日本版DBS「派遣・単発・ボランティア」の確認義務と境界線を徹底解説(東京都府中市)

はじめに

日本版DBS(こども対象性暴力防止法)の運用において、現場が最も判断に迷うのが「誰に対して確認が必要か」という対象者の範囲です。

特に注意が必要なのが、自社で直接雇用していない「派遣スタッフ」や「業務委託先の講師」、そして「短期ボランティア」の扱いです。「雇用契約がないから確認不要」という解釈は、法律上明確に否定されています。

今回は、契約形態を問わず発生する「確認義務」の境界線と、例外措置の正しい判断基準を解説します。

雇用形態は関係ない。基準は単純「子どもと接する業務をしているか」が第一基準

日本版DBSの確認義務は、原則として「認定を受けた事業者」が負います。
スタッフが派遣社員であっても、個人事業主(業務委託)であっても、あるいは無償のボランティアであっても、貴校・貴施設が用意した場所で、貴校のプログラムに沿って子どもに接する以上、そのスタッフは「教育保育等従事者」に含まれます。

「派遣元が確認しているはず」「外部委託先が責任を持つべきだ」と他社任せにせず、認定事業者自身が主体的に確認フローを管理しなければなりません。

DBS確認が必要なケースとは:対象者の定義

DBSの「認定」を受けた場合、以下の要件を満たすスタッフは、契約形態(直接雇用・派遣・委託)や期間にかかわらず犯罪事実確認の対象となります。

 「継続性」の判断:6ヶ月以上のプログラムの一部か

法律では、性犯罪の再犯性の高さから、事業の「継続性」を一つの目安としています。ここで言う「標準的な修業期間(スキル取得に必要な期間)が6ヶ月以上」とは、スタッフの勤務や雇用期間ではなく、事業そのものの設計(提供するサービスの標準的な期間)を指します。
例えば、3ヶ月に1回開催される単発キャンプであっても、それが年間シリーズの一部であり、同一の子どもがリピート参加できる設計であれば、そこに従事するスタッフ(単発の委託講師等も含む)には確認義務が生じます。

対象外となる例

完全に独立した、1回限りの単発ワークショップ(次回開催の予定もリピート想定もないもの)などは、継続性がないと判断されます。

「支配性・閉鎖性」の判断:事業者が場所を用意しているか

事業者がオフィス、公民館、山、海などの場所を指定し、対面で指導を行う場合、そこには「性暴力が露見しづらい環境」が生まれやすいとみなされ、厳格な確認が求められます。

DBSの確認対象者をまとめると

次の4つの条件をすべて満たす場合は、期間の長短にかかわらず犯罪事実確認を「すべき」と判断し、対処する必要があります。

  1. 対面指導: 子どもと対面で指導をする業務であること
  2. 支配性: 子どもを教えることによる支配的関係が構築される
  3. 継続性: 子どもと一定期間(6ヶ月)の間、繰り返し会うことが想定されている
  4. 閉鎖性: 個室など他者の目が届かない瞬間がある、または親の目が届かない場所で指導がなされる

【重要】スポットワーク(単発従事者)の扱い

1日のみの単発スタッフやボランティアであっても、業務内容として継続的に教育やスキルを提供する限り、スタッフの従事期間による例外は設けられないと明記されています。いわゆるスポットワークであっても、上記の要件を満たせば確認対象となることに注意が必要です。

派遣・業務委託・実習生の扱い:確認の「最終責任」はどこにあるか

ここが実務担当者が最も勘違いしやすいポイントです。

派遣・業務委託の場合

派遣会社から送られてくるスタッフや、業務委託の講師であっても、犯罪事実確認の義務を負うのは「認定事業者(受け入れ側)」です。 一般的に、派遣先や業務委託の場合、住所や社会保険などの個人情報を管理しないなどの慣行がありますが、DBSに関しては「自社の従業員ではないから」という理由で手続きを怠る言い訳が通用しません。

実務のコツ

派遣元・委託先との契約書に「DBS確認への協力」を明文化し、本人からの同意書や必要書類をスムーズに回収できる体制をあらかじめ調整しておく必要があります。

ボランティアの場合

ボランティアであっても、DBSの確認対象となります。子どもと接する業務であり、前述の「支配性・継続性・閉鎖性」の要件を満たせば、雇用慣行に関わらず確認が必要であると認識を改める必要があります。

リスクヘッジとしての代替措置:確認対象外とする場合の「防衛策」はあるのか

DBS確認を「行わない」と判断した場合としても、子どもと接する業務を継続して従事させてしまうと犯罪事実確認の義務を講じなかったとして認定取り消しのリスクが高まります。よって、原則として「確認の代替」となるような抜け道はなく、子どもと接する業務の方は全員確認をすることを念頭に置く必要があります。

つまり、確認がとれない間は、子どもと接する業務から外す、確認が取れるまで事業所では犯罪が起きるかもしれないという前提のもと、子どもの安全配慮義務に基づき、より厳格なリスク管理体制を講じる必要があります。
では、どんな対策を講じればいいのでしょうか。

「特定性犯罪事実がないこと」の誓約書

第一選択はあくまで「犯罪事実確認を行うこと」です。確認が取れるまでは子どもと接しない業務に就かせることが基本路線となります。
それまでの予防策は、DBS照会とは別に、本人から「過去に性犯罪歴がないこと」を表明させる誓約書の提出が効果的です。これは心理的な抑止力(プレッシャー)となり、不適切な意図を持つ人を遠ざける仕掛けとなります。
ただし、過度なプレッシャーはハラスメントと受け取られるリスクもあるため、「子どもの安全を守るための共通ルールである」という慎重かつ丁寧な説明も欠かせません。

名札による可視化(スタッフ間の視認による相互抑止)

保護者や職員同士の「監視の目」による抑止力を高めるため、名札の色分けなども有効でしょう。

具体例

DBS確認済みスタッフは「青ストラップ」、未確認(配慮が必要なスタッフ)は「黄ストラップ」。 「黄色い名札の人は常に青い名札の人の監視の下で動く」という体制を可視化することは、現場の規律を高め、誠実な運営姿勢として保護者からも評価されるでしょう。

結び:形式的な「契約形態」ではなく、事業の「実態」で判断する

日本版DBSの運用において、最も避けるべきは「派遣だから」「単発だから」といった形式的な理由での確認漏れです。 ガイドラインが求めているのは、「その事業の場において、子どもと大人の間に、悪用されうる関係性や閉鎖性が生まれないか」という実質的な安全管理です。「外部スタッフであっても確認責任は自社にある」という強い自覚を持ち、例外の人には物理的な監督(視認)を徹底する。このメリハリのある運用こそが、認定事業所としてのブランドと、子どもたちの安全を両立させる「最適解」となります。

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