【DBS法Q&Aトップ10】認定事業者が抱える実務・経営の疑問を一挙解決(東京都)
目次
- 1 はじめに
- 2 【Q&A】塾・習い事事業者が抱えるDBSに関する疑問トップ10
- 2.1 Q1: 社長(代表者)や役員も特定性犯罪の犯罪歴の調査の対象ですか?
- 2.2 Q2: 採用時の内定後、いつまでに確認を完了させるべきですか?
- 2.3 Q3: 採用候補者が確認に非協力的だった場合、採用を中止できますか?
- 2.4 Q4: 確認記録は具体的に何年間保管しなければなりませんか?
- 2.5 Q5: 外国籍講師を採用する場合、母国での犯罪歴はどう確認しますか?
- 2.6 Q6: DBS確認のための個人情報(本籍など)をどこまで収集・利用してよいですか?
- 2.7 Q7: 性犯罪歴の再確認は、どれくらいの頻度で実施すべきですか?
- 2.8 Q8: パートやアルバイトでも、正社員と同じ確認が必要ですか?
- 2.9 Q9: 認定事業所であることは保護者に伝えるべきですか?
- 2.10 Q10: 行政書士に依頼した場合、どこまで対応してくれますか?
- 3 結び:法令遵守は「安心」という最大の資産
はじめに
こども性暴力防止法(DBS法)の施行は、教育・保育等を提供する民間事業者の皆様にとって、大きな変化をもたらします。
認定取得や義務的な犯罪事実確認は、子どもの安全を守る上で必須ですが、「具体的にどこまでやればいいのか?」「うちの会社の場合はどうなる?」といった実務上の疑問は尽きません。
本記事では、経営層の皆様が最も関心を寄せる「対象範囲」「採用時の対応」「情報管理」、そして「ブランディング」に関する10の重要疑問に、行政書士の視点から具体的かつ平易な言葉で回答します。
法令遵守と円滑な事業運営を両立させるための知識を身につけましょう。
【Q&A】塾・習い事事業者が抱えるDBSに関する疑問トップ10
Q1: 社長(代表者)や役員も特定性犯罪の犯罪歴の調査の対象ですか?
A1: 子どもと接する業務内容がある場合は、原則として対象です。
DBS法にて特定性犯罪の犯罪歴を確認しなければならない対象としている要件は、「教育保育等従事者」です。これは、雇用形態や役職に関わらず、実際に子どもに教育・保育等のサービスを提供する業務に従事するすべての人を指します。
社長や役員であっても、日常的に教室で子どもと関わる、指導を行う、または指導を行う者を直接指揮監督する立場にある場合は、確認の対象となります。「役職」や「雇用形態」などによって区別されるのではなく「業務の実態」で判断されます。
参考記事:【DBS法】パート・アルバイトも対象?非正規雇用者の確認義務と実務フロー
Q2: 採用時の内定後、いつまでに確認を完了させるべきですか?
A2: 従事者として「業務を開始する前」までに完了させる必要があります。
DBS法は、事業者が従事者に対し、特定性犯罪歴がないことの確認を「業務を開始する前に」行うことを義務付けています。 内定は出しても、実際に子どもへの指導を始めるまでには、本人の同意を得て、法務大臣に犯罪事実の有無を確認し、その結果を受け取るまでの全てのプロセスを完了させなければなりません。この確認が完了するまでは、指導業務に就かせることはできません。
参考記事:DBS制度が変える日本の雇用慣行と採用への影響【行政書士の見解】
Q3: 採用候補者が確認に非協力的だった場合、採用を中止できますか?
A3: その業務(教育保育等)での採用には慎重にすることをお勧めします。
事業者には、業務を開始する前に確認を行う法的義務があります。
確認が終わるまでには、法令により確認ができない者を「教育保育等従事者」として雇用・配置することはできません。または、子どもと接する場合は他の者が必ず同席するなど、子どもへの安全に第一に考えた対応を講じる必要があります。また、採用候補者が確認への同意を拒否したものの、採用に押し切った場合、性犯罪発生のリスクは企業が負うこととなります。犯罪防止が不十分で性犯罪が発生してしまったり、発生後の対応が不十分だと、保護者や世間からの厳しい批判にさらされ、企業の信頼を失墜させることとなるかもしれません。
法的な確認が必須の業務である以上、採用面接時(または内定時)に、特定性犯罪歴の調査が必須であること、協力を得られない場合は採用を見送る可能性があることを事前に明示し、説明することで、トラブルの予防に努めましょう。それでも協力を得られない場合は、採用を見送ることも検討せざるを得ません。
また、現職の方から調査の協力を得られない場合は、配置転換をすることが企業としての第一選択になります。ただ、それを実行する前、つまり認定取得時から就業規則等により配置転換ができやすい体制を整備するなどの準備も怠らないようにしましょう。
参考記事:DBS認定ロードマップ:制度施行までにすべき準備チェックリスト(規程・就業規則)
Q4: 確認記録は具体的に何年間保管しなければなりませんか?
A4: 保管期限については、現職かそれ以外かで考えると理解がしやすいです。
- 退職した場合
離職した日に廃棄 - 採用内定後に内定辞退等で採用に至らなかった場合
犯罪事実確認書の申請に記載した雇用開始日に廃棄 - 継続して仕事に従事している場合
犯罪事実確認書は、犯罪事実確認をしてから5年に再調査することなっているため、5年前に調査した記録は前回に確認した日から5年を経過した日の属する年度の末日から起算して30日以内に廃棄
DBS法は、認定事業者に対し、「犯罪事実確認記録等」を厳格に管理する情報管理措置を講じることを義務付けています。
具体的な保管期間は、上記の通り、現職か否かによって保管期限が変わります。事業者が定める情報管理規程にそれぞれの雇用状況に応じた保管日を明確に定め、情報管理担当者において、廃棄期限を業務カレンダー等に組み込むなどして、廃棄期限を厳守するようにしましょう。
参考記事:DBS確認記録の保管義務:5年間?退職後30日以内?廃棄ルールと情報漏洩対策
Q5: 外国籍講師を採用する場合、母国での犯罪歴はどう確認しますか?
A5: 現在の法的な義務確認は日本の司法記録が対象ですが、事業者独自の安全確保措置が必要です。
DBS法に基づく義務的な確認は、日本の法務大臣が保有する日本の司法記録が対象となります。現在の制度上、母国での犯罪歴を包括的に確認する仕組みは組み込まれていません。また、犯罪歴があること自体が必ずしも入国不許可とならないため、外国籍の従業員が母国等で性犯罪歴があった場合は、今後の犯罪発生リスクを企業にて負うこととなります。 そのため、この調査が不完全であるリスクを低減するには、以下の2点が考えられます。
- 採用時にバックグラウンドチェックを専門に取り扱う会社に調査を依頼する
- 母国の犯罪歴証明を本人申請してもらう
またはこの義務に基づき、事業者は、自社の規程で、外国籍講師に対し、可能な範囲での情報提供(例:自己申告書、母国で発行可能な犯罪経歴証明書の提出など)を求めることや、その申告書と異なる事実が発覚した場合は、配置転換や懲戒処分をすることなどを認定取得時や採用時に説明をしましょう。情報が確認できない場合は、複数人指導に限定するなど、より厳格な安全確保措置を緊急時の対処として講じるなど、安全確保に向けた最大限の工夫をしましょう。
参考記事:【東京都府中市 行政書士】外国人講師採用とDBS:海外の犯罪歴確認リスクと対策
Q6: DBS確認のための個人情報(本籍など)をどこまで収集・利用してよいですか?
A6: 目的達成のための「必要最小限」の情報に限定しなければなりません。
個人情報保護法では、個人情報を収集する際、その利用目的を達成するために必要な範囲を超えて収集してはならないと定めています。また、DBS法においても個人情報保護法同様に、目的外の利用を制限しています。
DBSの認定によって行う犯罪事実確認の目的は「特定性犯罪歴の有無を確認すること」です。また、法の趣旨としては「子どもの安全を確保すること」です。
収集する情報や利用目的は、情報管理規程に明確に定め、その規程に定めた利用に収め、管理も厳重にするなど情報管理にも細かい目配せした運用となるよう注意してください。
参考記事:DBS確認記録の保管義務:5年間?退職後30日以内?廃棄ルールと情報漏洩対策
Q7: 性犯罪歴の再確認は、どれくらいの頻度で実施すべきですか?
A7: 法的義務は「5年ごと」です。
DBS法は、従事者に対し、5年を超えない期間ごとに再確認を行うことを義務付けています。この再確認は、性犯罪は他の犯罪と異なり再犯率が高い性質を有しているためです。
しかし、従事者は一度犯罪歴を確認されたのに何故行うのかといった心理的反発もあるかもしれません。事業者は、認定取得時に既存従業員には、今後定期的に性犯罪歴調査のための協力が必要なことを全体研修において、従業員の潔白を証明するためにもなることを含め、仕組みを説明しましょう。
参考記事:DBS認定の最難関:既存従業員(現職者)の同意取得と経過措置期間の法的対応
Q8: パートやアルバイトでも、正社員と同じ確認が必要ですか?
A8: はい、雇用形態に関わらず、子どもと接する業務においてはすべて同じ確認が必要です。
DBS法の適用対象となる「教育保育等従事者」は、職務の内容に基づいて定義されており、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、さらにはボランティアであっても、子どもに対する教育・保育等の業務に従事する者はすべて含まれます。
したがって、アルバイト講師を採用する場合も、正社員と全く同じ手続きと情報管理措置が義務付けられます。
参考記事:【DBS法】パート・アルバイトも対象?非正規雇用者の確認義務と実務フロー
Q9: 認定事業所であることは保護者に伝えるべきですか?
A9: はい、強く推奨されます。強力なブランディング・差別化戦略となります。
DBS法による認定を取得していることは、「私たちは子どもの安全を最優先し、国の定める厳格な基準を満たしています」という最高の安心を保護者に提供することになります。
特に塾や習い事など、競合他社が多い民間サービスにおいては、安全基準の遵守を「見える化」する行為は、他社との決定的な差別化になり、集客力・ブランド力の向上に直結します。マーケティング戦略として、認定取得を積極的に保護者に伝えるべきです。
参考記事:【行政書士が解説】DBS認定を集客・ブランディングに変える「保護者への安心宣言」の作り方(東京都)
Q10: 行政書士に依頼した場合、どこまで対応してくれますか?
A10: 法令遵守のための「体制づくり」と「申請手続き」の大部分を支援できます。
- 認定申請手続き
認定に必要な書類作成、行政庁への申請代行。 - 情報管理規程の作成
法律が求める厳格な情報管理体制(アクセス権限、保管・廃棄方法など)を定めた規程(ひな型)の作成。 - 社内文書作成
同意書、再確認記録、研修記録など、法が求める各種文書の作成支援。 - 運用フローの整備
採用、再確認、情報漏洩対策などの実務フローに関する法的助言。
なお、就業規則の改訂を怠ると労働問題に発展する可能性が高い制度です。そのため、予防法務の観点から労働問題に強い弁護士にに相談なさることをお勧めします。
※弊所でご契約いただいたお客様には、以下のサポートが可能です。
- 弁護士と顧問契約していない事業者様においては、弊所にて提携している弁護士をご紹介可能です。
- また、別途、今後の就業規則の定期的な更新を踏まえて、規定に作成に強みを持った社会保険労務士をご紹介することも可能です。
- 認定や犯罪事実確認の電子申請や照会手続きのマニュアル作成やオンサイトでのサポート 認定取得をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
結び:法令遵守は「安心」という最大の資産
DBS法への対応は、一見複雑で煩雑に感じるかもしれませんが、これらのQ&Aを通じて、必要な手順と法的根拠が明確になったはずです。
法令を正確に理解し、疑問を解消した上で体制を整備することは、組織の「安心」というブランド資産を最大化することに繋がります。特に、保護者が最も懸念する子どもの安全確保において、明確なコンプライアンス体制を示すことが、今後の事業の成長を支える土台となります。
