自立訓練(生活訓練)とB型の多機能型|組み合わせの判断|4-LeafClover
はじめにー自立訓練(生活訓練)と就労継続支援B型の多機能型、 組み合わせの判断
「自立訓練(生活訓練)を経営していて、いずれはB型も」
「B型をやっているが、生活訓練も併せたい」
——こうしたご相談は少なくありません。この二つを一つの事業所で行う「多機能型」は、うまく設計すれば、利用者を連続して支えながら、経営の安定にもつながります。
ただし、性質の違うサービスを一体で回すことには、難しさもあります。今回は、自立訓練とB型を組み合わせるときの判断のポイントを、実務の視点でお伝えします。
自立訓練とB型を組み合わせることの意義
一番の意義は、利用者を連続して支えられることにあります。
生活訓練で日常生活の基盤を整えても、そこから利用者がすぐに一般社会に就労へ、と簡単にはいきません。生活が整った次の段階として、「働く」ことに慣れる・取り組む——この流れを一つの事業所の中でつくれるのが、組み合わせの強みです。そのため、就労系サービスの中でも、就労継続支援A型よりB型の方が、利用者の生活に「労働」を組み込め、高度化するための段階を踏めるでしょう。
この連続性は、経営の面でも意味を持ちます。生活訓練を卒業する利用者を、自分の事業所のB型へ引き継げれば、事業所にとっても、利用者の移行がスムーズになることと、施設の稼働の見通しも立てやすくなります。営業面でも、収益面でも、合理的な設計です。
一方、利用者目線で考えると、同じ法人内で次の段階へつなげられるということは、支援の姿勢・考え方に一貫性を保ったまま利用サービスが変わるため、慣れた雰囲気やルールで過ごせる点もあり、他施設に移行するより混乱は少ない可能性があるでしょう。
さらに、生活訓練と働く訓練の一貫性は、大きな社会課題においても一助になる可能性があります。親御さんが亡くなった後、障害のある方がどう自立して生きていくか——この「親亡き後」の問題です。この課題は、これからの社会でますます重くなっていくでしょう。
親亡き後の生活を整え、働く場・収入を獲得し、地域で自立していく道筋を用意することには、利用者の親目線においても、確かな需要と意義があると考えます。
多機能型の仕組みと、経営上の利点
多機能型とは、生活介護・自立訓練・就労移行・就労継続支援などのうち、二つ以上のサービスを一体的に行う形態です。経営の観点から、主な利点は次のとおりです。
- 小さく始められる
自立訓練の単独だと定員20名以上が必要ですが、多機能型なら自立訓練6名以上・B型10名以上と小さく組め、合計で20名以上あれば成り立ちます。 - サービス管理責任者を共有できる
一定の規模までは、サービス管理責任者が両サービスを兼ねられ、管理者との兼務も可能です。開設当初の人件費を抑えられます。 - 設備の一部を兼用できる
相談室・洗面所・便所・多目的室などは兼用できます(訓練・作業室はサービスごとに専有が原則)。
追加で多機能型となる場合の手続きは?
多機能型でも、指定はサービスごとに行われます。既存の事業所にもう一方を足す場合、それは「変更」ではなく新たな「追加指定」です。
また、設備の兼用の可否や運用の細部は指定権者によって異なるため、必ず開設地域の基準を確認してください。
なお、B型には職業指導員という、自立訓練にはない職種の配置が必要です。組み合わせると、職員の職種構成そのものが変わる点にも注意してください。
性質の違うサービスを、一体で回す難しさ
ここが、組み合わせを考えるうえで最も大切なところです。
自立訓練(生活訓練)は有期限で「生活」を整えるサービス、B型は継続的に「働く」ことを支えるサービスです。この二つは、時間軸も支援の性質も違います。
違うものを一体で運営する以上、「生活の訓練」から「働く訓練」へのサービスの軸の切り替えにおける利用者の混乱をどう支えるかが問われます。つまり、職員がサービスをまたいで連携できるか、利用者自身やご家族が、その移行の意味を理解し、自律へと発展させていけるかという課題にどう対処するのか、これは簡単ではありません。
また、施設の動線設計も、一長一短です。同じ場所(建物)で両サービスを行えば管理はしやすい一方、それぞれのサービスごとに訓練・作業室の兼用はできません。よって、障害の種別によって、「変わることへの柔軟な対応」が難しい方の場合、かえって利用者や現場に混乱を招くことがあります。「管理のしやすさ」と「利用者にとってのわかりやすさ」は、必ずしも一致しません。空間や時間の区切り方を、利用者の特性に合わせて設計する視点が要ります。
定員の組み方 ― 報酬と、長期の支援構想から
定員をどう配分するか。
もっともわかりやすい考え方は、売上高に着目するという方法があります。
つまり、1人1日あたりの報酬が高いサービスの定員を厚くすることです。
事業として成立させやすくなります。ただし、目論んだ報酬単価どおりにニーズがあるわけではなりません。そのため、報酬だけで決めるのではなく、支援の構想も含めて考えたいところです。
たとえば、生活訓練には標準利用期間(原則2年)があり、超えると減算の対象になります。もし利用者の中に「働く」という社会生活訓練の要素が見込めるなら、最初の2年は生活訓練で生活を整え、その後B型で就労に取り組む、という長期の支援構想が描けます。生活訓練の“出口”を、B型という次のステージにつなげる。こうすると、利用者にとっても切れ目のない支援になります。定員設計は、この長期の道筋を思い描きながら決めていくのが理想です。
B型は「報酬の予測が立ちにくい」― だから収支シミュレーションを
組み合わせで、とくに気をつけたいのが収支です。生活訓練の報酬が比較的読みやすいのに対して、B型は、支援員の配置・定員・工賃といった要素で報酬が動くため、予測が立ちにくい面があります。運営の性質の違いが、そのまま報酬の読みにくさとして表れるのです。
だからこそ、多機能型を考えるなら、二つのサービスそれぞれで、別々に収支シミュレーションを行うことが欠かせません。売上の合計だけを見ていると、収益構造の違いを見落とします。
B型は令和8年度の改定に注意
就労継続支援B型は、令和8年度の報酬改定にて令和8年6月以降に新規開設した施設の基本報酬が改定されました。組み合わせを検討する際は、必ず最新の情報を確認してください。B型そのものの詳しい要件・報酬については、当事務所の就労継続支援B型シリーズをご覧ください。
東京都府中市・4-LeafClover行政書士事務所の見解
「多機能型にすれば売上が増える」――それは、半分だけ正しい話です。たしかにサービスが増えれば売上は上がります。けれど、生活訓練と就労継続支援B型では、収益の構造も、支援の性質もまるで違います。売上の合計だけを見て飛びつくと、運営してから「思っていた収支と違う」ということになりかねません。組み合わせを考えるときは、必ず、二つのサービスそれぞれで収支のシミュレーションを立ててください。そのうえで、利用者にとって連続した支援になるかどうかを見る。数字と支援の両面から確かめて、はじめて多機能型は力を発揮します。安易に飛びつくのではなく、設計してから踏み出す。それが、長く続く事業所の共通点です。
次に読む
