NPO法人で障害福祉サービスを始める ― 「非営利」とお金のルールから考える法人形態の選択

はじめに

障害福祉サービスの指定を受けるには、法人であることが求められます。
社会福祉法人だけでなく、株式会社や合同会社、NPO法人でも指定は受けられます。
だからこそ、どの法人格で始めるかを自分で選ぶ必要があります。この連載では、NPO法人で障害福祉サービスを運営する場合に押さえておきたいことを、全9回で整理します。第1回は、NPO法人を選ぶかどうかを考える前提となる「非営利」とお金のルールです。

指定を受けるには、法人が要る

障害福祉サービスは、個人のままでは指定を受けられません。指定申請の前に、法人を設立しておく必要があります。

どの法人格を選ぶかは、申請書類の書きやすさで決めるものではありません。法人格ごとに、根拠となる法律も、お金の扱いも、毎年求められる手続きも違います。開設後の運営そのものに関わる選択です。

NPO法人の基本

NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法にもとづいて設立される法人です。法律の別表に定められた20の活動分野のいずれかに当てはまり、不特定かつ多数の人の利益の増進に寄与することを目的とする活動を行います。障害のある方の支援は、この活動分野に含まれます。

設立には、所轄庁の認証が必要です。登記だけで設立できる株式会社とは、ここから手続きが異なります。認証の流れと、指定申請のスケジュールとのつながりは、第3回で取り上げます。

特定非営利活動に該当する20の活動分野

別表(法第2条関係)
一  保健、医療又は福祉の増進を図る活動
二  社会教育の推進を図る活動
三  まちづくりの推進を図る活動
四  観光の振興を図る活動
五  農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
六  学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
七  環境の保全を図る活動
八  災害救援活動
九  地域安全活動
十  人権の擁護又は平和の推進を図る活動
十一 国際協力の活動
十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
十三 子どもの健全育成を図る活動
十四 情報化社会の発展を図る活動
十五 科学技術の振興を図る活動
十六 経済活動の活性化を図る活動
十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
十八 消費者の保護を図る活動
十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

「非営利」とお金のルール

NPO法人を検討する方とお話ししていると、「非営利」という言葉の受け止め方にズレがあると感じることがあります。ズレの多くは、お金をめぐるものです。

黒字は出してよい。分配できないだけ

非営利とは、利益を出してはいけないという意味ではありません。利益を、社員や役員に分配しないという意味です。株式会社なら、利益は株主への配当に回すことができます。NPO法人にはその仕組みがなく、生まれた利益は次の活動に使われます。

給与は払える。ボランティアでなくてよい

「NPOだから無給で」というのも誤解です。NPO法人でも、職員に給与を支払えます。障害福祉サービスは、人員基準を満たして初めて成り立つ事業です。働く人に適切な対価を払えなければ、事業そのものが続きません。

「NPOだから税金がかからない」わけではない

NPO法人が行う障害福祉サービスは、原則として法人税法上の収益事業に当たり、法人税の納税義務があるとされています。非営利であることと、課税されないことは別の話です。税務の詳細は、税理士に確認してください。

社会福祉法人も「儲けてはいけない」わけではない

比較のために触れておくと、「社会福祉法人は儲けてはいけない」というのも正確ではありません。社会福祉法人も黒字は出せます。ただし、事業の継続に必要な額を超えた財産(社会福祉充実残額)があれば、計画を立てて社会福祉事業などに再投下することが求められます。

株式会社、NPO法人、社会福祉法人。それぞれに「お金の行き先」のルールがあります。法人格によってルールが異なりますので、法人格ごとのお金のルールも調べ・理解してから選択しましょう。

NPO法人を選ぶ人、つまずきやすいところ

NPO法人を始めるのによくあるケースは、たとえば、特有の生きづらさを抱える方を長く支えてきた人が、その活動を続けるために法人化するケースです。思いが先にあり、それを形にする器としてNPO法人を選ぶ流れです。

一方で、つまずきやすいところもあります。

まず、法人格によって、根拠となる法律が違います。株式会社は会社法、NPO法人は特定非営利活動促進法です。設立から運営まで、会社と同じ感覚で進めると、手続きのずれが生じます。

次に、NPO法人は毎年の報告と情報公開があります。NPO法人は、毎年の事業報告書などを所轄庁に提出し、書類を閲覧できる状態にしておく必要があります。これらは、障害福祉サービスの指定権者への届出や情報公開とは、別の手続きです。よって、現実的には、NPO法と障害者総合支援法の両方の手続きを毎年回せる体制があるかどうかも、判断材料の一つとなるでしょう。
毎年の運営管理は、第6回で詳しく取り上げます。

法人形態の比較は、別の記事で

株式会社・合同会社・一般社団法人なども含めた法人形態の比較や、定款の事業目的の書き方は、次の記事で整理しています。

  • 法人設立と事業目的
  • 法人形態比較

コラム

法人格は、事業を行うための手段です。
かっこよく見えるから、福祉だから、という理由でNPO法人を選択することはおすすめしません。
「どんな運営をしたいのか。事業で生まれたお金をどこへ向けたいのか。などをどう描き、そのうえで最も考えに合う法人格を選ぶ」という検討順序が、開設後にぶれない運営の出発点になると私は考えます。

まとめ:判断のチェックポイント

NPO法人を選ぶ前に、次の点を考えてみてください。

  • 生まれた利益を、どこへ向けたいか
  • 職員に適切な給与を払うことを、事業計画の中でどう見込むか
  • 法人税がかかることを、収支の見込みにどう織り込むか
  • 所轄庁への毎年の報告と情報公開を、誰がどう回すか

それぞれの問いについて、自分の言葉で考えを整理してみましょう。その答えによっては、NPO法人は有力な選択肢になります。

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