障害児通所支援事業所の日本版DBS義務対象と制度の基本|児発・放デイが最初に確認すべきこと

はじめに

令和7年12月の完全施行により、障害児通所支援事業所は「こどもの性暴力防止法(日本版DBS)」の義務対象として、すべてのスタッフへの確認体制を整えることが求められています。

「DBSという制度があることは知っているが、自分の事業所に具体的に何が必要なのかわからない」──そんな方に向けて、事業所目線で「何が義務で・誰が対象で・何をしなければならないか」を整理します。法的な詳細解説はDBSシリーズ(別シリーズ)に譲り、この記事では実務的な全体像に絞ります。

日本版DBSとは─障害児通所支援事業所に何が求められるか

こどもの性暴力防止法(令和5年法律第46号)は、こどもに接する職種の従事者に対して「性犯罪等の前科・前歴がないことの確認」を事業者に義務付けた法律です。令和7年6月に施行が始まり、12月に完全施行となりました。

📋 障害児通所支援事業所に関わる主な義務(概要)

  1. 確認義務:子どもと接する業務に従事させる者について、DBS照会を実施すること
  2. 申告義務:従事者本人から「性暴力行為歴等がないこと」の自己申告(誓約書の取得)
  3. 防止措置義務:DBS照会等の結果、「おそれ」があると判断された者を子どもと接する業務に従事させないこと
  4. 記録・管理義務:確認の記録を適切に保存・管理すること(個人情報保護法との整合を含む)

根拠条文:こどもの性暴力防止法第6条(特定事業者の確認義務)・第8条(申告義務)・第9条(不利益取り扱いの禁止)

障害児通所支援のどのサービスが義務対象か

「障害児通所支援事業所」は広い概念ですが、DBS法の義務対象となるのは以下の通りです。

障害児通所支援(児発・放デイ・保育所等訪問支援・居宅訪問型・障害児相談支援)はすべて義務対象です。「うちは小規模だから対象外」「放課後だけだから関係ない」という認識は誤りです。規模・形態を問わず、子どもと接する業務を行うすべての事業所が対象となります。

誰が確認対象か─スタッフ区分別の整理

「どのスタッフまで確認が必要か」が実務上の最初の疑問です。基本的な考え方は「子どもと継続的に接する業務に従事する者」が対象ですが、区分ごとに判断が分かれます。

確認対象の考え方

⚠️ 特に注意が必要なケース

  • 複数のサービスを多機能型で運営している場合:それぞれのサービスのスタッフを整理し、確認が漏れないようにする
  • 業務委託のPT・OT・ST等:「継続的・定期的」に子どもと接する場合は義務対象となる可能性があり。指定権者に確認を
  • 完全施行時点で在籍している既存スタッフ:新規採用者と同様に遡及的な確認が必要。人数が多い場合は計画的なスケジュールを立てる

障害児通所支援事業所ならではの留意点

1対1支援が多い環境での「密室リスク」への対応

障害のある子どもへの支援は、1対1または少人数での個別支援が多く発生します。この環境は不適切な行為が起きやすい「密室リスク」を構造的に抱えています。

  • 個別支援の場面では、ガラス窓・モニター等で他のスタッフが確認できる環境を整える
  • 個別支援の内容・時間・スタッフ名を記録に残し、第三者が確認できる状態にする
  • 特定のスタッフが特定の子どもの個別支援を長期間独占しない体制を意識する

コミュニケーションが難しい子どもへの配慮

障害のある子どもの中には、言語的なコミュニケーションが難しく、「何かあっても自分で言えない」という状況の子どもがいます。これは不適切な行為が発覚しにくいリスクを高めます。

  • 子どもの行動・表情の変化を日常的に観察し、記録する習慣をつける
  • 保護者との連絡を密にし、「いつもと違う様子」を早期に把握できる体制をつくる
  • AAC(代替コミュニケーション)を活用している子どもの場合は、コミュニケーション手段を使った「嫌なことを伝える練習」を支援の中に組み込むことを検討する

送迎場面でのリスク管理

送迎は子どもと職員が密室(車内)で接する場面です。この場面固有のリスク管理が必要です。

  • 送迎車内は可能な範囲でドライブレコーダーを設置し、車内の状況が記録される環境にする
  • 車内置き去り防止の安全確認手順を整備し、チェックリストとして記録に残す
  • 送迎担当者が1人の場合は、可能な限り複数名体制にするか、保護者への引き渡しの確認を徹底する

運営規程・重要事項説明書への反映

DBS制度への対応は、運営規程・重要事項説明書にも反映させる必要があります。記事⑦で解説した規程整備の観点から、以下の事項の追記・更新をご確認ください。

📋 運営規程・重要事項説明書への追記事項(例)

【運営規程への追記】

  • こどもの性暴力防止に関する取組方針(DBS確認の実施・行動規範の整備・研修の実施)
  • 事案発生時の対応手順(報告ライン・関係機関への連絡方針)

【重要事項説明書への追記】

  • スタッフの採用・安全確認に関する方針(DBS照会・誓約書取得の旨)
  • 保護者からの相談・申し出窓口(何か気になることがあれば相談できること)

📌 行政書士コラム:DBSは「採用の問題」ではなく「運営の問題」

「DBS対応は採用の際にやること」という認識が多いですが、これは半分しか正しくありません。採用時の確認(照会・誓約書)は入口の対策です。しかし制度が本当に求めているのは、「安全な環境を継続的に維持する」という日常的な運営の姿勢です。 行動規範の整備・密室リスクへの対応・保護者との連携・研修の継続──これらは採用後の「運営の問題」です。開設時に揃えて終わりではなく、毎年更新・確認する仕組みとして事業所に定着させることが、子ども性暴力防止法の本来の趣旨に応えることになります。

次回:日本版DBS─実務対応の具体的な手順と記録管理

次回は、実際に事業所が取り組むべき手順(照会の進め方・誓約書の取得・行動規範の周知・研修の実施)を実務チェックリスト形式で整理します。

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