上という目安が示されています。生活訓練の定員は原則20名以上ですから、訓練・作業室だけで最低60㎡(20名×3㎡)。そこに相談室・洗面所・便所・多目的室などが加わります。地域によっては1人あたり3.3㎡を求めるところもあり、数字は一律ではありません。

面積の数字は「指定権者次第」― 必ず開設地で確認を

国の法令に具体的な面積の数値はありません(「支障がない広さ」とのみ規定)。東京都は定員数×3㎡で運用していますが、これはあくまで東京都の基準です。他の道府県で開設する場合は、必ずその指定権者の基準を確認してください。設備基準は、最終的に地域ごとに定まります。

必要な部屋と、現実的な物件の探し方

この面積・部屋数を満たす物件を、内装済みの状態でそのまま見つけるのは、なかなか難しいのが実際です。既存の間取りが基準に合うことは少なく、スケルトン(内装のない状態)の物件を見つけて、そこから間取りを作っていく—この前提で探すほうが、物件の要件は広さのみに焦点が絞られるため、結果的に条件に合う物件にたどり着きやすくなると私は考えます。

ただし、その分、内装工事費用がかかるデメリットもあります。費用と物件の要件のバランスによって探し方も最終的に変わるでしょう。

なお、訓練・作業室は「支障がない広さ」であればよく、必ずしも一つの大きな部屋である必要はありません。ただし、訓練に使う器具・備品を置くスペースも含めての“支障がない広さ”です。仕切りを設けること自体は可能ですが、狭い部屋を数多く並べて合計面積だけを稼ぐような造りは、認められません。訓練プログラムが実際に成り立つ空間になっているか、という観点で見られます。

設備基準の“外側”にある壁 ― バリアフリー条例と消防

ここが、この記事で最もお伝えしたいところです。設備基準の表を満たしていても、その外側に、物件契約を左右する二つの壁があります。バリアフリー条例と、消防です。

実際に、家賃などの条件はクリアしていたのに、バリアフリー条例を満たせず、その物件では契約に至らなかった、というケースもあります。生活訓練は知的・精神障害の方の利用が多いサービスですが、身体障害のある方の利用も想定されます。そうなると、トイレの構造、避難具の設置、玄関のドア幅など、バリアフリーに関する制約が一気に増えます。これらは、設備基準の一覧表には詳細に書かれていない論点です。

消防についても同様です。避難路の確保や非常警報設備など、消防法の観点は、公開されている設備基準の“外”にあります。建物の階数や構造によっては、想定していなかった対応を求められることもあります。表向きの設備基準を満たす=物件OK、ではない—ここを知っておくだけで、物件選びの精度が大きく変わります。

【注意】今回記載した論点は東京都をもとに解説をしておりますので、設備基準同様に、バリアフリー条例など地方独自の条例にも目を向けた対応をしてください。

図面段階で、専門家の目を入れる

バリアフリー条例や消防の観点は、建築士でなければ気づきにくいものです。物件を本格的に検討する段階で、経験のある建築士に図面を見てもらうと、「この物件は条例をクリアできない」「ここを直せば通る」という判断を、契約前に得られます。契約してから気づくと、取り返しがつきません。

相談室・多目的室の兼用について

なお、相談室と多目的室は、利用者の支援に支障がない場合は兼用できるとされています。ただし、兼用が認められるかどうかは、事業所の規模や利用状況に照らして判断される部分があり、指定権者の確認が必要です。図面を作る段階で、兼用の可否を早めに相談しておくと安心です。

生活訓練ならではの視点 ― 「利用者が通えるか」

最後に、面積や設備の話とは別に、生活訓練だからこそ外せない視点をお伝えします。それは、利用者が実際に通える場所かどうか、です。

生活訓練は、地域生活に向けて生活能力を高めていくサービスです。その利用者が事業所まで通えなければ、そもそもサービスが成り立ちません。立地を、基準の面積だけでなく「通いやすさ」で見る——これが生活訓練の物件選びの勘どころです。駅からの距離、利用者の生活圏との関係を、面積要件と同じくらい重視してください。

そして、通いやすさに課題がある場合、送迎という代替手段があるかどうかが、融通を利かせる鍵になります。物件の立地に一長一短があっても、送迎で補える見通しが立つなら、選択肢は広がります。面積の基準を満たすことと、利用者が通い続けられること。その両方がそろって、はじめて“事業が成り立つ物件”になります。

東京都府中市・4-LeafClover行政書士事務所の見解

物件については、自己判断で進めないこと。これに尽きます。
設備基準の表を満たしているように見えても、バリアフリー条例や消防の観点は、図面を読める専門家でなければ気づけないことが多いからです。だからこそ、早い段階で信頼できる建築士を確保しておくことをおすすめします。とくに、高齢者介護や障害福祉の物件を手がけた経験のある方であれば、鬼に金棒です。物件はご縁ですが、そのご縁を活かせるかどうかは、事前にどれだけ良い専門家とつながっているかで決まります。

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