【東京都府中市 行政書士解説】DBS法と不適切な指導・カスハラ対策:包括的安全管理体制の構築

はじめに

職員による「不適切な指導・行為」への対策と体制構築の大切さ

DBS法(こども性暴力防止法)の施行によって、特定性犯罪歴を持つ者の排除という点で、子どもの安全確保を目指した制度が確立しました。しかし、事業者にとって、受講生や保護者との間で頻繁に生じる課題は、職員による「不適切な指導・行為」への対策です。

特に、保護者が「不適切な指導」に対して抱く懸念や不信感は、その職員の職務遂行能力や倫理観全般に対する強い疑念へと繋がりかねません。こうした疑念は、職員の信頼を損なうだけでなく、事業者全体の安全管理体制そのものへの不信を引き起こし、DBS法遵守努力の価値までも損ない、SNSや口コミでの誹謗中傷リスクを高めます。

このような事態を防ぎ、適切な指導を継続するためには、指導の適正な線引きと、それに伴うカスタマーハラスメントリスクへの対応を統合した、包括的な安全管理体制の構築が不可欠です。

本記事では、職員の「不適切な指導・行為」の防止、そしてそれに伴うカスタマーハラスメントリスクへの対応を統合した、包括的な安全管理体制の構築ステップを解説します。

DBSで確認できない「不適切な行為」の定義と二重のリスク

DBS法がカバーできない「不適切な行為」は、主に職員による指導・言動が原因となるリスクと、それに起因する外部からのハラスメントリスクという二重構造を持ちます。

職員による「不適切な指導・行為」の明確化

子どもの安全確保を図るためには、まず、指導や教育の現場で起こり得るグレーゾーンの行為を明確に定義し、職員の行動規範を定める必要があります。

不適切な指導

  • 体罰の禁止: 懲戒権を超えた体罰や、指導目的の逸脱した不当な行為。
  • 暴言・人格否定: 指導の名を借りた威圧的な言動や、子どもの尊厳を傷つける発言。
  • 指導目的の逸脱: 職権を利用した私的な接触や、他の子どもに対する差別的な言動。

職員間のハラスメント

職員間でのセクハラ、パワハラは、職場の雰囲気を悪化させ、結果として子どもへの注意散漫や、指導の質の低下を招きます。

適切な指導へのクレームが招く二重のリスク

職員が適切な指導の範囲内であっても、保護者から過度に介入され、指導そのものへのクレーム(カスタマーハラスメント)に発展するケースがあります。具体的には、「性暴力や不適切な行為を子どもが受けた」と保護者が主張する場合です。
こんな時、事業者は以下の二重の義務に直面します。

子どもの安全確保義務(DBS法関連)

クレームの内容に「性的な言動」や「不適切な行為」の疑いがある場合、DBS法の精神に基づき、事実確認と調査を公平に行う義務。

職員の安全配慮義務(労働法関連)

 適切な指導を行った職員が、保護者の理不尽な要求や執拗な嫌がらせ(カスタマーハラスメント)によって心身の安全を脅かされた場合、職員を組織的に保護する義務。

事業者は、この両義務を同時に満たすため、「指導の適否」と「クレームの適否」を判断できる体制が必要です。犯罪防止措置は重要ですが、職員の行動が本当に性暴力や不適切な行為に該当するかを客観的かつ冷静に見極める必要があります。

相談窓口の統合:DBS報告窓口とハラスメント対応窓口の一本化と運用の注意点

DBS法上の早期把握のための相談窓口を、職員による不適切な行為(内部リスク)と保護者からのハラスメント(外部リスク)を統合した「包括的相談報告窓口」として一本化することが推奨されます。窓口が複数あると、対応が分散し、事業所としての行動に矛盾が生じるおそれがあるため、管理者の負担は増大しますが、可能な限り、窓口は一本化することが賢明です。

統合窓口のトリアージと公平な調査の徹底

統合窓口の最大の役割は、寄せられた情報が「何に関するリスクか」を瞬時に分類するトリアージ(初期分類)です。

性暴力/不適切行為の疑い(内部リスク)

DBS法に基づく児童対象性暴力対処規程で定めたフローに従い、公平かつ客観的な調査を開始します。この際、保護者の感情的な主張に流されず、真実の究明を最優先する姿勢を堅持します。子どもへのヒアリングは、性暴力の有無にかかわらず、記憶の汚染といった懸念があるため、臨床心理士や弁護士など専門家を交えて適切な対処を行いましょう。

カスタマーハラスメント(外部リスク)

職員への執拗な嫌がらせや理不尽な要求が確認された場合、組織として即座に職員を保護し、カスタマーハラスメント対応のフロー(要求拒否、管理者対応など)に切り替えます。

経営層に対する適切なエスカレーション

性暴力に関する事案にせよ、カスタマーハラスメントの事案にせよ、慎重に取り扱う必要があります。一人で判断をすると偏った視点に基づき判断してしまうおそれがあるため、相談できる専門家との連携も平時に構築しておきましょう。

職員保護と毅然とした対応

職員が「不適切な指導」を理由とした理不尽な要求や嫌がらせを受けている場合、事業者は職員の安全配慮義務に基づき、以下の点を実行することで毅然とした対応を示さなければなりません。

  • 組織的な対応への移行
    職員個人の対応を禁止し、管理者や窓口が一本化して対応します。
  • 法的根拠の明確化
    規程に基づき、要求が過度であることを明確に伝達し、要求を拒否する姿勢を明確にします。
  • DBS法に基づく調査の実施
    理不尽な要求であっても、不適切な行為の主張があった場合は、誠実かつ公平に調査を行ったことを組織の記録として残すことで、訴訟リスクにも備えます。

倫理規定の策定支援:DBS法の精神を反映させた職員行動規範の作り方

DBS法の精神を反映した職員行動規範は、指導の「境界線」を明確にし、職員が安心して適切な指導を行えるようにすると同時に、カスタマーハラスメントからの職員保護の根拠を確立する必要があります。

行動規範に盛り込むべき二つの柱

指導の適正化と不適切行為の禁止

  • 体罰、暴言、児童間ハラスメントの黙認など、具体的な禁止行為を列挙し、指導の範囲を明確化します。
  • トラブルを認知した際の初動での誤りを防ぐため、日ごろから指導の記録をできる限り残す業務フローを構築しましょう。指導記録が、不当な疑念を払拭し、カスタマーハラスメントから身を守る方策であることを職員にも説明し、トラブルについては特に詳細な報告をするよう啓発しましょう。
  • また、トラブルの報告を評価に悪影響を与えるものとせず、適切な報告を奨励する職場風土を醸成するようにしましょう

カスタマーハラスメントからの職員保護

  • 不当な要求やハラスメントへの対応ルールを明記し、職員が自己判断で対応せず、必ず組織に報告することを義務付けます。
  • 組織として、職員の心身の安全を確保することを倫理規定内で明言し、職員の安心感を担保します。

倫理規定は、DBS法上のリスクと、指導における現場のトラブルという実務上のリスクのギャップを埋める、実効性のある統制文書として機能させることが重要です。

体制構築のプロ:DBS法務と人事知見を活かした包括的マニュアルの策定支援

DBS法遵守、不適切な指導の防止、そしてカスタマーハラスメント対策は、行政法、労働法、個人情報保護法といった複数の法令知識を要求する複合的な課題です。

許認可維持といったコンプライアンス遵守に関する豊富な経験を持つ弊所では、これらの複雑な法務リスクを分析し、貴社の実態に即した規程の策定支援や外部相談窓口としての機能提供を通じて、DBS法上の重大なリスクと、不適切な指導・カスタマーハラスメントによる間接的リスクを回避し、認定維持の負担を最小限に抑えるための体制構築をサポートいたします。

複雑化する法務リスクと現場の運用課題を机上の空論で終わらせず、現場が実行できる包括的なマニュアルとして落とし込み、子どもの安全管理体制の実現を支援いたします。ぜひ、これらの複雑な体制構築のファシリテーションをご依頼ください。

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