GHで安心して暮らせる体制|虐待防止・身体拘束・BCP

はじめに

グループホームは、人が日々を暮らす場所です。だからこそ、その暮らしを安心して続けられる体制を整えることが、運営の根幹になります。
利用者である障害者の日々の暮らしが営めること、虐待を防ぐこと、身体拘束をなくしていくこと、災害や感染症が起きても暮らしを止めないこと、どれも、住まいを預かる事業には欠かせません。そして運営指導の記事でお伝えしたとおり、問われるのは「防ぐ仕組みがあり、機能するかどうか」です。このページでは、体制整備の三本柱を、グループホームという住まいの文脈で整理します。

体制整備の三本柱は、同じかたちをしている

今回は、日々の運営体制ではなく、運営指導にて指摘の多い、虐待防止・身体拘束の適正化・業務継続計画(BCP)について取り上げます。
この三つは、別々のもののように見えて、求められている「かたち」がよく似ています。いずれも、令和6年度から義務化され、満たしていない場合には報酬の減算の対象になりました。共通して求められるのは、次のような要素です。

  • 委員会を定期的に開催すること(おおむね年1回以上)
  • 指針・計画を整備すること
  • 職員への研修を定期的に実施すること(おおむね年1回以上)
  • 実施したことを記録に残し、職員に周知すること

つまり、「やっている」「なんとなく制度は作った」ではなく、委員会・指針・研修・記録という形で、仕組みとして整えて残し・継続することが求められています。減算の幅や要件の細部はサービス種別や改定で変わりますので、最新の告示と指定権者への確認は欠かせません。以下、三本柱それぞれを、グループホームの視点で見ていきます。

虐待防止 ― 「起きてから」ではなく「起きない仕組み」

運営指導の記事でお伝えしたとおり、運営指導の指摘件数が最も多かったのは虐待防止に関するものでした。しかもその多くは、虐待が起きたことへの指摘ではなく、虐待を防ぐ体制の整備が不十分だ、という指摘です。

  1. 委員会を運営している
  2. 指針があり皆が理解している
  3. 研修を定期的に実施している
  4. 担当者がいる

この仕組みができているかが問われます。

グループホームには、虐待防止の機能していることこそが、事業所の存在意義を高めると考えます。理由は、グループホームそのものが住まいという生活の場であり、どうしても外の目が届きにくく、密室になりやすいサービスだからです。お金に関する不当な扱い――経済的虐待も、虐待の一類型です。住まいとお金の両方を預かるグループホームでは、この点にも特に注意が必要です。 だからこそ、仕組みを作り・機能させ、虐待を防ぐことがいっそう大切であり、それが「普通に機能していることが一番のブランドにもなる」と思います。

身体拘束の適正化 ― 「緊急やむを得ない」の重み

身体拘束は、原則として行ってはならないものです。例外的に認められるのは、切迫性・非代替性・一時性の三つの要件をすべて満たす、緊急やむを得ない場合に限られます。そして、やむを得ず行った場合には、その態様・時間・その際の利用者の心身の状況・緊急やむを得なかった理由を、記録しなければなりません。

グループホームは暮らしの場です。身体拘束の必要性が高く、それが障害者の身を守ることに起因するならば、身体拘束そのものを悪として捉えるのは逆におかしいことですが、障害者の私的な空間の意味合いをもったり、過ごす時間の長いグループホームでは、単に担当者が面倒を見るのが面倒だったからという拘束が発生することも十分あり得ます。だからこそ、委員会・指針・研修を整え、「そもそも拘束をしなくて済む支援」を組織で考え続ける姿勢が求められます。

BCP ― 住まいだからこそ、暮らしを止められない

BCP(業務継続計画)は、感染症の発生時と、自然災害の発生時の両方について、あらかじめ備えておく計画です。令和6年度から策定が義務づけられ、未策定は減算の対象になりました。計画を作るだけでなく、研修や訓練を行い、実効性を高めていくことまで求められます。

ここでも、グループホームならではの重みがあります。通所サービスなら、災害時にはいったん閉所し、利用者は自宅へ帰るという選択もあり得ます。けれど、グループホームは、そこが利用者の自宅です。災害が起きても、暮らしそのものを止めるわけにはいきません。停電や断水のなかで、どう食事を確保し、どう安否を確認し、どう避難するのか。夜間に起きたら誰がどう動くのか。住まいだからこそ、BCPは絵に描いた餅では済まされません。

かといって、災害が起きたからと、入居者を家族や自治体に引き取ってもらえばよい、と安易に考えるのは、住まいを預かる事業所としての適格性を疑われても仕方がありません。一方で、非常時のすべてを事業所だけで抱え込もうとするのも、現実的ではありません。だからこそ、緊急時に「共助のしくみ」が働くよう、日ごろから地域とのつながりを築いておくことが大切です(地域連携については(地域連携については、入居者募集と関係機関連携の記事もあわせてご覧ください)。

これらは、運営指導と直結する ― 平常時と非常時の両方が問われる

三本柱に共通するのは、どれもグループホームの日常と、緊急時の両方に、深く関わっているということです。虐待防止と身体拘束は、日々の支援そのもの。BCPは、非常時の運営そのもの。

通所サービスが「日中の限られた時間」の運営を見られるのに対し、グループホームは、24時間の暮らしと、緊急時の対応の、両方が問われます。つまり、体制整備が運営指導で問われる場面が、他のサービスより広い。日ごろのサービスを丁寧に積み重ねられているか、そしていざというときに動ける備えがあるか。その両方が、住まいを預かる事業には求められているのです。安心して暮らせる体制づくりは、運営指導への備えであると同時に、何よりも、そこで暮らす方の毎日を守るための備えです。

東京都府中市・4-LeafClover行政書士事務所の見解

虐待防止も、身体拘束の適正化も、業務継続計画も、一見すると、面倒な義務が増えただけに思えるかもしれません。けれど私は、これらは事業を続けていくための土台だと考えています。近年、制度は少しずつ、その方向を指し示しているように感じます。

たとえば令和8年度には、新規に開設するグループホームの基本報酬を一定程度引き下げる一方で、重度の方や医療的ケアを要する方を支える部分は、従来の水準を守るという見直しが行われました。ここに、制度がグループホームに何を期待しているかが、表れています。端的なメッセージは、「グループホームには地域で暮らし続けることが難しい方の住まいを安心して支えることが求められている」です。
つまり、グループホームの存在意義を見誤って、支援の必要性が高くない方を効率よく集めることばかりを考えていると、これからの時代、立ち行かなくなっていくかもしれません。
安心して暮らせる体制を地道に築くことは、利用者を守り、職員を守り、そして事業そのものを、長く続く確かなものにしていくのだと思います。


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