日本版DBS認定の準備・申請フロー完全ガイドー規程整備・GビズID・戸籍取得の落とし穴まで行政書士が解説(東京都府中市)

はじめに:「何から手をつければいいか」がわからない

日本版DBSの相談を受けていると、最初に出てくる声はほぼ決まっています。

「ガイドラインが膨大すぎて、どこから手をつければいいのかわからない」


確かに、こども家庭庁が公表したガイドラインは分量が多く、全部読んだとしても「で、うちは具体的に何をすればいいの?」という問いへの答えがすぐに見つかるものではありません。

また、現在はオンデマンド動画での解説も出ており、規程類についてはテンプレートも用意されています。しかし、だからといって「テンプレートをそのまま流用すればいい」という考え方は危険です。防止措置規程は、自社の事業形態・子どもとの接し方・施設の構造などに即した内容にしなければ、運用できない規程になります。形だけ整えても意味がありません。

この記事では「認定前の準備」から「申請の全ステップ」、運用を見据えた実務の流れを整理します。

今から逆算すると、どこにいるべきか

義務対象施設(学校・保育所等)であれば、施行後3年以内に現職者全員の確認を完了すればよいため、ギリギリ間に合う可能性はあります。しかし「3ヶ月あれば余裕でできる」という発想は完全な誤りです。

義務事業所、認定事業所におけるこども性暴力防止法の施行までに必要な対応を参考にすると、準備期間をおおよそ1年程度みたスケジュールを見込んでいます。理由は、準備すべき事項が多岐にわたるからです。

事業者向けチェックリスト(こども性暴力防止法の施行までに必要な対応):認定対象事業所こども性暴力防止法の施行までの対応

規程の策定・就業規則の改定・従業員への説明・同意取得・申請書類の準備—これらを並行して進めると、最低でも半年はかかります。加えて、申請前提としてGビズIDの取得が必要ですが、これも取得まで数週間かかります。

今すぐ動かないと詰まるポイント
GビズID未取得の場合、申請システム自体にアクセスできません。「申請しようと思ったら入り口で詰まった」という事業者が出ることが想定されます。最優先で取得してください。

GビズIDとは何か—日本版DBSに限らない電子申請の入口

「GビズIDって何ですか?」という質問も多く受けます。

GビズIDとは、法人・個人事業主が各種行政手続きをオンラインで行うための共通のアカウントです。マイナンバーカードが個人の電子申請に使われるのと同様に、GビズIDは事業者の電子申請に使われます。

GビズIDのメリット

  • 日本版DBS認定申請システムへのアクセスが可能になる(これがないと申請できない)
  • 社会保険の手続き(e-Gov)・補助金申請(jGrants)・税務申告など、複数の行政手続きをこれ1つで対応できる
  • 行政手続きの電子化が進む中で、今後ますます必要になる「事業者の共通ID」
  • 一度取得すれば無料で継続利用可能

日本版DBS対応をきっかけに取得しておくことで、今後の行政手続き全体が効率化されます。行政書士として電子申請の普及を支援する立場からも「日本版DBSのためだけでなく、これを機に取得しておく」ことを強くお勧めします。

取得の手順(概要)
GビズID公式サイト(gbiz-id.go.jp)からIDを取得できます。
審査完了まで通常2〜3週間ほど時間を要します。法人の場合は登記情報との照合があるため余裕を持って申請をしてください。

参考:GビズIDで利用できる省庁・自治体のサービス

認定前の準備:3つの必須タスク

 事業の実態に即した規程の策定(テンプレ流用不可)

日本版DBS認定申請には、以下2つの規程の策定・提出が必須です。

  • 情報管理規程:犯罪事実確認記録の取扱い方針・組織的・人的・物理的・技術的な管理措置を定める
  • 児童対象性暴力等対処規程:防止措置・調査・被害者保護・支援の手順を定める

なぜテンプレート流用が危険なのか
インターネット上には規程のひな型が出回っています。しかし、防止措置規程や情報管理規程は「うちの施設では子どもとどう接するか」「性暴力が起きた場合に誰がどう動くか」「犯罪事実確認という極めて重要な個人情報をどのように管理するのか」という事業固有の実態を反映させなければなりません。他の事業所のテンプレをそのまま使った規程では、実際の運用と乖離が生じ、万が一問題が起きた際に「規程はあったが機能しなかった」という最悪のリスクを招きます。

規程は「提出書類としてあればよい」ではなく、「子どもの安全を守るためや従業員のプライバシーを守るために組織として実際に動けること」が目的です。事業の実態に即し、法的リスクを踏まえた規程の作成を、専門家に依頼することで確実に進められます。

就業規則の改定と法的整合性の確保

犯罪事実確認を求める法的根拠・不適格者への人事措置を、就業規則に明記します。

  • 犯罪事実確認への同意を雇用継続の条件とする旨
  • 特定性犯罪歴が判明した場合の配置転換・業務変更の根拠規定
  • 確認拒否・虚偽申告に対する懲戒処分の規定

懲戒規定の変更は労働法上の論点を含むため、弁護士または社会保険労務士への相談を経た上で改定することを強くお勧めします。行政書士として申請書類を整えるだけでなく、労務リスクも含めた全体設計を専門家チームで対応することが理想的です。

情報管理体制の構築

犯罪事実確認書は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当します。

  • 法定保管期限後の確実な廃棄手順と廃棄記録の保管
  • 閲覧権限を人事責任者など最小限の担当者に絞ったアクセス制御
  • 電子データはパスワード保護、紙は施錠キャビネットでの管理

申請の全ステップ(7ステップ)

GビズIDの取得と規程整備が完了し、犯罪事実確認の申請フローに入ります。手続きは従事者本人と事業者の両者が関与します。

日本版DBSの申請の7ステップ

申請を詰まらせる3つの落とし穴

落とし穴① 戸籍情報の取得

STEP1の識別符号取得で、転籍・結婚・離婚・養子縁組など戸籍の変動歴がある従業員は、生まれてから現在までの連続した戸籍が必要になります。「附票を取ればいい」と思っていた事業者が、手続きが複雑で詰まるケースが想定されます。

戸籍手続きの詳細は、ケースが多岐にわたるため別記事で解説予定です。従業員への案内文書を作成する際は、「本籍地の変更歴がある方は追加書類が必要になる場合があります」という旨を必ず伝えてください。

落とし穴② 情報入力ミスによる差し戻し

氏名・生年月日の誤り、旧姓・通称名との不一致など、些細なミスでシステムが止まります。事前に従業員の個人情報を一元管理し、申請前に照合する仕組みを作っておくことが効率化の鍵です。

落とし穴③ 犯罪歴がある場合の2週間猶予

特定性犯罪歴がある場合、交付前に本人への確認・訂正の猶予として2週間が設けられます。この期間は確認書が発行されないため、当該従業員を子ども関連業務に就かせてはなりません。採用スケジュールに余裕を持たせておく必要があります。

認定取得後の定期タスク

新規採用時の確認フロー

採用内定と同時に犯罪事実確認を開始し、確認完了前は子どもと接する業務に就かせません。採用計画に確認期間(数週間〜数ヶ月)を組み込んでおく必要があります。

5年ごとの再確認(更新)

全従事者について5年に1度、再確認が必要です。更新台帳を整備し、誰の確認がいつ期限を迎えるかを管理します。更新時にも従業員の同意取得が必要なため、事前に丁寧な説明を行うことが重要です。

定期研修の実施と記録

防止措置規程に基づく研修を定期的に実施し、受講者・日時・内容を記録します。行政監査の際に確認される重要書類です。

日本版DBS対応ロードマップ(アクションチェックリスト)

2026年12月施行を逆算した現時点(2026年5月)からのアクション一覧です。

「やっつけ申請」では子どもも事業者も守れない
書類を揃えて申請することは技術的には可能かもしれません。しかし、事業の実態と乖離した規程・形だけの研修・機能しない情報管理体制では、子どもの安全は守れません。そして万が一問題が起きた際には、「認定を持っていたのに対応が不十分だった」という事実が、むしろ事業者への批判を大きくします。規程と体制は、事業を守る矛でもあり盾でもある。時間をかけて丁寧に準備することが、結果として最大のリスクヘッジになります。

まとめ:準備の質が認定後の安全の質を決める

日本版DBS対応で最初にやるべきことは、GビズIDの取得と自社の事業形態の確認です。並行して規程の策定に着手する。これだけで「漠然としていた霧」がかなり晴れてきます。

「ガイドラインが膨大すぎてわからない」という声はよく理解できます。だからこそ、自分たちの事業に引き付けて「うちは何をすべきか」を一緒に整理する作業が、行政書士の最もやりがいのある仕事だと思っています。

形だけの認定を取るのではなく、子どもの安全を守る体制を本当に作るために。一緒に考えましょう。

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