【東京都 行政書士が解説】DBS法「立ち入り検査」と「指導」の行政リスク対策と初動フロー

認定事業者の宿命:常に要件維持をしなければならないという意識

DBS認定を取得した事業者は、子どもの安全確保に対する社会的責任を負うと同時に、認定のための要件維持の過程の中で、行政庁の存在を無視できないこととなります。

こども性暴力防止法(DBS法)は、事業者が義務を適切に履行しているかを確認するため、行政庁に報告徴収、立ち入り検査、指導、助言といった権限を与えています。これらの行政対応を誤ると、以前の記事で解説した認定取消しや罰則(記事名:【東京都府中市 行政書士】DBS法義務違反のリスク解説:認定取消しと罰則)といった重大リスクにつながります。

本稿では、認定事業者が知っておくべき行政庁の監督権限の範囲と、立ち入り検査が実施された際の具体的な初動対応フロー、そして不備を指摘された際の行政書士の役割について解説します。

行政庁の権限:こども家庭庁と自治体の役割分担

DBS法に基づく監督権限を持つのは、原則としてこども家庭庁長官です。しかし、実務上、他の法令との関連により、他の所管庁からの監督を受ける可能性があります。

権限の主体と実務上の対応先

事業者は、立ち入り検査の通知が、国(こども家庭庁)からであれ、委任を受けた地方自治体(都道府県や市の担当部署)からであれ、子ども家庭庁だけでなく、所管庁の監督を受けることを認識し、誠実に対応する義務があります。

理由としては、こども性暴力防止法に基づく定期報告などの報告やその他情報は、各省庁間で共有し、連携することとなっているからです。よって、こども家庭庁から行政指導を受けたけれどそれを無視していると他の行政庁から指導監督を受ける可能性があります。そのため、日ごろから、DBS以外の法律順守体制も併せた効率的かつ定期的なチェック体制を構築しておく必要があります。
すでに定期的な社内監査体制を構築している施設でDBSの認定取得をする際は、DBS法の順守だけを独立したチェック体制とせず、コンプライアンス遵守体制を漏れなくダブりのない体制として監査業務や体制を見直ししましょう。

監督権限であるこども家庭庁の監督範囲

こども家庭庁の監督は、以下の項目全般に及びます。

  • DBS確認の適正性
    従事者に対する犯罪事実確認が適時・適切に行われているか。
  • 情報管理体制
    確認記録(犯罪事実確認書を含む)のアクセス権者、保管方法、廃棄・消去手順が、情報管理規程通りに運用されているか。
  • 子どもの安全確保措置
    相談窓口の設置、研修の実施、児童対象性暴力等を防止するための具体的な措置が機能しているか。

立ち入り検査が実施されるケースと検査対象項目

立ち入り検査は、行政庁が事業者の事務所や施設に立ち入り、帳簿や書類を検査する行為です。

立ち入り検査が実施される主なサイン

検査は予告なく行われるケースは稀ですが、以下の状況下では実施される可能性が高まります。

  • 定期的な監督
    情報管理の定期報告をしていない場合や認定事業者が認定事項に変更があったのに報告しているかの確認などは、時期や地域はランダムであっても、こども家庭庁において定期的に制度遵守状況を確認する可能性があります。
  • 個別事案の発生
    児童対象性暴力対処規程通りに運用がなされていないなどの通報や相談が行政庁に寄せられた場合は、事案の対処が適切だったのかなど検査が実施される可能性があります。
  • 報告内容の疑義
    事業者が提出した定期報告書や、行政指導に対する是正措置報告書の内容に不審な点があった場合。
  • 情報管理の不備発覚
    犯罪事実確認記録等の漏洩や不適切な取り扱いが発覚した場合。

検査対象となる主要な文書・項目

行政庁が最も重点的にチェックする項目は、「記録の確実性」と「体制の実効性」を示す文書です。

検査当日の初動対応フロー:不利益な状況を作らないために

立ち入り検査は緊張を伴いますが、検査官に対する誠実かつ正確な対応が、その後の行政処分や指導の軽重を分けることになります。端的に言えば、できていない事は隠さずできていないことを認め、どのように改善していくのかをしっかりと整理・説明できるようにする事が基本姿勢(スタンス)となります。

初動対応の「3つの鉄則」

不利益な状況を作らないための注意点

最も危険なのは、「隠蔽」や「虚偽の報告」です。 これは、罰則(拘禁刑や罰金刑)の対象となる行為です。前述しましたが、不備があっても正直に開示し、「善処・改善の意思があること」を示すことが、行政指導を乗り切るための一番重要な鍵となります。

「記録の不備」を指摘された場合の行政対応と行政書士の役割

検査の結果、DBSの確認記録や情報管理体制に不備を指摘された場合、事業者は行政庁から指導、助言、勧告、または是正命令を受けることになります。

是正のための状況整理と今後の対策の重要性

行政指導や勧告を受けた場合、事業者は指摘事項を解消するための具体的な計画を盛り込んだ報告をすることとなります。そのため、以下のポイントを押さえて的確に報告できるようまとめましょう。事態の整理や今後の対策内容が不十分だと、より重い勧告や命令へと段階が進み、最終的に認定取消しにつながる可能性が高まります。目の前の事実と向き合うのは苦しい作業かもしれませんが、しっかりと事態と向き合いましょう。

  • どうしてこのような事態となったのか(Why)
    • ○○の手順が不十分だった
    • △△の確認が漏れていた
  • 再発防止としてどのような措置を講じるか(How、What to do)
    「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」に観点を置いて、具体的に防止策を定めましょう。
    • What to do(再発防止策)
      • チェックリストを導入する
      • ダブルチェック体制を設ける
    • How(実施方法)
      • チェックリストは来月から全案件に適用
      • ダブルチェックは担当者と管理者の二段階で行う

行政書士が果たす「認定維持」のための役割

この行政対応のフェーズこそ、許認可維持といったコンプライアンス遵守に関する豊富な経験を持つ行政書士の真価が発揮されます。

まとめ:行政監督を乗りこなし、認定事業所の地位を安定的に維持する

DBS法における立ち入り検査と行政指導が行われた場合、認定事業者は不当にそれを拒むと認定取り消しとなってしまうかもしれません。よって、指導や検査の通知を受けた場合は、避けて通れないプロセスとなります。

検査を恐れるのではなく、日頃から「記録の確実性」と「体制の実効性」を高め、いつ検査を受けても大丈夫な体制を構築しておくことが、何よりも重要です。

  • 備えは日々の管理にあり
    検査対象となる文書や業務は常に最新かつ法令遵守した状態で維持することが最大の防御です。
  • 指導・命令は放置しない
    不備を指摘された場合、迅速かつ行政庁の要求目的を理解し、求められた水準を満たした是正措置報告書を作成することが、認定取消しという最悪の事態を防ぎます。

立ち入り検査は、組織のコンプライアンス体制をチェックする良い機会でもあります。指摘を真摯に受け止め、許認可維持のプロである弊所の力を借りて迅速かつ適正に対応することが、認定事業所としての地位を安定的に維持する最善の策です。

立ち入り検査への備えや、行政指導後の是正措置報告書の作成についてご不明点があれば、ぜひ一度弊所にご相談ください。

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