日本版DBS制度の認定をブランディング・事業継続に活かす
目次
はじめに:子どもの安全確保と事業継続は両立する
「日本版DBS認定をブランディングに使おう」という話をすると、「金目当てみたいに見られそうで嫌だ」という反応をする事業者がいます。その感覚はよくわかります。
ただ、根本は子どもの安全を確保することです。それが結果として事業への信頼につながるのであれば、それは良いことだと思っています。
教育事業の現実
今後も少子化が加速することが見込まれる中、教育事業は子どもの数が減ることによって、厳しい市場環境に置かれています。そういう意味では、貴社が掲げる教育の指針を伝えると同時に、子どもの成長をどう捉えているのかの1つの表現として日本版DBS制度の認定取得を適切に事業継続の手段として活用することには意味があります。
つまり、自社の考えや思想を認定取得後の対処しなければならない事項を「行動」という見える形で示すことができるからです。さらに、それが子どもの安全確保という法の大義とも合っているなら、余計に活用すべきだと思っています。ただし、大前提として、自社の考えの要素の中に「まず子どもの安全が第一」ということをもう一度じっくり考えていただいてから、この後の記事をお読みいただければ幸いです。
本記事では、認定を「ブランディングに活かす発信」「費用対効果の考え方」「規程策定のプロジェクト設計」という3つの観点で整理します。
第1章 DBS認定を「選ばれる理由」に変える発信戦略
認定マーク(こまもろうマーク)の活用
認定を受けた事業者は「認定事業者マーク(こまもろうマーク)」を掲示できます。掲示できる場所は、施設のエントランス・受付・看板・ホームページ・求人広告・パンフレット等です。第三者による再利用・流通がされないものに限られます(ペン・クリアファイル等の配布物は不可)。

媒体別の発信活用テーブル

「安心宣言」文書に盛り込む3要素
保護者向けの「安心宣言」文書は、以下の3要素を平易な言葉で明記することができると考えます。基本的には、「このような体制で取り組んでいます」という姿勢の宣言として作成をしてください。
- 何をしているか(具体的な取り組み内容)
犯罪事実の照会の実施・従業員に対する誓約書の取得・子どもの性暴力に関する研修の実施・こども性暴力防止法に基づく相談体制の整備 - なぜしているか(目的・姿勢)
こどもたちが安心して過ごせる環境をつくるために、という理念と連動させた自社の考え・教育方針・自社の掲げるミッション - 継続してどうするか(継続的な取り組み)
年次研修・定期的な自己点検・制度更新への対応を続ける姿勢・自社のビジョンと日本版DBSの掲げる制度目的と合致する点
「公立学校との差別化」という発想について
公立学校でも犯罪事実確認を実施します。そのため、「日本版DBS制度の認定対応をしています」のアピールは5年・10年後には「当たり前」になってくると予想されます。
よって、今後数年間は、日本版DBSに対応することも差別化ポイントになるでしょうが、今後は、「日本版DBS制度以外に何をしているか」も問われる時代になってくるでしょう。よって、プラスαの取り組みを加えた「うちならではの安全体制」を言語化することが、選ばれる理由になってくるでしょう。
第2章 費用対効果の考え方:コストではなく投資として捉えるために
かかるコストの整理
日本版DBS制度への対応にかかる費用は「直接費」と「間接費」に分かれます。
- 直接費:認定申請手数料(1事業3万円)・認定取得に向けた専門家(行政書士・弁護士・社労士)等への依頼費用・情報管理システムの導入費用
- 間接費:事務担当者の人件費(犯罪事実確認の申請手続き・同意取得・台帳管理・廃棄対応)・全スタッフへの研修費用・担当者交代時の引き継ぎコスト
特に間接費は、管理部門の時間を費やすため総額が大きくなりがちです。専門家に依頼することで、事務担当者がゼロから学ぶ時間・誤りによる手戻り・再申請のリスクを回避できます。
「投資として捉える」か「損失リスクから考える」か
費用対効果の表現には2つのアプローチがあります。
同じことを表裏から見ている
「認定を取ることで信頼が得られる(投資のプラス面)」と「認定取消し・信用失墜という損失になる(投資のマイナス面)」は、同じことを別の角度から見ているだけです。どちらで動機づけるかは事業者次第ですが、私はプラス面を見て積極的に動いてほしいと思っています。子どもの存在はとても貴重なものとなってくる中、安全確保という大義に実行力も伴う取り組みとなれば、それは本物の事業価値となります。
ただ、これは投資のマイナス面を軽視して良いと言っているわけではありません。リスクをどう対処するのか、抑制するのかもじっくりと検討・判断をしてほしいです。そのためには、時に専門家への相談も躊躇わず、行う事をお勧めします。
投資のマイナス面として把握しておくべき点:
- 認定取消し
事業の継続自体を脅かす最大のリスク。取消し後の再生は困難(前記事参照) - 公表による信用毀損
こども性暴力防止法では認定取消しの事実が公表される。保護者の離脱・採用への影響 - 個人情報保護法違反
情報管理を怠った場合の罰則・損害賠償リスク
第3章 規程策定:現場を巻き込んで「生きたルール」を作る
2つの規程が必要な理由
認定申請には以下の2つの規程の策定・提出が必要です。
- 児童対象性暴力等対処規程:「現場の安全」を守るための行動規範。身体接触の基準・不適切な行為の定義・相談体制・初動対応フロー等を定める
- 情報管理規程:「個人情報の安全」を守るための管理ルール。誰が・どのように・いつまで情報を管理し・どう廃棄するかを定める
この2つは「現場の安全」と「情報の安全」という両輪です。どちらが欠けても認定事業所としての信頼は担保されません。
現場を巻き込む5ステップ
現場リーダーを「安全の設計者」にする
規程策定を事務担当者だけでやろうとすると、現場から「実態を知らない人間が作った押し付けルール」と見なされ、形骸化します。現場リーダーが策定に関わることで、「自分たちの指導法を自分たちで決める」という感覚が生まれます。そうなると規程は守られやすくなり、現場も回りやすくなります。ガイドラインに定められた基準を土台にしながら、自分たちのあり方を言語化するプロセスが「生きた規程」を作る唯一の方法だと思っています。

2つの規程の策定でよくある失敗と対策
- ガイドラインのテンプレをそのままコピーする
実態と乖離した規程は機能しない。STEP1の現状把握から始めること - 事務担当者だけで完結させる
現場リーダーをSTEP1から巻き込むことが生きた規程の条件。形骸化したルールは結果的に性暴力抑止効果も低減してしまう。 - 策定して終わりにする
年次監査で実態との乖離をチェックし、定期的にアップデートする
まとめ:子どもの安全を守ることが、事業継続の根拠になる
教育事業は子どもの数が減る市場で戦っています。そういう状況だからこそ、「子どもの安全を守る事業所」として選ばれ続けることが事業継続の根拠になります。
日本版DBS制度の認定は、その「選ばれる理由」を可視化する仕組みです。認定マークを掲げること・安心宣言を発信すること・規程を現場と一緒に作ること——これらはすべて「子どもの安全を本気で考えている」という証です。
大前提は、まず子どもの安全が第一です。その大前提に立った上で、それが事業継続にも貢献するのであれば、積極的に活用すべきだと思っています。
発信戦略の設計・安心宣言文書の作成・規程策定のプロジェクト支援については、ぜひご相談ください。
