【東京都府中市 行政書士解説】DBS法 M&A・事業承継時の同意取得とその他の手続き上の注意点
目次
はじめに
企業活動におけるM&A(合併・買収)や事業承継は、事業の拡大や存続の鍵となります。しかし、こども性暴力防止法(DBS法)に基づく「認定事業者」の地位を承継する場合、通常のM&A手続きに加え、事業承継に伴って「認定事業者」の地位を承継する場合、通常のM&A手続きに加え、認定事業者としての地位の変更手続き(届出または新規申請)が必要となり、行政手続きに細心の注意が求められます。
つまり、事業譲渡や株式譲渡といった会社法のスキームにかかわらず、犯罪事実確認という要配慮個人情報の取り扱いとしての個人情報保護法やDBS法という重層的な法的視点にて事業承継におけるプロセスを整理する必要があります。
行政手続きのミスは、最悪の場合、DBS認定を新会社にて引き継げないかもしれません。
本記事では、事業譲渡・M&AにおけるDBS法の手続きについて、行政書士の視点から特に重要な4つの注意点を解説します。
認定事業者の地位継承:M&Aスキームにおける認定に関する手続き
M&Aのスキームは、DBS認定事業者の地位が引き継がれるか、あるいは新規に申請が必要となるかを決定する重要な要因です。
株式譲渡(地位継承は原則可能)
株式譲渡では、事業を運営する法人格そのものは変わらず、法人の所有者(株主)のみが変わります。したがって、DBS認定事業者の地位は法人に帰属したまま継承されます。
ただし、認定事業者としての地位が維持されるのは、あくまで法人格が同一であるためです。M&Aに伴い、代表者や法人名、所在地が変更された場合は、会社法に基づく商業登記変更手続きを完了させることは当然のこと、その後遅滞なくDBS法に基づく「変更届出」を提出する必要があります。認定取得の際に、商業登記簿の提出が求められているため、変更手続においても根拠書類として必要になることが予想されます。そのため、これらを証明する書類(履歴事項全部証明書など)の準備を怠らず、遅滞なく変更手続きを行うことが必須となります。
【重要】商業登記証明書の添付の必要性
M&Aのスキームにおいても、行政手続きに先立ち、商業登記の変更手続き(会社法)が完了していることが前提となります。行政書士は、これらの法人手続きの証明書類(変更後の登記事項証明書など)がDBS関連の行政手続きに適切に添付され、事業承継の事実が行政機関に正確に伝わるよう、変更手続きに関する準備をしましょう。
DBS確認記録の法的引継ぎ手続き:承継先事業者への情報提供の適法性
M&Aにおいて最も複雑なのが、犯罪事実確認記録の取り扱いです。
記録の引継ぎと「いとま特例(指定期間)」の適用
承継先事業者がこども性暴力防止法に基づく認定を取得した場合、既存の従業員(従事者)に関する犯罪事実確認記録を承継元から引き継ぎ、継続的に安全管理措置を講じることが望まれます。
しかし、承継先事業者にとって、M&Aに伴って新たにDBS法の適用対象となる従事者(例:新たな法人で子供と接する業務に従事する場合)については、犯罪事実確認を新たに行う必要があります。
この際、こども性暴力防止法には、事業の急な開始等に対応するための「指定期間(いとま特例)」が設けられています。M&Aや事業承継によって従事者となった者について、当該業務開始日から起算して6か月以内に犯罪事実確認を完了させなければなりません。この指定期間内に確認を完了できなかった場合、その従事者は業務から外す必要があり、事業継続に大きな支障をきたします。
※いとま特例は、やむを得ない事情がある場合に限定適用されるルールです。つまり、採用前に犯罪事実確認を行うのが基本原則となります。
従事者への犯罪事実確認の実施
承継先事業者は、引き継いだ情報や新たに従事者となった者の情報に基づき、この6か月以内にDBS法に定められたフローに従い、犯罪事実確認を漏れなく、かつ速やかに実施する体制を構築しなければなりません。
個人情報保護法との二重の壁:承継時の同意取得の必要性と記録の適正な処理
DBS記録の取り扱いは、DBS法だけでなく個人情報保護法の厳格な規制を受けます。DBS法に基づく犯罪事実確認の記録は「要配慮個人情報」に該当し、その取り扱いは特に慎重でなければなりません。
要配慮個人情報の第三者提供と本人の同意
個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないと定めています。
- よって、特定性犯罪歴の調査に関する台帳やその他保存しているデータ等を買収により承継した会社は、記録を承継先へ提供することに関する書面または電磁的方法による同意を、記録の主体である従事者本人から取得しておくことが必須となります。
- また、記録のアクセス権限者や取扱責任者が変更されるため、同意取得の際に、情報管理規程に基づき、従事者に対して変更内容を通知し、承継後の記録取り扱いについて同意を得ておくことがトラブル回避の上で望ましいです。
記録の適正な処理
もし、万が一、認定を廃止する決断をした場合は、M&A後に廃止となった事業やDBS法により管理をしていた記録は、不正な利用を防ぐため、速やかに適切な方法で廃棄・消去する義務があります。これには、紙媒体のシュレッダー処理だけでなく、電子データの復元不可能な消去も含まれます。
承継時の行政手続きのミスが招く「認定の失効」リスクと行政書士の事前チェック
DBS法の認定手続きは、法人の適法性と継続性を問うものであり、M&Aによって必要な届出をしていない場合は、最悪の場合、行政指導等受ける可能性があります。
認定の失効リスク
認定の失効は、法で定められた子供への安全確保措置を講じることができない状態を意味し、認定の要件の前提が崩れることにつながります。特に、認定の失効リスクを低くするよう、合併時の事務手続きの中に、許認可における変更等の手続きをしっかり確認しておきましょう。手続きが不明な場合は、行政書士に確認することをお勧めします。
認定の廃止届と記録の処分
M&A後、承継元または承継先において、対象となる教育・保育等の事業を廃止する、またはDBSの認定を敢えて廃止する決断をした場合は、「認定の廃止届」を遅滞なく提出する必要があります。
廃止届の提出と同時に、廃止となった事業に関連するDBS確認記録は、不当な長期保有を防ぐため、承継元事業者または清算事業者が責任をもって速やかにかつ適切な方法で廃棄・消去しなければなりません。この情報処分がDBS法上の義務となります。また、単に情報を廃棄するだけにとどまらず、どのような方法で情報を廃棄・消去したのかも記録に残しておきましょう。
行政書士による事前チェックの重要性
行政書士は、買収や事業承継における許認可手続きのエキスパートです。そのため、税理士や司法書士だけでなく、M&Aの初期段階から行政書士にも許認可の承継ができるかどうか、また必要な手続きは何かを確認しましょう。そのうえで、商業登記手続きや財務的な手続きとともに、DBS関連の行政手続き(申請/届出/廃止届)のタイムラインを統合的に管理します。これにより、法的な義務の履行漏れを防ぎ、DBS認定の失効という事業継続上の重大なリスクを回避し、円滑な事業承継を行えるでしょう。もし、DBSや他の許認可に関して事業承継の手続きに不安を感じた方は、お気軽に弊所までお問い合わせください。
