DBS確認申請手続きの全フロー:事務負担を軽減するオペレーション設計とポイント

はじめに:複雑な行政手続きを効率化する実務的工夫

日本版DBS法に基づく特定性犯罪歴の確認手続きは、子どもの安全確保という公益性の高い目的のために、行政(国)が複数の機関を経て情報を確認するという厳格なフローを辿ります。
このため、事業者側は、従来の採用・人事手続きにはなかった、複雑な行政手続きをオペレーションに組み込む必要があります。
特に、確認期間が長期化しやすいこと、そして従業員から得る情報(戸籍情報提供用識別符号)の取り扱いが極めて機微であることから、事務担当者の負担は計り知れません。
本記事では、こども家庭庁の最新の情報を基に、DBS確認手続きの全体像を把握し、手続きを適切に進めるためのオペレーション設計のポイントを行政書士の視点から解説します。

DBS確認申請手続きの全体フロー(5つのステップ)

DBSの確認手続きは、大きく「情報提供主体(従事者本人)の準備」と「事業者による申請・結果受領」の二つのフェーズに分かれ、以下のステップで進行します。(参照資料よりフローを再構成)

基本的な手続きの流れ ※日本国籍を有する方の場合

犯罪事実確認書を取得する手順

(注意)特定性犯罪の犯罪歴がある場合は、ステップ5の交付前に、従事者本人に確認・訂正などの猶予期間として2週間与えられ、その手続きが終了してから、犯罪事実確認書が交付される

事務負担を最小限にするオペレーション設計の3原則

この複雑な手続きにおいて、事務担当者の負担を軽減し、手続きの遅延を防ぐためには、特に以下の3点に注力したオペレーション設計が必要です。

原則1:従事者本人への情報取得のサポート徹底

最も時間がかかり、事業者の進捗管理が難しいのが、ステップ1の「識別符号の取得」です。これは従事者本人のアクションに依存しますが、事業者は放置してはなりません。

  • 本人への継続的なリマインド
    戸籍の識別符号の取得申請が必要なことを本人に伝え、期限とプロセスを明記した案内書を交付し、提出期限が近づいたら自動的にリマインドする仕組み(例:人事システム連携)を構築することで、手続きを円滑に進めることができます。
  • FAQの整備と窓口の設置
    「識別符号の取得方法がわからない」という問い合わせが集中することが想定されます。自治体窓口への問い合わせ方法や想定される質問をまとめたFAQを整備し、人事担当部署の負担を減らすことをお勧めします。

原則2:内部情報の「一点突破」と正確性確保

ステップ3の確認申請において、最も時間を浪費するのは「書類の不備」や「情報入力ミス」による差し戻しであることが見込まれます。

  • 申請情報の正確性やチェックする仕組みの確立
    申請を始める前に、氏名、生年月日、住所など、申請に必要な本人特定情報の整理が不可欠です。情報が紙や電子フォームなど様々な形態で散在している可能性があるため、事前に、情報の所在確認と内容の形式チェック(データの正確さ、形式の統一確認など)を行い、正確な個人情報を一元管理する仕組みを導入しましょう。
  • 識別符号の正確かつ厳重に収集
    識別符号は機微情報のため、提出方法を限定(例:パスワード付きPDFファイル等)し、担当者が目視で正確性を確認し、システムに登録する必要があります。また、識別符号は他の手続きで利用される可能性もあるため、厳重に管理する手順を定めましょう。情報の正確性と適切な情報管理が、手続きの混乱解消に繋がります。

原則3:確認記録の厳重かつ期限付きの管理体制

ステップ5で受領する「犯罪事実確認書」は、特定性犯罪歴を含む可能性がある要配慮個人情報です。

  • アクセス権限の厳格化
    確認書や関連記録(同意書、識別符号など)は、DBS確認業務に携わる最小限の担当者のみがアクセスできる仕組みを構築しましょう。管理形態にかかわらず(電子的データ、紙)、不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、アクセス制限、専用端末の設置、入退室管理、施錠キャビネットの活用、閲覧履歴の記録などを徹底する必要があります。
  • 記録の廃棄基準の明確化
    DBS法では、確認記録の管理期間が定められる見込みです。例えば「確認後5年間」「退職後30日」など情報の管理期間が定められています。期間終了時に確実に、かつ完全に物理的に破棄(シュレッダー)または電子的に削除するための手順をあらかじめ定めておく必要があります。

まとめ:DBSオペレーションの信頼性を高める

DBS確認手続きは、単なる行政手続きではなく、事業者の法令遵守と、子ども、そして従業員に対する信頼性を証明するものです。

手続きが滞りなく進むかどうかは、ひとえに「オペレーション設計の精度」にかかっています。特に、従業員との間で「識別符号の提出」や「情報管理」に関するトラブルが生じると、事業の信頼が大きく損なわれかねません。

行政書士は、貴社がこの複雑なフローを円滑に進められるよう、識別符号取得の案内文書の作成、申請情報の正確性を高める電子フォームの導入支援、そして確認記録の厳重な管理・廃棄マニュアルの整備といった実務的な側面から、オペレーションの信頼性向上をサポートします。

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