【府中市 行政書士】派遣・ボランティアのDBS確認実務:契約・費用の盲点と対策
目次
はじめに:「業務内容」による確認義務の再確認
学習塾、スポーツクラブ、地域の文化活動など、子ども関連業務を行う認定事業者の現場では、正規の従業員以外にも、派遣社員や業務委託の講師、そしてボランティアや無報酬のスタッフなど、様々な形態の外部人材が子どもに接しています。
DBS法(子ども性暴力防止法)に基づく特定性犯罪歴の確認義務は、雇用契約の有無に左右されません。 確認義務の対象となるのは、その者が「子ども関連業務に従事する者」であるかどうか、すなわち業務の内容によって決まります。
※以前に自社で人材を契約する場合(正社員、パート、業務委託社員)について確認する場合は、こちらの記事をご覧ください。
認定事業者は、これらの「雇用関係にない人材」に対しても、正規の従業員と同様に特定性犯罪歴の確認を行う義務を負います。しかし、実務上、誰が、いつ、どのように確認を依頼し、その費用を誰が負担するのかという点で、手続きは複雑化し、対応が見落とされがちです。
本記事では、特に実務上のフローが見落とされがちな派遣社員とボランティア・無報酬従事者に焦点を当て、DBS確認を円滑かつ合法的に行うための契約上の注意点と具体的な確認実務について、行政書士の視点から解説します。
派遣契約特有の確認実務と法務連携
派遣社員を受け入れる認定事業者にとって、DBS確認の責任の所在が混乱しがちですが、法的な義務は明確です。
DBS確認義務の主体
DBS法に基づく特定性犯罪歴の確認義務は、原則として子ども関連業務を「行う事業者(認定事業者)」が負います。言い換えると、派遣先である認定事業者が確認義務を負います。
- 派遣元事業主の役割: 派遣元事業主(派遣会社)は、派遣労働者の雇用主ではありますが、DBS法上の認定事業者でなければ、特定性犯罪歴の確認自体を行うことはできません。
- 認定事業者の責任: 派遣社員が認定事業者の現場で子ども関連業務に従事する場合、確認を依頼する手続き上の責任は、最終的に認定事業者にあります。
派遣契約に盛り込むべき協力条項と派遣元・派遣社員との連携
労働者派遣契約書には、派遣先(認定事業者)が負う特定性犯罪歴の確認義務を履行するため、派遣元が派遣社員の確認手続きへの協力義務を負うことを明確に盛り込む必要があります。また、派遣元は、派遣社員との雇用契約または就業条件明示書において、派遣先でのDBS確認手続きに協力する義務を明記すると就業開始後のトラブルを減らすことができます。
- 確認手続きへの協力義務
派遣元事業主は、派遣労働者に対してDBS確認を受けるよう指示し、必要な手続きに協力させる義務を負うこと。 - 確認結果の通知
特定性犯罪歴が判明し、派遣社員が訂正の手続きを行っている場合は、その旨を速やかに認定事業者に通知すること。また、派遣社員が確認手続きに必要な協力を怠り、期限内に確認書が発行されない見込みとなった場合も、その事実を速やかに認定事業者に通知すること。 - 費用負担
特定性犯罪歴の有無の確認手続きには費用がかかります。具体的には、戸籍の識別符号の取得等における費用です。確認にかかる費用の負担方法を明確に定めましょう。
これらの課題の整理・連携がないまま、派遣社員が就業開始し、採用してから一定期間内に犯罪事実確認ができない場合、認定事業者が確認義務違反に問われるリスクが生じます。
ボランティア・無報酬従事者の確認フロー
ボランティア、インターン、保護者協力員など、金銭の授受がない無報酬の従事者は、雇用契約がないことからDBS確認が「漏れやすい」最たる例です。しかし、これらの人材も子どもに接する以上、確認義務の対象です。
確認手続きの実施と対象者の特定
確認義務の主体は認定事業者であり、手続きは正規の従業員と同様です。
- 対象者の特定
定期的に、子ども関連業務に携わるボランティアや無報酬従事者全員をリストアップし、対象者からDBS確認への協力同意を得る。 - 手続きの開始
認定事業者が行政庁にDBS確認の依頼手続きを開始する。 - 費用負担
無報酬であるボランティアに対し、手続きにかかる費用を自己負担させることは困難であり、通常は認定事業者が費用を負担すべきです。
協力拒否への対応と「採用ハラスメント」リスク
ボランティアは雇用契約がなく、無償労働のため、ボランティアが手続きの負担となるDBS確認への協力を任意で拒否する可能性があります。
協力を拒否された場合
認定事業者は、その者を子ども関連業務に従事させてはなりません。これは認定事業者の義務であり、拒否された場合は例外なく業務から外す必要があります。
「ボランティアハラスメント」リスク
協力を拒否したことを理由に、そのボランティアに対し他の業務への配置転換や不当な扱いを強いると、ボランティアハラスメントや差別と見なされるリスクがあります。拒否された場合は、穏便に、かつ業務内容を限定して、子どもに接しない業務(例:事務作業、物品整理)に切り替えるなど、丁寧な対応が求められます。
契約書・覚書に盛り込むべき協力義務
派遣社員だけでなく、ボランティアや業務委託契約の講師など、すべての雇用関係にない外部人材について、安全管理とコンプライアンスを担保するための契約文書の整備をし、トラブルのリスクを低下させるよう努めましょう。
ボランティア・無報酬従事者向け覚書の整備
ボランティア活動を開始する前に、「ボランティア活動に関する覚書」や「合意書」を作成し、DBS確認に関する以下の条項を含めます。
協力義務条項の例
- 本活動は子ども関連業務であるため、DBS法に基づく特定性犯罪歴の確認を活動開始前に行うことに同意する。
- 確認に協力しない場合、子ども関連業務には従事できないことに同意する。
- 事業者は確認によって知った情報を、子どもの安全確保の目的以外に利用しないこととする。
- ボランティア活動によって、知り得た他者の特定性犯罪歴について、自己または他人のために不正な目的で提供しないこととする。
この覚書は、法的な強制力とともに、子どもの安全確保に対する共通認識を持つための重要な手段となります。
業務委託契約における「除外事由」の明確化
業務委託契約(外部講師など)においては、受託者(講師)がDBS確認の手続きに協力することを義務付けるとともに、確認を拒否した場合や特定性犯罪歴が判明した場合は、契約を即時解除できる旨を明確な「解除事由」として盛り込む必要があります。
これは、契約上の義務違反を根拠とするものであり、子どもの安全確保を最優先する事業者の責務を果たすために不可欠です。
まとめ:雇用関係にない人材の安全管理における契約規定の重要性
DBS法において、派遣社員やボランティアのような雇用関係にない人材は、確認義務の対象でありながら、手続き上の盲点になりがちです。
真のコンプライアンス体制を構築するためには、以下の対応が不可欠です。
- 派遣契約: 派遣元との間で、DBS確認への協力義務と費用負担を明確に定める。
- ボランティア: 活動前に、DBS確認への同意と、拒否した場合の業務制限を明記した覚書を取り交わす。
- すべての人材: 確認義務を契約上の義務として明記し、協力拒否や特定性犯罪歴判明時の解除事由を明確化する。
行政書士は、これらの派遣契約書の確認条項の整備、ボランティア向け覚書や合意書の作成支援を通じて、貴社のコンプライアンスの穴を埋め、子どもの安全管理体制を法的に強固なものにすることをサポートいたします。
