データで見る運営指導の実態|指摘されるのは仕組み|4-LeafClover

データで見る運営指導の実態― 指摘されるのは「記録」ではなく「仕組み」

運営指導と聞くと、身構える方が多いと思います。

  • 書類は足りているか、
  • 記録は細かく書けているか

けれど、実際に何が指摘されているのかを見てみると、事業者が恐れているものと、指摘されているものは、少しずれています。ここでは、東京都が公表している障害福祉サービス事業所への運営指導の結果を、当事務所で集計したデータをもとに、実態をお伝えします。運営指導は、怖がるものではなく、備えるものです。備えるためには、まず実態を知ることから始まります。

何が指摘されているのか ― 弊所で集計してわかったこと

東京都の公表情報から、文書による指摘があった事業所の指摘内容を集計しました。指摘の総数は1,803件。多い順に並べると、次のようになります。

・虐待の防止 326件(18.1%)

・身体的拘束等の禁止 284件(15.8%)

・組織 271件(15.0%)

・基本方針及び施設運営全般 252件(14.0%)

・災害対策等の状況 132件(7.3%)

・利用者負担額 91件(5.0%)

・勤務状況 78件(4.3%)

・サービスの記録 63件(3.5%)

・個別支援計画の作成等 56件(3.1%)

・就業規則等の整備/利用申込・契約 各51件(2.8%)

・衛生管理等 49件(2.7%)

・従業者の配置等 37件(2.1%)

上位4項目の虐待の防止、身体的拘束等の禁止、組織、基本方針及び施設運営全般だけで、全体の約63%を占めます。一方、多くの事業者が気にする「サービスの記録」は3.5%、「個別支援計画の作成等」は3.1%にとどまります。

注意)このデータについて

東京都が公表している運営指導の結果を、当事務所で集計したものです。公表されている分に基づく集計であり、対象期間・集計時点によって数値は変わります。傾向をつかむための目安としてご覧ください。

虐待防止の指摘は、「虐待があった」という話ではない

最多の「虐待の防止」を見て、驚かれるかもしれません。けれど、指摘の中身を一つひとつ読むと、印象は変わります。指摘の多くが、「必要な体制の整備を講じていない、又は講じているが不十分なので是正すること」です。

つまり、虐待が起きたから指摘されているのではありません。虐待を防ぐための“仕組み”を整えていない、あるいは不十分だから指摘されているのです。
具体的には、委員会を設置しているか、指針を定めているか、研修を実施しているか、担当者を置いているか。委員会の運用を規定通り行っているのかなど、問われているのは、仕組みの有無です。

また、この上位4項目を見直すと、共通点が浮かび上がります。
虐待防止も、身体的拘束等の禁止も、組織も、基本方針及び施設運営全般も、
すべて「体制・仕組みが整っているか」を課題となっている。そして、記録や個別支援計画といった“日々の書類”の指摘は、意外なほど少ないです。

これらから導かれる結論は、明白です。運営指導で問われるのは、日々の記録の細かさではなく、そもそも仕組みを作り、ルール通りに運用しているかどうかです。直前に書類をそろえて乗り切る、という発想では、肝心の足元の課題を見落としているかもしれません。

まず、義務と努力義務を整理する

では、課題が明らかになったことを前提に、何から手をつけるかの「方法」について説明します。
私がおすすめするのは、「絶対にやらなければならないこと」と「努力義務」とに、いったん課題を整理して並べてみることです。

制度上、事業所がやるべきことは山ほどあります。もちろん、最終的にはすべて必要です。ただ、すべてを同じ重さで捉えていると、優先順位がつかず、結局どれも中途半端になります。まずは、満たさなければ基準違反になるものはどれか。努力義務として求められているものはどれか。この線引きをして、義務のほうから確実に仕組みを作っていく。
つまり、この作業は、業務を整理して優先順位をつけることです。これは福祉の専門知識というより、業務設計の話です。

障害福祉のサービスが違ったとしても方法は変わりません。自立訓練でも、就労継続支援でも、グループホームでも、児童のサービスでも、発想は同じです。

チェックの仕組みと、システムの活用

書類に関して不安を抱えている方に対する改善方法もお伝えします。
それは「仕組みを作る」で解決が出来ます。
仕組みを作るというと難しく聞こえますが、実務的にはシンプルです。チェックの仕組みを組み込むことに尽きます。

幸い、記録については、様式が定まっているものは少なくありません。記録の場合、ゼロから考える必要はなく、定められた様式に沿えばよいため、福祉系のシステムを利用するのも有効な手段となります。システムを使えば様式の問題はおおむねクリアできますし、入力の段階でシステム的にチェックが働くため、抜け漏れに気づきやすくなります。
システムをお使いではない方は、「チェックリストを作る」というのが、リストの作成やリストで確認することの時間や手間はかかってしまいますが、改善にはつながります。
人の注意力だけに頼らない仕組みにしておくことが、結局はいちばん確実です。

加算の不正は、返金だけでは済まない

もう一つ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。加算を虚偽の申告で取得することは、絶対にしないでください。

発覚すれば、返金です。しかしそれで終わりではありません。本来もらえないはずのお金で資金繰りを計画していた場合、返金を求められた瞬間に、たちまち資金ショートも起こすでしょう。つまり、事業が回らなくなるのです。
さらに、公表されれば世間からの冷たい風にさらされます。利用者やご家族、職員からの信用を無くし、離れていく方もいるでしょう。
これは自立訓練に限った話ではなく、障害福祉サービス全体に共通します。税金が投入されている事業である以上、ここに「あわよくば」や「バレなければ良い」という考えは一切持たず、誠実に事業を続けることが事業継続のカギにもなります。経営者の方々は、心の隙や甘さが露見しないような体制や社内の意識統一をすることにも目を向けるようにしてください。

東京都府中市・4-LeafClover行政書士事務所の見解

指定を受けたときの基準やマインドをいかに死守するかが肝になります。
開設したばかりの施設では、開設の苦労や制度の学びにも積極的な時期のため新情報へのキャッチアップもしていたでしょう。
しかし、開設して3-5年目を過ぎたあたりから、運営が安定していくと、運用実態のばかりに目が行くようになり、いつのまにか「うちのやり方」が基準からずれていくことが多くなっていきます。
そんなときに不正が発覚する時の担当者や責任者の一言は「悪意はない。ただ知らずに違反していた」が多いです。
だからこそ、不適法なのか適法なのかという感覚を、常に見直す仕組みを、事業所の中に組み込んでおいてほしいのです。
運営指導は、そのズレを外から教えてくれる機会でもあります。
やみくもに怖がるものではなく、「備えるもの」。備えとは、書類を直前でそろえることではなく、日ごろルールを組み、出来る限り適切な運用をすること、運営指導も「運営を見直し続ける機会」と捉えつつ、適切に恐れるようにしてください。


次に読む

< ブログ >

Blog

PAGE TOP