特定性犯罪の該当者の人事対応と認定取消し防止ガイド|配置転換・罰則・不祥事初動まで行政書士が解説

はじめに:従業員に特定性犯罪者がいた!これは行政書士だけでは対応できない

犯罪事実確認で特定性犯罪歴が判明した従業員をどうするか——この相談が来たとき、行政書士として最初に伝えることがあります。

「これは行政書士だけでは対応できません。」

労働紛争が発生するリスクがある以上、退職勧奨にするか・配置転換にするか・解雇にするかは、弁護士と慎重に判断する必要があります。行政書士の業務範囲は日本版DBSの規程整備・申請サポートまでです。人事措置の適法性については社労士でもある程度対応可能ですが、調停や裁判の可能性がある場合は、弁護士でしか対応できません。

本記事では、行政書士が担える「事前の規程整備と違反リスクの整理」と、不祥事が起きた際の初動対応フローを解説します。具体的な人事措置の実行は、必ず専門家と連携してください。

第1章 事前に整備しておくべき規程:判明してからでは遅い

不適合者が判明した後に「何をすべきか」で迷わないために、事前の規程整備が不可欠です。特に以下の2点は認定取得前に完了させてください。

① 就業規則へのこども性暴力防止法対応規定の追加

  • 犯罪事実確認への同意義務:確認手続きへの協力を雇用継続の前提条件として明記
  • 不適合時の配置転換規定:犯罪歴判明時に子ども関連業務から外す命令権の根拠
  • 懲戒・解雇事由への追加:犯罪事実確認拒否・虚偽申告を懲戒事由として明記

② 採用時の書面による通知

新規採用時・中途採用時に「犯罪事実確認が雇用継続の前提であること」「不適合時の人事措置の可能性」を書面で明示し、同意を得ておくことが、後の人事措置における法的根拠になります。

就業規則の改定は社労士の専門領域
就業規則の作成・変更は社会保険労務士の専門業務です。就業規則の具体的な文言作成・改定手続きは社労士に依頼してください。認定取得前に社労士との連携体制を作っておくことを強くお勧めします。
もし、お知り合いの中に、社労士や弁護士方がいない場合は、提携先の専門家をご紹介します。お気軽にお問い合わせください。

 第2章 犯罪歴が判明した場合の人事対応:解雇は最終手段

「なぜ解雇できないのか」という困惑への答え

犯罪歴が判明したのに即時解雇できないというのは、事業者にとって理不尽に感じられます。採用面接で嘘をつかれたことへの怒り、労働契約として結んだ業務ができなくなる困惑——特に中途採用で「この人の仕事」として組んでいたポジションが空白になる場合は、その痛みはより大きい。その感覚は当然です。

それでも、「犯罪歴があること」だけを理由とした即時解雇は、労働契約法上のハードルが極めて高く、不当解雇として訴訟リスクを抱えます。感情的には理解できても、法的には別の判断が求められます。

対応の順序:配置転換→解雇回避努力→解雇

  1. 配置転換(第一選択肢)
    子どもと接しない業務(事務・清掃・送迎以外の業務等)への異動。配置転換命令は就業規則の根拠が必要
  2. 解雇回避努力
    配置転換先がない小規模事業者でも、すぐに解雇せず他社への再就職支援等の努力を記録に残す
  3. 弁明の機会の付与
    人事措置を行う前に従業員に通知し、言い分を聞く機会を確保する。聴取記録を必ず残す
  4. 解雇(最終手段)
    上記の努力を尽くした上で、就業規則の解雇事由に該当することを確認してから実施。
    ※この場合は、弁護士と協議の上で進めることを強く推奨します。

どの選択肢も弁護士・社労士なしに動かない
退職勧奨にするか・異動にするか・解雇にするか——この判断を事業者単独で行うことが最大のリスクです。判断を誤ると、その後の訴訟コストは多大な費用がかかる可能性も否めません。必要な投資・保険として、躊躇せず専門家に相談してください。

第3章 義務違反の罰則と認定取消し:何をすると何が起きるか

こども性暴力防止法の義務違反が招くリスクは「罰則」「行政処分(認定取消し)」「信頼の失墜」という三重構造です。以下の一覧で整理します。

義務違反が招くリスク一覧

両罰規定に注意
こども性暴力防止法には両罰規定があります。法人の代表者や従業員が違反した場合、行為者個人だけでなく法人にも罰金刑が科されます。「担当者がやったこと」では済まない設計です。

認定取消し後の現実

認定取消しから立ち直ることは不可能ではありません。しかし、大きな信用の傷は残り続けます。事業を改善し行動を変えたとしても、「かつて取消しになった事業所」という記憶は消えません。

企業の不祥事でブランド名を変えて再出発する事例がありますが、日本版DBS関連の認定取消しも同様で、最終的には事業譲渡・ブランド変更・法人の組み替えといった大きな決断が必要になる場合があります。そこまでのコストを考えれば、予防に投資する合理性は明らかです。

第4章 不祥事が起きたときの初動5ステップ

どれほど厳格に運用していても、人間の行動を100%予測することはできません。事業者は「最悪の事態」を想定した対応マニュアルを事前に持っておく必要があります。

不祥事が起きたときの初動5ステップ

子どもへのヒアリングは必ず専門家が実施する
善意から子どもに話を聞こうとする大人は多いですが、これが子どもの心を傷つけ、事実認定をあいまいにする可能性があります。子どもが感じたこと・理解したことは、大人の価値観や問いかけ方によって全く違う形で記憶として残る可能性があります。これは大人目線では気づきにくい、しかし極めて重要な観点です。
ヒアリングは必ず臨床心理士・司法面談の手法を理解した弁護士・警察など専門家に委ねてください。

認定取消しを防ぐ「日頃の備え」の記録

不祥事が起きたとき、認定継続への道が開かれるかどうかは、「組織として日頃から適切な対策を講じていたか」を証明できるかにかかっています。以下を日常的に記録してください。

  • 定期研修の実施記録(参加者・日時・内容)
  • 不審な行動に気づいた際の判断ログ(おそれの記録)
  • 相談窓口への申告記録と対応記録
  • 5年更新の実施状況・台帳の最新化

これらの記録が「個人の逸脱であり、組織の不備ではない」ことを示す証拠になります。

まとめ:ガンが見つかってから予防はできない

日本版DBS制度の対応を「性犯罪者がいたらどうするか」という観点で捉えている事業者は、すでに手遅れかもしれません。

ガンが見つかってから予防はできないのと同じです。延命ではなく事業を全うするためには、常日頃から性暴力の予防に主眼を置くしかありません。

就業規則の整備・研修の継続・台帳管理・相談窓口の運用——これらは「違反したときのための保険」ではなく、「子どもの安全を守るための日常業務」です。その積み重ねが、万が一のときに事業者を守ります。

規程整備・行政申請サポート・専門家紹介まで、できる限りの連携体制を整えています。ぜひご相談ください。

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