日本版DBS規程の作り方、基本のキ|現場を巻き込む策定プロジェクトの進め方(東京都府中市)

はじめに:机上の空論で終わらせない!2つの規程策定プロジェクトの進め方

日本版DBS(こども対象性暴力防止法)の認定を目指す事業所にとって、最大の山場の一つが「規程の策定」です。認定申請時には、事業所内の運用ルールを明文化した書類を提出しなければなりませんが、これは単なる形式的な手続きではありません。

「規程」は、万が一の事態が起きた際に事業所を守る「盾」であり、日々の運営において子どもとスタッフを守る「コンパス」です。しかし、認定のためだけに雛形をコピー&ペーストした規程を作っても、現場の実態に合わなければ全く機能しません。

今回は、認定に不可欠な「2つの規程」の全体像と、現場を巻き込んでプロジェクトを成功させるための具体的な進め方を徹底解説します。

認定取得に不可欠な「2つの柱」:なぜ規程が2種類必要なのか?

日本版DBS制度において、事業者は以下の2つの規程を整備し、その運用を徹底することが義務付けられています。

「児童対象性暴力等対処規程」:現場で子どもの安全を守る

これは「現場の行動マニュアル」です。子どもに接する際、どのような行動が許され、どのような状況がリスクとなるのかを定義します。物理的な環境(死角の解消)や、スタッフの行動規範(身体接触の制限など)を定め、性暴力を組織的に未然に防ぐことを目的としています。

「情報管理規程」:スタッフの重要な個人情報の安全を守る

これは「事務・管理のマニュアル」です。DBS確認によって得られる「犯罪事実の有無」という情報は、極めて秘匿性の高い個人情報です。これを誰が閲覧し、どこに保管し、いつ破棄するのか。情報の漏洩を防ぎ、スタッフのプライバシーを保護するための厳格なルールを定めます。

これらは、いわば「現場の安全」と「情報の安全」という両輪です。どちらか一方が欠けても、認定事業所としての信頼は担保されません。

策定プロジェクトの成功を左右する「巻き込み」の技術

規程作りを事務担当者や外部の専門家だけで完結させてしまうと、現場からは「実態を知らない人間が作った押し付けルール」と見なされ、形骸化してしまいます。プロジェクトを成功させるには、以下のステップで「現場のキーマン」を巻き込むことが不可欠です。

プロジェクトチームの編成

経営者、事務担当者に加え、「子どもにスキルを教える部門の責任者(現場リーダー)」を必ずメンバーに入れてください。それぞれの立場で納得しながら進めることが生きた規程となります。

  • 経営者: 安全文化の構築を宣言し、リソース(予算・時間)を承認する。
  • 事務担当者: 法律の要件を確認し、ドキュメントを整理する。
  • 現場責任者: 「そのルールは実際のレッスンの流れで実行可能か?」を検証する。

現状の業務フローとの「ギャップ分析」

雛形を見る前に、まずは今の自社の「当たり前」を棚卸しします。次のような問いかけを踏まえながらギャップ分析をしましょう。

  • 「今の教室の配置で、講師と生徒が二人きりになる瞬間はあるか?」
  • 「その他、子どもの安全が脅かされる場面にはどんなものがあるか?」
  • 「不適切な指導と思われる言動はどのようなものか?」
  • 「スタッフの採用時、今はどのような誓約書をもらっているか?」
  • 「現状のスタッフで対応が可能か? 難しいと感じるならどこにハードルがあるか?」

理想と現実のギャップを特定することから、真に機能する規程作りが始まります。

 実効性を高める「検討の進め方」のポイント

プロジェクトを進める際、以下の3つの視点を意識することで、規程の質は劇的に向上します。

現場ヒアリングと「死角」や「おそれ」、「不適切な指導」の特定

現場責任者と共に、施設内を歩いてみてください。大人の目線だけでなく、「通う子どもの目線」でも確認を行い、「更衣室の入り口」「プールの物置」「ピアノ教室の奥」など、物理的な死角はないかを確認します。また、休憩時間や送迎バスの中など、管理の目が届きにくい「時間の死角」も洗い出します。

さらに、不適切な指導や対処が性犯罪に発展したり、保護者から疑いの目を向けられたりするリスクも検討します。「不適切な指導をどう防止し、どのような策が有効かつ実現可能か」を考えましょう。現場スタッフへのアンケートや過去のクレーム情報を活用し、「適切な指導の範囲」について共通認識を作れるよう、具体的な例や考え方を交えて定義していくことが重要です。

「実行可能性」の徹底検証

例えば規程に「子どもと接する際は常に2名以上のスタッフを配置する」と書くのは簡単ですが、小規模な教室でこれがコストや物理的に不可能であれば、その規程は「嘘」になってしまいます。

「1名で対応せざるを得ない場合は、外から見える窓を設置する」「常にWEBカメラで録画し、管理者がリアルタイムで確認できる状態にする」など、自社のリソースで実現可能な代替案を現場と一緒に考えるプロセスが重要です。

なお、防犯カメラは客観的な情報を得る良い手段ですが、着替えやトイレなど不適切な場所を映した画像が悪用されるリスクも孕んでいます。デバイスを導入する場合は、情報セキュリティ面の管理可能性も併せて検討しましょう。

周知と「試用期間」の設定

いきなり「今日からこれが規程です」と周知するのではなく、ドラフトの段階でスタッフに説明し、「この表現で意味が伝わるか?」「現場で困ることはないか?」というフィードバックを受ける期間を設けましょう。このプロセスを経ることで、スタッフの中に「自分たちで作ったルールだ」という当事者意識が芽生えます。

規程策定プロジェクトの進め方

結び:規程作りは、組織の「誇り」を言語化する作業である

日本版DBSの規程を策定することは、単なるコンプライアンス対応ではありません。「私たちは、ここまで徹底して子どもたちを守り、スタッフを大切にする組織である」という決意を言葉にする作業です。

手間はかかりますが、現場と対話を重ねて作り上げた規程は、保護者に対する強力な信頼の証となります。また、明確な基準があることは、誠実に働くスタッフにとっても「何に気をつければ良いかが分かり、安心して指導に専念できる」という大きなメリットになります。

次回は、今回お話しした2つの柱のうち、現場の行動を具体的に律する「児童対象性暴力等対処規程」にフォーカスし、具体的な条文に盛り込むべき項目と、作成上の留意点を深掘りします。
なお、弊所では各種規程の策定サポートや日本版DBSの認定取得に関するコンサルティングを行っております。認定を取得したいが、規程策定が煩雑で進まないとお困りのお客様は、以下のボタンからお気軽にお問い合わせください。

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