こども性暴力防止法認定取得後の継続運用完全ガイド~5年更新・変更届・確認完了届・廃止届の実務【行政書士解説】

はじめに:認定はゴールではなく、スタートライン

日本版DBS制度の認定の相談で、情報管理について具体的に聞いてくる事業者は実はそれほど多くありません。初回申請の準備・規程の整備・就業規則の改定——これらに集中するあまり、「認定を取った後に何が続くのか」を深く考えていない事業者が多い印象があります。

もちろん、情報漏洩やそのおそれが実際に起きたとき、あるいは行政からの指導があったときは相談が来ます。しかしそれは「問題が起きてから」です。認定後の義務を先回りして整備している事業者は、残念ながら少ないです。

本記事では、認定後に続く5つの義務——5年ごとの再確認・退職後の廃棄・初回確認完了・変更の届出・廃止の届出——を整理し、「取ったら終わり」にならないための実務設計を解説します。

本記事では、DBS確認記録の更新手続きの法的義務と、更新を確実に実行し、実務的な負担を軽減するための具体的な管理上の注意点について、行政書士の視点から解説します。

認定後に続く「期間管理」の全体像

まず、認定後に発生する主な期間管理の義務を一覧で把握してください。いずれかを一日でも超えると、義務違反となります。行政指導や認定対象とならないだろうと油断をし、違法実態が明るみに出た場合は、法やルールを守らない企業というイメージがついてしまい、事業継続が難しくなります。まずは、「しなければならないこと」の期間管理の全体像を把握することが大事です。

「更新忘れ」が起きる本当の理由

5年という期間は、日常業務の中では忘れ去られやすい長さです。しかも、事務担当者が交代していれば、前任者がいつ確認したかさえ引き継がれていないケースがある。気づいたときには期限切れ——という事態が制度違反となります。認定取消にまで至らなくても、制度違反の記録が残ることのリスクは侮れません。

さらに、現時点では状況が明確とはなっていませんが、義務化対象施設が5年後に一斉に再確認を迎える2031年12月前後は、こども家庭庁への犯罪事実確認の照会が混雑してレスポンスが遅延するリスクも考えられます。理由は、12月から制度が始まるにあたって、義務事業所の既存従業員への照会を3年の時間をかけて行うからです。その行政側の混乱が事業所の手続きにも波及する可能性があります。
だからこそ、計画的に対応する準備を事業所側にて行う事が不可欠です。

5年ごとの再確認:「5年周期パニック」を防ぐ

期限の正確な計算

法律上の期限は「直近の確認日から5年を経過する日の属する年度の末日」です。

引用元:こども性暴力防止法施行ガイドライン 図表37 更新期間の原則

計算例
2027年10月1日に確認したスタッフの次回期限は、5年後の2032年10月1日が属する年度末(2033年3月31日)です。
余裕があるように見えますが、再確認の手続きには数週間〜数ヶ月かかるため、2032年秋ごろから再確認の事務に着手することをお勧めします。

「5年周期パニック」を防ぐ平準化の発想

制度開始時に現職者全員の確認を1年以内に完了した事業所では、5年後に全員分の再確認が一斉に到来します。たとえば20人のスタッフを抱える事業所で、20人分の手続きが集中すると事務担当者は相当な負荷を抱えることになります。

法律上、対象年度の4月から順次着手できるため、

  • 月ごとに数名ずつ計画的に実施する
  • 入社月・業務更新月など社内で納得感のある基準でスケジュールを分散する
  • 情報管理規程に「実施時期の考え方」を明記し、担当者が変わっても迷わない仕組みにする

こうした「前倒し分散」を設計しておくことで、年度末の駆け込み申請と行政の混雑に巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。

更新時の手続き:初回と変わらない点・注意が必要な点

更新手続きのフロー自体は初回と同じです。ただし以下の点に注意が必要です。

  • 戸籍情報の再取得
    更新時も従事者本人が戸籍情報を新たに取得する必要があります。「前回と同じものでいい」は通用しません。
  • 再同意の書面化
    再確認への協力同意を書面または電磁的記録として残す。5年ごとに積み重ねることで、万が一のトラブル時の証拠にもなります
  • 担当者の引き継ぎ確認
    更新時に事務担当者が変わっている場合は、台帳の内容・手続きの流れを新担当者に確実に引き継ぐ

再確認を従業員に説明するとき

5年ごとの再確認を「また調べられるの?」と不満を感じる従業員がいるのは自然なことです。再確認をするにあたっても、「前にやったから」と、さも当然という姿勢で従業員に対応をお願いするのではなく、丁寧な説明と協力を仰ぐ姿勢を念頭にご対応ください。

伝え方の例
「この確認は、あなたを疑うのではなく、子どもたちの安全を守り続けてきた事実を改めて記録に残すための手続きです。自分の潔白を示す盾でもあります。引き続きこの業務に誇りをもって仕事をするために、ぜひ協力してください。」

また、「公平性の強調(全員が法律に基づき定期的に行うプロセス)」と「プライバシーの再保証(5年前と同様の厳格な情報管理)」を伝えることで、従業員の安心感と協力を引き出すことができるでしょう。

確認記録台帳の整備

「更新忘れ」と「廃棄漏れ」を防ぐ唯一の手段は、台帳の仕組み化です。担当者が変わっても、誰が見ても状況がわかる台帳を整備してください。

台帳に記載すべき項目

Excelで実装する「自動アラート」の設定

専用システムがなくても、表計算ソフトで十分に管理できます。

  • 「前回確認日」列から5年後の年度末日を自動計算する関数を設定
  • 期限の6ヶ月前になるとセルが黄色、3ヶ月前で赤に変わる条件付き書式を設定
  • 「今年度対象者」「同意取得済み」「申請中」「完了」というステータス列を設け、進捗を可視化

新入社員の確認を行うタイミングで「次回再確認予定日」も台帳に記入しておくことが、最も漏れのない管理方法です。

認定後に続く3つの届出義務

認定後、事業者には3種類の届出義務があります。これらは「問題が起きたら届け出る」ではなく、変更が生じた時点で速やかに届け出る義務です。「認定申請が終わったから手続きは完了」と思っている事業者が多いですが、届出義務はその後も続きます。

① 変更の届出(法第24条)

認定申請時の記載事項に変更が生じた場合は、速やかに届け出なければなりません。特に履歴事項全部証明書に記載される項目—代表者・所在地・商号の変更は必須です。
以下は、変更届が必要な場面の一覧です。見落としやすさを★で表示しています。

「軽微な変更」の自己判断は禁物
安全確保措置や規程の内容を「少し変えた程度」と自己判断して届出を省略すると、後の実地確認で「届出懈怠」として問題になります。迷ったら行政機関に確認することを習慣にしてください。

➁犯罪事実確認完了の届出(法第26条)

在籍する全スタッフのDBS照会が完了した時点で、「犯罪事実確認完了の届出」を行政機関に届け出る義務があります。認定申請とは別個の独立した届出義務であり、「認定された=手続き完了」は誤りです。

この届出は、適切にDBS確認が行われていることを行政が把握するための唯一の手段でもあります。単なる義務としてではなく、「うちの事業所は確認を適切に行っている」という報告として積極的に活用する発想が大切です。

③ 廃止の届出(法第31条)

事業を廃止する場合、または認定対象事業を縮小・終了する場合も届出が必要です。廃止は「終わりの手続き」として後回しにされがちですが、届出が漏れると認定が形式上存続したまま実態がないという状態になり、法的なリスクが残ります。

  • 廃止届の提出期限:廃止の日から一定期間以内
  • 廃止後の記録保存:個人情報を含む確認記録の保存義務は廃止後も一定期間継続する
  • 事業承継の場合:承継先が新たに認定申請を行うかを確認。確認記録の引き継ぎ可否も整理が必要

法人の解散・合併・事業承継が絡む場合は、こども性暴力防止法関連の届出に加えて生業に関する法律をもとにした廃止・変更申請との連動も必要になるため、行政書士・顧問弁護士への早期相談を強くお勧めします。

認定後の手続きを「事前に整備する」という発想

3つの届出に共通するのは、「その場になって初めて考える」と必ず対応が遅れるということです。認定取得直後に以下を整備しておくことで、後の混乱を防げます。

  1. 変更届の発動条件チェックリストを作成し、代表者交代・移転・サービス変更時に担当者が確認するフローを構築する
  2. 確認完了届の提出フロー・台帳更新ルールを文書化し、採用のたびに誰が何をするかを手順書として整備する
  3. 廃止になった場合の手順・記録保存ルール・相談先をあらかじめ確認しておく

まとめ:実態と規程の乖離をなくすことが、本当の運用

DBS認定の継続運用で最も避けたいのは、「規程はあるが実態と乖離している」状態です。

最初の規程設定が現実の事業規模・人員体制に合っていなかったり、環境が変わった際に規程の見直しをしないままでいると、規程は形だけのものになります。それは子どもの安全を守る盾にもならず、行政指導の対象にもなりかねない。

私が継続運用のサポートで大切にしているのは、現実を踏まえて規程と実態の乖離を正直に見つけ、子どもの安全をより守れる社内制度に昇華させていくことです。

また、認定を取得した後に「規程通りに運用できない」と気づく事業者もいます。そのとき、「ならばDBSの認定を取らない」という選択をすることも一つの経営判断です。その場合も、なぜやらないのかを明確にし、認定以外の安全確保手段(リファレンスチェックなど)を整備するお手伝いができます。「認定を取る」か「取らない」かの判断も含めて、一緒に考えましょう。

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